肉のアブラは悪者ではない

肉のアブラは悪者ではない

 

2014年の雑誌「TIME」で飽和脂肪酸悪玉説が否定された頃から、アメリカでは、次々と肉のアブラの危険性を否定する研究結果が発表されるようになりました。

特に2017年、権威ある医学雑誌「Lancet」で、食事全体における脂肪エネルギー比が35%ほどの脂質摂取量が多い人は、少ない人に比べて心血管疾患による死亡リスクが低く、飽和脂肪酸の摂取と心血管疾患には関連がないという研究結果が発表され、これが全米に大きな影響を与えることになりました。

 

その後もこうした説を裏づける研究報告はたくさん上がっていて、飽和脂肪酸の摂取が多い地域と心血管疾患の数はむしろ負の相関関係にあることがわかっています。

肉のアブラをたくさん摂っている地域のほうが心血管疾患が少ないのです。

たとえばエスキモーはかつてアザラシの肉しか食べていませんでしたが、心血管疾患が非常に少なかったことがよく知られています。

 

私たちの細胞膜は脂質でできており、肉のアブラである飽和脂肪酸は細胞膜の良質な原料になります。

血管の膜も心臓の膜もすべてそうなので、飽和脂肪酸がしっかり摂れていると動脈硬化や心臓病が起こりにくくなるのは当然だと思います。

 

飽和脂肪酸の最大の特徴は、酸化しにくい脂質だということです。

酸化が進んだアブラが多い細胞膜は硬くなってしまうため、あっという間に血管の柔軟性が失われていきます。

 

オリープオイルなどの不飽和脂肪酸は、そのまま体内に取り込めば柔軟な細胞膜の原料になってくれるのですが、加熱してしまうと酸化して硬い細胞膜の原因になってしまいます。

アブラの種類とその摂り方についてはのちほど解説しますが、とにかくアブラは身体に悪くない、むしろ良いということだけは、ご理解いただきたいと思います。

 

たんぱく質と脂質をどのように食べるべきか、ここでどんな肉を食べるべきか、簡単にふれておきましょう。

 

まず、肉はどんな肉でも、どんな部位でもかまいません。

その日手に入りやすいもの、食べたいと思うものを選んでください。

ただ、同じ種類や部位ばかり食べ続けるとアレルゲンを作りやすくなるので、いろいろな種類をローテーションで食べるようにするとより安全です。

 

私の場合、2か所ほど肉を買う店を決めておいて、たとえば鶏もも肉でも、生産者が偏らないようにしています。

同じ生産者のものばかりだと、やはりアレルゲンができやすくなるからです。

 

また、あまりにも安いスーパーなどの肉は避けたほうがよいでしょう。

肉は育てられているときにどんな飼料を与えられているかによって質に大きな差が出ます。

あまりに安い場合は質の悪い飼料で育てられた可能性が高く、アブラの質も悪くなります。

安い肉は臭みが強かったり、アブラが黄色くなっています。

良質なアブラは白っぽいのです。

 

たとえば牛の場合、牧草だけを食べて大きくなるのが本来の姿です。

こうして育てられた牛はグラスフェッドといい、肉質もアブラも非常に良質です。

しかし、近年は人間の都合で、安いトウモロコシや米などの穀物を飼料に育てた肉が流通しています。

こちらはグレインフェッドといいます。

本来草食のはずの牛が糖質である穀物で育つと、人間と一緒で糖質過多になり、脂肪の組成がまったく違ってしまいます。

 

グラスフェッドの肉は赤黒い色をしていて味も非常においしいのですが、日本ではなかなか手に入りません。

グラスフェッドの肉を毎日食べるのは難しいですが、あまりにも安い肉を避けることはできるはずです。

 

また、鶏肉についても、昆虫などを食べて大きくなるのが本来の姿ですが、トウモロコシなどが与えられて育った肉が多く流通しています。

こちらも、あまりにアブラが黄色い安い肉は避けるようにしましょう。

 

どんな肉も、私たちの身体に入るものです。

売られている姿や値段だけでなく、飼育環境にも思いを馳せて、できるだけ身体に良い肉を選ぶようにしたいものです。

「9割が間違っている「たんぱく質」の摂り方 より」

 

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血管は「酸化」していくことで傷ついていきます。

たとえば、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が動脈硬化の原因になるということを聞いたことがあるかもしれません。

LDLコレステロール(以下LDL)が血管にへばりついて、プラークと呼ばれるこぶを血管の壁に形成していくのです。

 

でも、LDLには2種類あることをごぞんじですか?

それは、酸化したLDLと酸化していないLDLです。

LDLの中でも血管に悪さをしていたのは、実は酸化LDLだったのです。

ということは、血管を酸化から守るシステムがしっかりできていれば、酸化LDLは血管に付着しづらくなる。

それが血管老化を防ぎ、血管強化につながるということです。

 

この、血管の酸化を抑えてくれるのが、実はビタミンなのです。

ビタミンの中でも特に大事なビタミンが、ビタミンCとビタミンEです。

ビタミンCとビタミンEの抗酸化力は、非常に強力です。

心筋梗塞を起こした患者さんのグループが正常のグループよりも血中のビタミンC、ビタミンEの濃度が低かったとする報告もあります。

この2つのビタミンに、ビタミンAを加えた3つのビタミンは、いずれも抗酸化力が強く、ビタミンACE(エース)と呼ばれています。

そしてもうひとつ忘れてはいけない大事なビタミンがあります。

 

それはビタミンBです。

ビタミンBにはいくつかの種類があり、ビタミンBグループとして存在しています。

ビタミンBの抗酸化力は強くありませんが、細胞のエネルギー産生やエネルギー代謝を効率よくするためにはなくてはならないビタミンです。

体内で起こっている「酸化」の抑制にも間接的に関わっています。

B群は体中の細胞の正常な代謝活動を助ける「補酵素」として、欠かせない存在なのです。

ビタミンB12やB6、葉酸の吸収が悪くなると、ホモシステインという老化物質が増え、動脈硬化を生じることがわかっています。

また、ビタミンBは8種類すべてが互いに協力しあって体のエネルギーを生み出す働きに関わっているため、一緒にバランスよく摂ることがとても重要なのです。

 

ビタミンB12とは?

https://www.endokoro.com/libra/vitamin01.html