第1章 できないことはあきらめて、できることを活かす
歳をとると、体や脳が衰えてきます。
それは確かですが、だからといって、いきなり何もできなくなるわけではありません。
たとえば、認知症になると、とたんに何もかもわからなくなると思われがちですが、初期には記憶障害が起こるものの、理解力などはそれほど低下せず、それこそ長谷川和夫先生のように講演さえできるのです。
また、認知機能は衰えても、体は丈夫で長く歩けるという人もいれば、反対に、歩行困難で車いす生活を送らざるをえないものの、頭はシャキッとしている人もいます。
老化によって、すべての能力が一様に低下するわけではないのです。
終末期になれば、寝たきりでほぼ何もできない状態になりますが、それまでは、できないことは増えても、できることは残っています。
重要なのは、できなくなったことを悲観するのではなく、できることを大切にして、それを活かしていくという考え方です。
パラリンピックの選手たちは、障害者という枠のなかで競争しているというイメージをもたれがちですが、彼らは多くの競技において、ほとんどの健常者よりもはるかに高い能力を見せます。
つまり彼らは、できることの能力を最大限に伸ばし、できることのすごさで世界を相手に競っているわけです。
できないことがあってもいいのです。
「できることはこんなにすごい」という方向に目を向けることが大事なのです。
人は自分の欠点ばかりを気にして、長所を見過ごしがちです。
たとえば、受験勉強では、苦手科目を克服しようとするより、得意科目を伸ばすほうが、合計点数が上がることが多いものです。
実際、高齢になっても、できることの何かがすごければ、人から一目置かれます。
たとえ寝たきりになっていても、おもしろい話ができるなら、話を聞かせてほしいと思う人が周りに集まってくるはずです。
絵や音楽、運動など、これまでやってきたことがあれば、できるかぎり続けていくことで、さらに新しい境地にいたることもあるでしょう。
ピカソなど巨匠と呼ばれる画家でも、歳をとってからの作品のほうが高い評価を得ることはめずらしくありません。
老いや死は、ある程度上手に受け入れておいたほうが、他人から見ても魅力的であるばかりでなく、自分自身も平穏な気持ちを保つことができます。
そして結果的に、老いによるダメージの程度がそれほど大きくならずにすむことが多いと思います。
老いを受け入れると、できないことをあきらめられるぶん、できることを慈しみ、それをもっとやってみようという意欲が湧いてきます。
そして、老いの時間をより豊かに過ごせるようになると思います。
「老いの品格 品よく、賢く、おもしろく より」
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人の体の老化は20代ごろから始まります。
老化は生きている以上避けられないものですが、何をどう食べるかで進行程度が変わってきます。
30代では個人差はさほどありませんが、40歳を過ぎて中年期に入るころからだんだん差が生じ、65歳を過ぎて高年期に入ると、健康状態にはっきりとした差が出ます。
健康寿命をのばす食生活に加えて、年代別の食べ物・食べ方に気をつけると、病気予防がいっそうアップします。
動脈硬化は年齢とともに発症しやすくなり、50代になるとほとんどの人(女性は60代から)に動脈硬化が見られるようになります。
認知症の多くは、脳血管障害の積み重ねで起こり、その原因のほとんどが脳梗塞です。
ですから、脳梗塞の前兆である隠れ脳梗塞を早期発見することで多くの認知症を防ぐことができるのです。
脳梗塞は、高血圧や糖尿病などの病気が原因となったり、生活習慣などによって血液がドロドロになって血液循環が悪くなったりして、血管が厚く狭くなり、脳の血管が徐々に詰まって進行していきます。
一般的に、脳梗塞の初期には、大きさ数ミリ程度の微小な梗塞が数個出現し、段階をへるごとにこの梗塞が脳のあちこちに見られます。
このような症状のないごく小さな梗塞が隠れ脳梗塞(無症候性脳梗塞)です。
「隠れ脳梗塞(無症候性脳梗塞)は、早い人だと30代からあらわれ、40代を過ぎると急に増加するといわれています。
脳梗塞をはじめとする脳血管障害を生活習慣病の一つととらえ、ふだんから健康に保つ生活を心がけましょう。
ビタミンB12やB6、葉酸の吸収が悪くなると、活性酸素やホモシステインという老化物質が増え、動脈硬化を生じることもわかっています。
ビタミンB12について?