ビタミンの種類と働き
ミネラルと同様、体の機能を調節したり維持したりするために欠かせない微量栄養素です。
体内で合成できないため、食品からとる必要がある有機化合物の総称です。
★ビタミンには「欠乏症」があるのが特徴
体内では必要量が合成できず、不足すると欠乏症を起こす有機化合物がビタミン。
ビタミンAやCなどの名称は、体内での生理作用の特徴が共通するものにつけられた名前です。
現在は13種が認められており、大きく分類して水溶性と脂溶性とがあります。
ビタミンというと、とにかくたっぷりとるのがいいと思われていますが、一部のものは体に大量に蓄積されるとか過剰症を起こします。
現在日本人には、足りないとされているビタミンは特別ありませんが、食の乱れやストレス過多などを背景に、潜在的にビタミンが不足しているといわれます。
★ビタミンの種類と主な働き
【脂溶性ビタミン】
<ビタミンA>
粘膜や皮膚を健康に保ち、網膜で光を感じる物質の成分として視力を守ります。抗がん作用もあると考えられています。
・欠乏症
暗いところで視力がきかなくなる(夜盲症)。粘膜や皮膚が乾燥し、そこからウイルスや細菌に感染としやすくなる。がんの抑制効果や免疫力が低下するなど。
・過剰症
脂溶性で体内に蓄積されるため、とりすぎると頭痛や吐き気、発疹などをおこす。
・多く含む食品
鶏レバー、豚レバー、焼きのり、ウナギのかば焼き、ゆでホタルイカ、銀ダラ・・・
<ビタミンD>
カルシウムとリンの吸収をサポートして骨などに沈着させ、体内のカルシウム濃度を調整します。筋肉の働きを助けます。
・欠乏症
骨量が減り、骨軟化症や骨折を起こしやすくなる。高齢者や女性は骨粗鬆症になることもある。
・過剰症
吐き気や下痢などを伴うカルシウム血症を起こすことがある、腎臓や肝臓にカリシウムが沈着し、血管にもたまりやすくなって動脈硬化を進める。
・多く含む食品
乾燥きくらげ、アンきも、シラス干し、イクラ、クロカジキ、紅ザケ、ウナギのかば焼き、サンマ、干ししいたけ・・・
<ビタミンE>
過酸化脂質を分解して、細胞を活性酸素から守ります、老化予防や動脈硬化予防に有効です。また、ホルモンの生成や分泌にかかわったり、血行をよくしたりする働きもあります。
・欠乏症
活性酸素の害を受けやすくなる。大人の場合は、まれに、感覚障害などの神経障害を起こすことがある。
・過剰症
脂溶性ですが過剰症は認められていない、過剰にとり続けていると経度の肝障害を起こすという報告も。
・多く含む食品
アーモンド、綿実油、サフラワー油、アンきも、ピーナッツ、イクラ、辛子明太子・・・
<ビタミンK>
血液を固める酵素の成分になり、けがなどの際に吐血する、大切な働きがあります。また、カルシウムが骨に沈着するときに必要なオステカカリシンというたんぱく質を活性化させる働きもあり、骨形成に働きます。
・欠乏症
血液凝固に時間がかかる。腸内細菌によって体内合成されるので不足することはまれですが、肝疾患で胆汁の分泌が悪い人、抗生物質を長時間使用して腸内細菌が減っている人などは欠乏しやすくなる。
・過剰症
報告されていない。
・多く含む食品
カットわかめ、モロヘイヤ、納豆、あしたば、バジル、焼きのり、つるむらさき、干しひじき・・・
【水溶性ビタミン】
<ビタミンB1>
糖質を分解してエネルギーに変えるときに補酵素として活躍します。また、脳の中枢神経や手足の末梢神経の機能の正常化に欠かせません。
・欠乏症
糖質の代謝がうまくいかなくなり、脳や神経系にエネルギー不足が生じる。疲れやすくなったり、筋肉痛を起こしたり、集中力がなくなってイライラしたりする。食欲不振や倦怠感、手足のしびれ、膝蓋腱反射の消失など、脚気に似た症状が現れることもあり、ひどくなるとむくみや心臓肥大が見られる。
・過剰症
とりすぎによる過剰症はない。
・多く含む食品
豚ヒレ肉、いりごま、ボンレスハム、ウナギのかば焼き、タラコ、焼きのり・・・
<ビタミンB2>
脂質・糖質・たんぱく質を分解してエネルギーに変えるときに補酵素として働く。皮膚や粘膜を保護するビタミンで、成長促進や皮膚、髪、爪などの細胞の再生に働く。
・欠乏症
皮膚や粘膜にトラブルが生じる、にきび、肌荒れ、皮膚炎、口角炎、口内炎、舌炎、眼精疲労などの症状が現れる。
・過剰症
過剰症は報告されていない。
・多く含む食品
豚レバー、鶏レバー、干ししいたけ、干しひじき、アーモンド、ウナギのかば焼き・・・
<ナイアシン>
