やけ食いをやめ、やけ咀嚼で肥満を防止する

早食いが体に悪いことは数値にも表われています。実際に、早食いで、かつよく咀嚼しない人の80%近くが肥満に陥っているという、大分医科大学の坂田利家名誉教授の講演が、「最新医療情報」(共同通信社)に掲載されました。この発表をもとに肥満と咀嚼のメカニズムを説明すると、次のようになります。
しっかり噛むと口中の歯根膜(歯根と歯槽骨の間にある組織)から神経を通して中脳、咀嚼中枢へと「物を食べている」という情報が伝達されます。その情報を受け取った咀嚼中枢は、視床下部のヒスタミン神経系に情報を伝えて、アミノ酸の1種であるヒスタミンが量産されます。このヒスタミンが満腹中枢に働きかけることが、食事の終了を意味する満腹信号となります。つまり、ヒスタミンの満腹信号を受けることにより、満腹中枢は「ああ、お腹がいっぱいになった」と認識し、人は、満足感を得るのです。
ヒスタミンには、そのほかに間接的に交感神経を活性化させて、脂肪(とくに内臓脂肪)を分解させる働きもあります。
この満腹感と咀嚼の関係については、坂田教授のソーメンとガムを使った実験で明らかです。20人を2つのグループに分け、一方のグループに味もカロリーもないガムを10分間噛んでからソーメンを食べてもらったところ、ガムを噛んでいないグループに比べて、ソーメンを食べる量が大幅に減ったそうです。このことは、グループを入れ替えても同じ結果だったといいますから、噛むことが大食防止になることがわかります。
最近は、ストレス性過食症の治療法の一つに咀嚼が加えられていますが、以上のことから考えると当然といってよいでしょう。咀嚼は、歯学面でもストレス緩和になるということが報告されています。
食事の際には「1口、20、30回」をスローガンにして、20回から30回ほどよく咀嚼しましょう。それでもついつい適当なところで飲み込んでしまったりするのですが、頑張って続けているうちに慣れます。そうすると、いつのまにか「ゆっくり食べ」になり、「腹八分目」にもなります。
やけ食いは不健康になりますが、やけ咀嚼ならば、消化がよくなるので、やけ咀嚼をお勧めします。
「病気にならない食事法」より
縁処 –endokoro-
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