「ストレスフリーな脳」をつくる3本柱
そもそもストレスのない世の中というのはありません。
まったくストレスがない世界があったとしたら、私たちは努力をしなくなることでしょう。
お客様や上司のプレッシャーがあるから仕事に励むのであり、締め切りというストレスがあるからこそ期間内に間に合わせようと仕事をするのです。
もし、ストレスがなければ、いつまで経ってものんびりして、努力をしないことでしょう。
適度なストレスがあるからこそ、私たちは向上心を持つのです。
重要なのは、ストレスが許容範囲を超えそうなときに、それにつぶされてうつ状態になってしまうのか、それを受け流して飄々と生きていられるかということにあります。
どんな人でも、ストレスを受ければストレス反応が出て、コルチゾールが分泌されることに変わりはありません。
ストレスに勝てる人間はいないのです。
あのお釈迦様でさえも、さまざまな苦行をした末に、どんなことをしてもストレス(苦)に打ち勝つことはできないと悟りました。
ですから、私たちに残されているのは、ストレスに勝つのは不可能だという前提のもと、いかにストレス中枢を鎮めて、ストレスを受け流せるかを考えることです。
はたして、そんな方法はあるのでしょうか。
結論からいえば、あります。
そこで重要になるのが、すでに紹介したセロトニンのほか、オキシトシン、メラトニンという体内物質です。
この3本柱が、私たちがストレスを受け流すために重要な役割を担っています。
オキシトシンというホルモンの存在自体は、昔から知られていました。
それは母親が持つ、出産や育児に欠かせない「愛情ホルモン」という位置づけでした。
ところが、2000年ごろになって、そのオキシトシンの新しい働きが発見されました。
それは、ストレス中枢の興奮を鎮める機能です。
ストレス中枢の興奮が鎮まれば、外部からストレスが与えられても、セロトニン神経がそう簡単に弱ることはありません。
ストレスを受け流して、気分よく幸せに生活していくことができるのです。
しかも、子どもを産んだお母さんだけでなく、老若男女、どんな人でもオキシトシンを分泌できることがわかりました。
そのキーワードは「心地よい触れ合い」。
心を許した人との優しい接触やリラックスできるおしゃべりなどが、オキシトシンの分泌を促すのです。
セロトニンとオキシトシンの2つをセットにして、「ハッピーホルモン」と呼んでいます。
厳密にいうと、ホルモンというのは血液を通じて全身の器官に働きかけるものなので、脳内で働くセロトニンはホルモンの範疇には含まれません。
それでも、セロトニンの働きにはホルモンに近いものがあるため、一般の人にイメージしやすいように、こう呼ぶことにしています。
ハッピーホルモンをしっかり分泌することは、ストレスの多い世の中を生きるために不可欠の条件といってよいでしょう。
「脳科学者が教える「ストレスフリー」な脳の習慣 より」
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心の病との関連で関心を集めているストレスホルモンが「コルチゾール」です。
コルチゾールは、副腎から分泌されると、血液にのって体内を循環しながら、エネルギー源の補充などの重要な役割を果たします。
役割を終えると脳にたどり着いて、脳に吸収されます。
これが、正常なストレス反応の流れです。
ところが、主に「我慢するストレス」状態が長い期間にわたって続き、ストレスが積み重なっていくと、コルチゾールがとめどなく分泌され続けるようになってしまいます。
こうなると、状況が一変します。
コルチゾールが脳にあふれて、その一部をむしばんでいくのです。
まさに、ストレス反応が暴走して、ありふれたストレスが「キラーストレス」と化してしまうのです。
副腎が疲れている人に圧倒的な足りない栄養素は、ビタミンB群になります。
ビタミンB群は、抗ストレスホルモンを合成するときに必要な栄養素です。
そのため、ストレスが多く抗ストレスホルモンを大量に必要とする人などは、体内のビタミンB群が不足しがちになります。
その結果、抗ストレスホルモンが十分につくれなくなり、副腎がますます疲れてしまうのです。
また、ビタミンB群は、体を動かすエネルギーをつくりだすためにも必要な栄養素。
私たちの体を構成している細胞には、ミトコンドリアというエネルギー生成工場があり、摂取した食べ物を燃焼させて、「ATP(アデノシン三リン酸)」というエネルギー物質をつくっています。
このATPをつくり出す過程で必要なのがビタミンB群です。
ビタミンB群が不足すると、ミトコンドリアでATPが十分につくれなくなる。
ATPが足りなくなると、体がだるくて疲れが取れなくなったり、頭の回転が悪くなってきたりします。
ビタミンB12について?