糖質・脂質。たんぱく質のエネルギー代謝をサポート。二日酔いの原因、アセトアルデヒドを分解する補酵素に。血行を促進します。
・欠乏症
軽い場合は、食欲減退や口角炎など。欠乏がひどいとペタグラになり、皮膚炎や下痢、さらに悪化すると胃腸障害や精神障害を起こす。日本ではアルコール中毒患者にみられることがある。
・過剰症
1度に100mg以上とると、血管が拡張して皮膚が赤くなったり、かゆみを起こしたり、嘔吐や下痢などの消化管の障害、肝機能障害などを起こしたりすることがある。
・多く含む食品
カツオけずり節、辛子明太子、キハダマグロ、ピーナッツ、干ししいたけ、イワシ丸干し、スルメ・・・
<ビタミンB6>
たんぱく質代謝の要です。体に必要なたんぱく質の再合成に働き、脂質の代謝にも重要な役割を果たします。皮膚炎予防や神経安定にも。
・欠乏症
主に神経系統や皮膚細胞に障害が生じやすくなる。運動・睡眠中のけいれんや手足のしびれ、情緒不安定、目・鼻・口の周りの皮膚炎、にきび、ふきでもの、貧血などを起こしやすくなる。
・過剰症
水溶性にもかかわらず、食事摂取基準で1日60mgの上限量が設けられているように、200-500mgもの大量摂取をすると感覚神経障害などを起こす恐れがある。
・多く含む食品
にんにく、ピスタチオ、ミナミマグロ赤身、牛レバー、カツオ、イワシ丸干し、鶏ひき肉、サケ・・・
<葉酸>
ビタミンB12とともに造血に働きます。また、たんぱく質や細胞新生に必要な核酸(DNAやRNA)の合成に関わります。
・欠乏症
普通の食事で不足することはまれですが、下痢などで欠乏すると皮膚炎や口角炎、貧血を起こす。また、葉酸不足でアミノ酸の一種の血中濃度上昇が続くと、動脈硬化のリスクが高まる。
・過剰症
過剰症の心配はありませんが、多量摂取が続くと、亜鉛の吸収が阻害されることもあるので、上限量(18歳以上で1000マイクログラム)を上回らないように注意が必要。
・多く含む食品
焼きのり、鶏レバー、牛レバー、ウニ、菜の花、枝豆、きな粉、モロヘイヤ・・・
<ビタミンB12>
悪性貧血を予防し、脳や神経の健康も助けます。葉酸とともに赤血球の生成を助けたり、神経細胞内のたんぱく質や核酸(DNAやRNA)の合成したりと、補酵素として非常に重要な働きを担っています。
また、認知症患者は脳内のビタミンB12濃度が低いことから、ビタミンB12は脳の機能にも重要な働きをしていると考えられています。
・欠乏症
造血機能が低下して悪性貧血を起こす。また、神経系の働きが悪化して手足のしびれや集中力の低下などが生じ、進行すると神経障害をおこすこともあります、食欲不振など胃腸障害も生じやすくなる。
・過剰症
特に心配はない。
・多く含む食品
しじみ、アカガイ、焼きのり、牛レバー、アサリ、イクラ、鶏レバー・・・
<ビオチン>
ビタミンHとも呼ばれ、皮膚や毛髪の健康維持に役立ちますが、その詳しいメカニズムなどについてはまだわかっていません。
・欠乏症
欠乏すると、皮膚炎や脱毛などの症状が現れます。各種の食品に含まれているため、通常の食事をしていれぱ不足することはない。
・過剰症
とりすぎによる過剰症は今のところ報告されていない。
・多く含む食品
卵、レバー、イワシ、くるみなどナッツ類、カリフラワー、ほうれん草、玉ねぎ・・・
<パントテン酸>
コエンザイムAという補酵素の成分になり、脂質や糖質の代謝にかかわります。ホルモンや免疫抗体の合成を促すなどの働きも。
・欠乏症
不足することはあまりないが、お酒やコーヒーをよく飲む人は不足する傾向がある。手足のしびれなどの知覚異常や頭痛、疲労、食欲不振などの症例が報告されている。
・過剰症
過剰症はない。仮にとりすぎたとしても、排泄されるので心配ない。
<ビタミンC>
コラーゲンを合成して血管や皮膚を健康に保ちます。抗酸化作用や抗ストレス作用があります。吸収されにくい鉄をとり込みやすくします。
・欠乏症
皮下や歯茎から出血する壊血病を起こす。これは、コラーゲンが不足して血管がもろくなることが原因。成長不全や貧血になりやすく、免疫力が低下して感染症にかかりやすくなる。
・過剰症
体内に蓄積されることはなく、過剰症は心配ない。ただし、一度に大量に摂取すると下痢や嘔吐、発疹などが見られることもある。
・多く含む食品
赤ピーマン、芽キャベツ、黄ピーマン、菜の花、レモン、カリフラワー、にがうり、キウイフルーツ、イチゴ・・・
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