食物繊維

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食物繊維

「食物繊維を多く摂る国は大腸の病が少ない」
これは1972年に「食物中の繊維を総称して食物繊維」と定義した、英国の学者トロウェル博士とパーキット博士の言葉です。

栄養として吸収されない食物繊維は、長い間、役に立たないものと思われていたようですが、人間の腸は分解する酵素を持たない食物繊維に対しても必死に消化しようとするため、それが小腸のぜん動運動を促すことになり、結果的に腸内環境をよくします。
食物繊維は小腸での糖質の消化吸収をゆるやかにするため血糖値の上昇を抑え、消化液として分泌された胆汁酸(コレステロール)も吸着して排出するので血液中のコレステロール量を減らしてくれます。

また、保水性が高く、水分を吸収してふくらむことで有害物質などを排出しやすくするとともに、有害物質の濃度を薄めます。
胃でもふくらむため、少量の食事で食欲を満たして、不要な量をたべなくてすむという利点もあります。繊維なので、よく噛むことにもつながり、脳の血流をよくして、唾液の分泌と同時に消化酵素の分泌も促します。
大腸では、食物繊維の一部から生産される酢酸、プロピオン酸、酪酸などが栄養源になります。食物繊維(糖質)の一種、オリゴ糖は乳酸菌のエサになります。

食物繊維は多糖類といわれる糖質の一種で、簡単にいえば「多くの糖がつながっている糖質の中で、消化できない繊維を持つもの」です。多糖類の中でもデンプンと、グリコーゲン(動物デンプン)は人間の腸で消化吸収できるのですが、β-グルカンの一種であるセルロースなどは消化するしくみを体内に持っていません。
動物は、エネルギーをつくり出すことで体の機能を動かしています。そのためには、エネルギーのもとになる物質が必要です。

体内にそれらすべての物質をつくるしくみを持つと、体を大きくしなければいけなくなるため機敏性が失われ、体が大きくなると食物もたくさん必要になるため、常に食物の心配をしていなくてはいけません。そこで、それぞれの種に絶対に必要なしくみだけを体に残し、それ以外のものは食物として取り入れることで、生命を維持するようにしたといわれています。

体内のしくみは、種類や棲息する環境などによって違います。草を食べる牛は、食物繊維を消化する酵素を体内に持っていますし、人種によっても少しずつ違います。
植物や海藻、菌類などの細胞の壁を構成している成分である食物繊維は、イモ、穀類、豆、キノコ、野菜、くだもの、海藻などに多く含まれています。
すべて日本人が昔から食べていたものです。

つまり、「デトックス」は、日本人には、ことさら目新しいことではなかったのです。
魚介類や、土中から米、野菜などに含まれる有害なミネラル、摂取過剰になりがちな塩分も、食物繊維を摂ることで自然に排便や汗などで排出していました。しかし、今は、排気ガス、化学物質、食品添加物などが増えて環境が変わったことで、間に合わなくなってしまったのでしょう。そのうえ、硬いものが好まれなくなったことから食物繊維を含む食材が食卓にのることも少なくなりました。

実は、米にも難消化性糖質という、食物繊維と同じように消化されない成分が含まれています。便秘の人が増えているのは、ご飯を食べることが少なくなったことも理由のひとつとされています。

食物繊維には、水に溶ける水溶性のものと、水に溶けない不溶性のものがあります。水溶性のものは保湿性が高く、不溶性は有害物質を吸着して排出するのが特徴です。
不溶性のものは腸に刺激を与えすぎるため、腸が弱っている人は注意が必要です。
また、食物繊維をたくさん摂りすぎると、吸着される前の必要な栄養まで一緒に排泄してしまうこともあるため、適度な量が一番です。
「青春は食文化」より


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