第7章 歳とともにガンコになる人とずっと柔軟な人は何が違うのか?
加齢とともに年々怒りっぽくなったり、ガンコになる人もいれば、いくつになっても柔軟な考え方を持ち、しなやかなイメージの人もいます。
以前、相談を受けた70代の男性は「ガンコな自分に全く気づいていないわけではなく、できればいつまでも柔らかい頭でいたいと思っていても、ついついガンコな部分が出てきてしまい、自己嫌悪に陥ってしまう」と話していまた。
ガンコとは、自分が正しいと思うことを変えないことです。
「自分が正しい」「自分が正義」そういう思いが強すぎて、人の意見をなかなか認められないわけです。
これは「脳のバイアス(偏った考え方)が関係しています。
バイアスが「ガンコな思考」を生み出しています。
それともうひとつ、ガンコさには「マインドセット」も関係します。
「マインドセット」とは、その人がそれまでの人生の中で構築してきた固定化された考え方のことです。
価値観や信念、それに思い込みなども含まれた、その人の考え方のベースです。
ガンコは「保守化バイアス」「サンクコスト効果」というバイアスと、「硬直マインドセット」の3つの要素が生み出しています。
よくある「最近の若者はダメだ」「自分たちの若い頃はもっとやっていた」といった、自分たちが生きてきた時代を肯定する考え、若い人を否定する考えは、まさに保守化バイアスが脳に広がっている状態です。
このバイアスが強いと変化に鈍くなり、まわりからも「ガンコ」「頭が固い」という評価をされてしまいます。
保守化バイアスを軽減する方法は、新しいものに触れる頻度を上げることです。
まさに、ここで老人脳の予防法として紹介していることです。
新しいものに触れる機会が多くなれば、保守化バイアスは弱まるはずです。
それともうひとつ、これは保守化バイアスだけでなく、あらゆるバイアスに対して言えることですが、「自分がそのバイアス(考え方)の影響を受けていることを自覚する」ことが大切です。
自覚しているだけで改善のきっかけになるので、ガンコだと周りから言われたり、自分でそう思ったときはこの対策をしてみてください。
2つ目は「サンクコスト効果」です。
これもバイアスのひとつで、信じてコツコツと積み上げてきたことがもし間違いだと明らかになっても、かけてきたコストが無駄になることを恐れて、いまの行動を正当化しようとする脳の働きです。
サンクは沈んだ(sunk)という意味で、日本語で「現役費用」と言います。
これまで信じてきたことが無駄にならないように、たとえ周りから見ると理不尽な選択であったとしてもそれを正当化し、しがみつき続けてしまいます。
あまりメリットはないとわかっていても、意地で自分の意見を押し通します。
継続してきた勉強法で成果が出なくても、そのまま続けてしまう。
やっているダイエット法が自分には効果がないことが明確になっても続けてしまう。
こうした自分のやっていることを否定したくない理由でとってしまう言動には脳の働きがあることを認識し、気にしておくだけでガンコさの軽減につながります。
しなやかマインドセットをもつ
3つ目は「硬直マインドセット」です。
「マインドセット」は、その人の考えのベースになるもので、ガンコな人と柔軟性のある人は、このマインドセットが違っています。
ガンコな人は「硬直マインドセット」、柔軟な人は「しなやかマインドセット」があります。
マインドセットが自分の能力や行動にどう影響するかということはカリフォルニア大学の研究で、かなりわかってきています。
ガンコな人は「自分の能力は生まれつき決まっている」と信じている人が多いのです。
一方で柔軟性があって成長意欲が高い人は、「脳は使えば使うほどよくなっていく。能力はどんどん上がっていく」と信じている人が多いです。
この思考の違いによって、人生が大きく変わります。
成長意欲が高い人の学習能力は伸びやすく、自分の能力は生まれつき決まっていると考える人の学習能力は伸びにくい傾向にあります。
これには環境も影響します。
成長意欲の高い親の子どもは成長意欲が高まりやすいですし、仕事でも成長意欲の高い人がいる組織は、全体の成長意欲も高まりやすくなります。
もちろん逆もです。
過去の自分の考えにとらわれていると「ガンコ」はますます硬直化していきます。
そういった自分を変えるためには、くり返しになりますが、「新しい体験の数を増やすこと」と「ドーパミンを増やすこと」の2つです。
たくさんの新しい体験をした人ほど、考え方や視点が増えて柔軟性が増してきますし、ドーパミンを増やすことで意欲が高まり、相手を理解しようという気もちも高まります。
「80歳でも脳が老化しない人がやっていること より」
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最近、電車の中でキレる人を見かけます。
少し前までは、電車の中で暴れるのは酔っぱらいか、普段から暴力的な人と相場が決まっていました。
でも、最近は違ってきています。
しかも、普段はおとなしく、礼儀正しい人なのに、ついカッとしてキレてしまったという人がとても多いのです。
受けたストレスをコントロールすることができず、感情を爆発させ、普段では決してしないような行動をとってしまう、これがいわゆる「キレる」という状態です。
この「キレる」という行為、原因を簡単に言うと、「ストレス」です。
これはまさに「セロトニン神経」の機能低下が原因だと考えています。
セロトニンは脳に静かな覚醒をもたらします。
これは別の言い方をすれば「平常心」をもたらすということでもあります。
平常心を保つというのは、脳の切り換えがスムーズに行われ、どこも暴走も興奮もしていない状態のまま、スムーズに働いているということです。
セロトニン神経の機能が低下すると、感情や精神状態を普段の冷静な状態にキープすることが難しくなることは充分に推測できます。
そしてこのことは、キレる人が朝の満員電車よりも、夜の帰宅時に多いということからも証明されます。
イライラしやすいときは、脳の神経伝達物質であるセロトニン、アセチルコリン、ドーパミンなどが不足していることが考えられます。
そのため、これらの材料となるアミノ酸と、アミノ酸を取り込むために必要な糖分やビタミンB12の不足を疑ってみましょう。
脳を酷使するときには、たくさんのビタミンB群が消費されています。
B群は脳の働きに重要な役割を担っているのです。
神経の働きを整えたり、傷んだ神経を補修したり、タンパク質をドーパミンやセロトニンといった神経伝達物質に作り替えるなど、「脳力向上」のためにもB群は欠かすことができないのです。
ビタミンB12について?