第7章 老人の「ポジティブバイアス」が事故を引き起こす原因にもなる
「高齢者ドライバーの免許返納」は近年話題になっているテーマです。
都市部であればともかく、移動手段が少ない地域では、車は生活の足でもあるので、ある年齢に達したからといって免許返納をするかどうかの判断はなかなか難しいと思います。
また、高齢者が運転することで外に出る機会をつくれるなど、返納しないメリットも大きいという意見もあります。
実際に、高齢者ドライバーの事故が突出して多いわけではないのも事実です。
ただ一方で、事故を起こしてはいないけれど、事故になる寸前の危ない思いをしたという高齢者ドライバーも多くいるそうです。
この問題は、どうすべきかなかなか難しいのですが、ひとつだけ忘れないでほしいことがあります。
それが、ここまで話してきたポジティブバイアスです。
「まだまだ自分の運転は大丈夫だろう」「自分が事故を起こすはずがない」、こういった思いの裏にはポジティブバイアスがかかっている可能性があります。
バイアスがあると認識したうえで、自分の運転を冷静に見つめ直し、事故になりそうなことがこれまでなかったかなど、バイアスを外す努力をして判断してください。
「ポジティブバイアス」は、不安を解消したい気持ちから生まれることもあります。
「ポジティブ」と聞くと、活発的で脳にいい影響しかないように聞こえるかもしれませんが、実は「ポジティブに考えた方がラクだから」と脳が判断している部分もあるのです。
リスクに備えてネガティブに考えることはかなりの労力がいるので、脳には、ラクで、安心感もあるポジティブな方向の選択をしたくなるという性質があります。
ですから、ポジティブバイアスが「新しいことへの挑戦」を遮る原因になることもあります。
結局は、ポジティブバイアスとネガティブバイアスが存在し、そのどちらかに寄りすぎるのはよくないということなのですね。
バイアスが存在していることを認識しているだけでも、自分の考えや行動をいい方向に戻してくれるので、まずはそのことに気づくことが一番のバイアス対策になります。
※ポジティブバイアスとは、ものごとをプラスの側面でとらえてしまうバイアス(偏った考え方)です。
20代~50代の人は、痛みと快感があると痛みのほうを重要視する傾向にあります。
これが「ネガティブバイアス」です。
若い人は、たとえば「1万円得する」という場合より「1万円損する」という場合のほうが感情が大きく揺さぶられます。
要は損をしたくないわけです。
これがネガティブバイアスです。
同じことに高齢者は、「1万円損する」よりも「1万円得する」ほうが感情が大きく揺さぶられます。
これがポジティブバイアスです。
高齢者は損失を回避する意識が薄れていき、プラスに目がいきやすくなっています。
ではなぜ、年齢とともにネガティブな反応が薄れてくるのでしょうか。
その理由のひとつは脳の扁桃体にあります。
ネガティブな出来事は扁桃体で反応が起きるのですが、その反応が高齢になるにつれ起きにくくなってくるのです。
結果、ネガティブな感情が出にくくなります。
もうひとつが、高齢になるほど感情的に安定したいという意識が起きるためと言われています。
この意識が、実は「ガンコな老人」「わがままな老人」を生み出すこととも結びついています。
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心の病との関連で関心を集めているストレスホルモンが「コルチゾール」です。
コルチゾールは、副腎から分泌されると、血液にのって体内を循環しながら、エネルギー源の補充などの重要な役割を果たします。
役割を終えると脳にたどり着いて、脳に吸収されます。
これが、正常なストレス反応の流れです。
ところが、主に「我慢するストレス」状態が長い期間にわたって続き、ストレスが積み重なっていくと、コルチゾールがとめどなく分泌され続けるようになってしまいます。
こうなると、状況が一変します。
コルチゾールが脳にあふれて、その一部をむしばんでいくのです。
まさに、ストレス反応が暴走して、ありふれたストレスが「キラーストレス」と化してしまうのです。
副腎が疲れている人に圧倒的な足りない栄養素は、ビタミンB群になります。
ビタミンB群は、抗ストレスホルモンを合成するときに必要な栄養素です。
そのため、ストレスが多く抗ストレスホルモンを大量に必要とする人などは、体内のビタミンB群が不足しがちになります。
その結果、抗ストレスホルモンが十分につくれなくなり、副腎がますます疲れてしまうのです。
また、ビタミンB群は、体を動かすエネルギーをつくりだすためにも必要な栄養素。
私たちの体を構成している細胞には、ミトコンドリアというエネルギー生成工場があり、摂取した食べ物を燃焼させて、「ATP(アデノシン三リン酸)」というエネルギー物質をつくっています。
このATPをつくり出す過程で必要なのがビタミンB群です。
ビタミンB群が不足すると、ミトコンドリアでATPが十分につくれなくなる。
ATPが足りなくなると、体がだるくて疲れが取れなくなったり、頭の回転が悪くなってきたりします。
ビタミンB12について?