第6章 自然にまかせず、「そうなる」と意識して生きる

第6章 自然にまかせず、「そうなる」と意識して生きる

 

歳をとればとるほど知恵がついて、いろいろなものが受け入れられるようになると思われがちですが、実際は、なかなかそのとおりにはいきません。

 

たとえば、養老孟司さんや瀬戸内寂聴さんのような、「だてに歳をとっていない」と思わせる思考の幅が広い高齢者には、現実にはめったに出会えません。

たまにしか会えないからこそ、すごい存在であるともいえます。

 

ここで、こうでなければならないという高齢者像を押し付けるつもりはありません。

それでも一つ心にとめておいたほうがいいと思うのは、自然に歳をとるにまかせていると、みっともない老人になるケースが多いということです。

 

一般的には歳をとるほど、前頭葉が委縮して思考の幅が狭くなる、不安に振りまわされやすくなる、お金に対する執着心が強まりケチになる、といった傾向があります。

歳をとって大らかになるとか、酸いも甘いも噛み分けられるというのは、じつは自然な老化によるものではなく、そうなろうという意識を多少なりとももっていないとなれないものなのかもしれません

長年、高齢者と向き合っているうちに、そのことに気づきました。

 

どうせ歳をとるなら、「この人と会っているとほっとする」と思われる老人、周りに自然に人が集まってくる魅力的な老人になるほうがいい。

でも、そんな高齢者になるのは、そうなりたいと自覚し、そのために何をすればいいかを考えていなければ難しいのです。

 

とはいえ、品位を意識して、あるいは人に慕われるようにするために、高齢者に対して「言いたいことを我慢しろ」と伝えたいわけではありません。

嫌われない老人になろうとして周囲に合わせていると、むしろただのつまらない老人になってしまいます

 

冷たい言い方になるかもしれませんが、自分の周りに人が寄ってこないとか、話している相手につまらなそうな態度をされることがあるとしたら、多少なりとも自分を省みたほうがいいと思います。

周りに合わせる必要はありませんが、自分がどう見られているかということは意識してもいい、と思っています。

 

すてきな高齢者になるためにいちばん必要なのは、そうなろうという意識をもつことです。

高齢の人たちがその意識をもつことで、沈滞した世の中が多少いい方向に向かうかもしれません。

高齢者の数からすれば、そのくらいの影響力はあるはずです。

 

たとえば、高齢者施設に入ることになった場合でも、そこで自分の品位を保って暮らしていこうと考えることは大事だと思います。

自分なりの人生の選択として、そこで暮らすことを選んだのであれば、ただ残り時間を消化するようにして過ごすのはもったいないと思います。

実際に施設に行くと、施設のなかで尊敬されている入居者もいれば、そうでない人もいます。

 

また、認知症がある程度進んでも、ウィットやユーモアに富んだ言葉、含蓄のある言葉を口にする人はよくいます。

 

認知症になると、直近のことに対する記憶は失われやすくなりますが、その人自身の芯にある思いや、人生の信念のようなものは残ります。

そのため、認知症の人がすばらしい名言や、深みのあるいい話を聞かせてくれることはめずらしくないのです。

「老いの品格 品よく、賢く、おもしろく より」

 

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脳の中では、運動会のリレーのように、神経がバトンをつないで、指令を伝達していきます。

しかし、たとえばC地点の神経細胞が倒れてしまい、指令がそこで止まってしまう、という事態が起こります。

このとき、すぐにC地点の神経細胞を救出できれば復活したのですが、時間が経ち、死んでしまって、その指令も届かなくなる。

これが運動麻痺や言語障害の起こる理由です。

 

ところが、脳のすごいところは、C地点から今度はほかのルートでバトンを渡そうとするのです。

新たなルートで、新たなリレーのチームを作り、「言葉を話す」という指令を伝えようとします。

この新チームは、以前のチームのようにバトンの受け渡しがうまくなく、スムーズに指令が届きません。

しかし、何度も繰り返し練習するうちに、だんだんうまく指令が伝わるようになっていきます。

このようにして、死んでしまった神経細胞は復元しないけれど、ほかのルートで代用できれば、言葉がある程度話せるようになり、失語症もよくなっていくというわけです。

 

ニューロン同士が情報伝達を行うこと、つまり神経機能的連絡を行うためには、新経路の交差点ともいうべきものが必要であり、この交差点をシナプスと言います。

このシナプスは、歳をとっても増加し、より成熟した結合が進行するとされています。

高度の創造過程にも高密度のシナプス形成が必要と思われ、そのためには、それに必要な素材として神経系構成成分、つまり栄養成分が必要なことは当然で、また、その構築作業のための酵素、そしてそれを補佐する補酵素的ビタミンも必要となります。

その中でも重要なものがビタミンB12なのです。

脳科学の発達によって、さまざまなことがわかり、新たな試みがされています。

 

ビタミンB12について?

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