アルツハイマー病の進行

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アルツハイマー病の進行

アルツハイマー病は進行性の病気です。
老人斑や神経原繊維変化が脳のさまざまな領域に生じて、脳のネットワークの働きが傷害され、さまざまな認知機能障害を引き起こして進行していきます。
ただ、65歳よりも前に発症してしまう若年性と65歳以降に発症するタイプとでは、症状の進行に差がある-若年性では、一般に進行が早いことが指摘されているが、若年性は発症する頻度がそんなに高い病気ではない-といわれています。
ここでは、65歳以降に発症するタイプを中心にして説明していきます。

アルツハイマー病は徐々に徐々に実にゆっくりと進行する病気です。
病院に患者さんを連れてこられたご家族にお話を聞くと、普通、「そういえば2~3年前から時々、おかしなことがありました」というエピソードが出てくるものなのです(もし、先月から急におかしくなりましたという場合は、アルツハイマー病以外の病気の可能性が高いといえるでしょう。)

最初の症状として最もよく見られるのは、ひどい「物忘れ」です。
アルツハイマー病と診断された患者さんの初期症状-家族や周りの人が気付いた症状-で最も多いのは、「同じことを何度も言ったり、訊いたりする」「ものの名前がでてこない」「置き忘れやしまい忘れが多い」「蛇口やガス栓の閉め忘れが目立つ」などというように、もの忘れに関係することが多いのです。
これはアルツハイマー病の脳の変化は、記憶定着のために働いている海馬の周辺から始まることが多いからなのです。

年をとってくると誰しも、ど忘れが多くなるものですが、アルツハイマー病の患者さんのもの忘れには、体験・情報を仮に登録・記憶する役割を持つ海馬の周辺の機能が働かなくなっているために、「体験全体を忘れていて、ヒントをもらっても思い出すことができない」という特徴があります。

一例をあげて説明すると、朝ご飯で何を食べたかを正確に覚えていない、というもの忘れではなく、朝ご飯を食べたかどうかを覚えていない、というもの忘れです。
これがアルツハイマー病特有のもの忘れなのです。
ど忘れであれば、朝ご飯の味噌汁の具は豆腐かワカメか、というようなヒントをもらえば、思い出すことができるのが普通ですが、アルツハイマー病のもの忘れではヒントを与えられても答えを思い出すことはできません。

ど忘れとは、物事が記憶はされているのですが、頭の中からうまく取り出すことができない状態を意味するのであり、アルツハイマー病のもの忘れは、出来事がもともとまったく頭の中に入っていない状態であるといえるでしょう。

そして、アルツハイマー病のもの忘れの最大の特徴は、もの忘れをしているという自覚が本人にない、ということです。
自分のもの忘れがだんだんひどくなっていることが自覚できれば、忘れてはいけないことを手帳にメモするなどしてもの忘れに対応し、生活していくことができますが、この自覚がないと日常生活に支障をきたしてしまうのです。

アルツハイマー病がさらに進むと、判断力が低下したり、物事の段取りができなくなります。
このことは、家事などの日課ができなくなる、という形で発覚することがほとんどです。
料理で作る品数が減ってメニューが単調になったり、洗濯や掃除をしなくなったり、身なりもだらしなくなったりします。
そして、この段階になると、自分がいる今現在の時間や場所の概念があやふやになるという見当識障害が出現してきます。

この見当識障害は、最初に時間の概念から見当がつかなくなる傾向があります。
現在の年月日や季節が分からなくなってしまうのです。
さらに進むと、今度は、自分が今暮らしている場所がどの地方のどの町内で、家の何階にいるか、ということが分からなくなってきます。
つまり、場所の概念の見当がつかなくなるのです。

これらの、記憶障害、判断力や思考力の低下、見当識障害はアルツハイマー病の中心となる症状で中核症状と呼ばれています。
この中核症状は、アルツハイマー病であれは必ずみられる症状で、病気の進行に伴い悪化していきます。

この中核症状に対して、暴力行為、幻覚、徘徊などの問題行動のことを周辺症状といいます。
これらの症状が、家族や介護者を大変困らせる場合が多いのですが、こうした症状が、アルツハイマー病の患者さんが、病気に対して、なんとか自分の心のバランスをとろうとしていることから生じている場合も多く、非常に個人差があります。
アルツハイマー病の患者さんの環境や介護の仕方によっては、これらの症状の軽減を図ることもできますし、周辺症状を抑えるのに効果的な薬もあります。

アルツハイマー病の場合は、病状がかなり進行しても運動機能や視覚機能は保たれます。
中核症状や周辺症状が出現したために介護なしでは生活できなくなってから、死を迎えるまでの経過期間は、平均すると7~8年といわれています。
                                    「ボケない技術(テク)」

「治療薬との併用でアルツハイマー病に有効と発表された脳ビタミン」
http://www.endokoro.com/libra/v_article015.html