第4章 周囲に安心感を与えられる存在になる
第4章 周囲に安心感を与えられる存在になる
高齢者専門の病院に勤めていたとき、担当していた入院患者に、かつては大臣の地位にあったという人がいました。
その人のもとには、誰もが知る当時の大物政治家が何人か、見舞いに訪れていました。
おそらくその人の世話になっていたのでしょう。
そのうちのAさんは、一度見舞いに来て本人が認知症であることがわかると、それきり訪れなくなりました。
一方、Bさんは、その後も頻繁にお忍びで訪ねてきていました。
いまは何の地位も権力もなく、自分のことを覚えてさえいないかもしれない相手に何度も会いにきていたのです。
もし、利害関係だけの結びつきであったのなら、そこまですることはまずないでしょう。
実際、そのような関係性だったと思われるAさんは、二度と訪れることはありませんでした。
このとき、Bさんが義理堅い人格者であることがわかると同時に、その元大臣がBさんから本当に慕われていたこともよくわかりました。
利害関係によるパワーではなく、その人自身の人間味やオーラのようなものがどれほどあるのかが、ものをいうのだと思います。
周囲の人にずっと慕われつづける人、尊敬されつづける人というのは、昔は身近にたくさんいたと思います。
たとえば、学校の先生は、かつてはいまよりずっと尊敬される存在でした。
経済的な事情で旧制中学に進めなかった村一番の秀才が、学費のかからない師範学校を出て先生になるというパターンが多く、先生といえば地域のなかで特別に賢いとされる人たちで、生徒から一生慕われつづけることはめずらしくありませんでした。
また、私が子供のころは、医師もいまよりもっとオーラのある存在だったような気がします。
血液検査もせず、聴診器を当てて、顔色を見るだけで「大丈夫」と言う。
それだけで患者さんを安心させてくれるようなところがあったと思います。
この「安心感を与える」というのは、重要なポイントです。
たとえば、精神科の診療では、医師に「必ず治る、大丈夫」と言われることで患者さんの気分が前向きになり、治療の効果が上がりやすくなるといわれています。
長く通ってくる患者さんから、「先生の顔を見るだけで安心する」と言われたりすると心からうれしくなります。
少なくとも自分の周りの人に安心感を与えられる人、慕われる人になることをめざすのは、高齢期になってからでも遅くはありません。
たとえば、書や俳句など、趣味的なことでもいいので、いまから何かを始めれば、さらに人間的な豊かさや深みが生まれ、人を惹きつけるようになるということもありうると思います。
「老いの品格 品よく、賢く、おもしろく より」
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人の体の老化は20代ごろから始まります。
老化は生きている以上避けられないものですが、何をどう食べるかで進行程度が変わってきます。
30代では個人差はさほどありませんが、40歳を過ぎて中年期に入るころからだんだん差が生じ、65歳を過ぎて高年期に入ると、健康状態にはっきりとした差が出ます。
健康寿命をのばす食生活に加えて、年代別の食べ物・食べ方に気をつけると、病気予防がいっそうアップします。
動脈硬化は年齢とともに発症しやすくなり、50代になるとほとんどの人(女性は60代から)に動脈硬化が見られるようになります。
認知症の多くは、脳血管障害の積み重ねで起こり、その原因のほとんどが脳梗塞です。
ですから、脳梗塞の前兆である隠れ脳梗塞を早期発見することで多くの認知症を防ぐことができるのです。
脳梗塞は、高血圧や糖尿病などの病気が原因となったり、生活習慣などによって血液がドロドロになって血液循環が悪くなったりして、血管が厚く狭くなり、脳の血管が徐々に詰まって進行していきます。
一般的に、脳梗塞の初期には、大きさ数ミリ程度の微小な梗塞が数個出現し、段階をへるごとにこの梗塞が脳のあちこちに見られます。
このような症状のないごく小さな梗塞が隠れ脳梗塞(無症候性脳梗塞)です。
「隠れ脳梗塞(無症候性脳梗塞)は、早い人だと30代からあらわれ、40代を過ぎると急に増加するといわれています。
脳梗塞をはじめとする脳血管障害を生活習慣病の一つととらえ、ふだんから健康に保つ生活を心がけましょう。
ビタミンB12やB6、葉酸の吸収が悪くなると、活性酸素やホモシステインという老化物質が増え、動脈硬化を生じることもわかっています。
ビタミンB12について?