85歳を超えると40パーセント以上の人が、軽症も含め認知症になるといわれています。
一方で65歳~70歳では認知症の人の割合は1.5パーセント程度、200人に3人くらいですが、実はこの年代の10パーセントくらいの人に、認知症には起因しない「ボケ」症状が現れているのです。
このボケ症状とは、「ひがな一日何もせずぼーっと過ごしている」「口数が少なくなってふさぎがち」「自分から何かをやろうとせず、またやろうと思ってもできない」「物忘れがひどくなった」「物覚えが悪くなった」といった意欲低下や好奇心の低下、記憶力の低下で形が現れますが、これらはみな脳の活力低下、つまり脳の老化によるものです。
ところで、認知症は脳の病気で、現代の医学では多少進行を遅らせることはできても、予防や治療はほぼ不可能です。
ある意味不可抗力と思って、あきらめるしかありません。
しかし、認知症に起因しない「ボケ」、つまり脳の老化を予防することは可能です。
その予防策とは言うまでもなく、「脳の前頭葉を鍛える」ことです。
70代くらいだと、病気(認知症)ではないのにボケ状態になってしまう人が認知症の人よりはるかに多いという現状のなかでは、将来不可抗力の認知症を恐れる前に、「ボケ」の予防に努めていたほうが、老後の人生をよりよく生きられるということです。
ここでもうひとつ注意しておきたいのが中高年の「うつ」、とりわけ60代後半あたりからの老人性うつです。
「ボケ」症状にはうつが原因になっているケースも少なくないからです。
そしてうつが続けば、続くほど将来的に認知症になる可能性が高くなるという報告はいくつもあります。
また「うつ」とまでいかなくても、リタイア後には仕事がなくなり人間関係も途絶えがちのなかで、刺激がなくなったうえに不安や寂しさが高じて、気力や意欲の低下が起こることもありますが、これも脳の老化を一気に進めます。
前頭葉を鍛え、時には人と会って人様に元気をいただく生活習慣を、ぜひ心がけたいものです。
「50代からはじめる老けない人の「脳の習慣」 より」
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物忘れとは、脳は、体の機能全般をコントロールしている司令塔ですが、加齢とともにその働きは衰え物忘れの症状が出てきます。
脳血管の動脈硬化を放っておくと、血液循環が悪くなって脳細胞の動きが低下し、記憶力や思考力などが鈍り物忘れがはじまります。
40歳を越えた頃から「ど忘れや物忘れが激しくなった」「人の名前がなかなか思い出せなくなった」などと物忘れを感じるようになるのは、脳機能低下のあらわれです。
脳の神経細胞は約140億個といわれ、25歳を過ぎると1日に10~20万個ずつ死滅していきます。
死滅した神経細胞は再生されず物忘れもひどくなります。
しかし、死滅した神経細胞は元に戻らなくとも、神経の通り、すなわちネットワークをよくすれば、低下した機能を補い、さらには高めることができ物忘れも改善されます。
物忘れに関する神経伝達物質の中で記憶と学習にかかわっているのはアセチルコリンで、このアセチルコリンはコリンと酵素を原料にしてつくられています。
アセチルコリンの合成にはコリン、ビタミンB1、ビタミンB12などがかかわっています。
同時にこれらの栄養をとることが、アセチルコリンを増やすことにつながるわけです。
通常、コリンはレシチン(フォスファチジルコリン)のかたちで、食材から摂取されます。
レシチンはアセチルコリンの材料になるだけではなく、細胞膜の材料にもなっています。
とくに脳の神経細胞の細胞膜にはたくさん含まれていて、多彩な働きをしています。
血液にのって運ばれる栄養の細胞内へのとり込みや細胞内の老廃物の排出、神経伝達物質の放出や情報ネットワークの形成といった、脳の機能全体に深くかかわっています。
これが、レシチンが「脳の栄養素」と呼ばれるゆえんです。
そのレシチンを多く含んでいる食品の代表が卵黄です。
なお、レシチンをアセチルコリンに合成するには、ビタミンB群が欠かせないため、同時にとることが望ましいのです。
アルツハイマー型認知症の患者の脳脊髄中にはビタミンB12が少ないことが確認されています。
ビタミンB12は、主に動物性食品にしか含まれないというビタミンなので、野菜中心の食生活の人や、ダイエットをしているなど食事の量が少ない人は、ビタミンB12を補った方が良いとされています。
加齢、胃の病気、ストレスなどでも不足します。
さらに、ビタミンB12や葉酸をはじめとするビタミンB群は、ミネラル、アミノ酸などの栄養素と協力し合っているため一緒にバランスよく摂ることがとても重要なのです。
ビタミンB12について?