アセチルコリンが欠乏する病気―アルツハイマー型認知症

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20世紀に入って間もないころの話です。
ドイツのフランクフルトにある病院にアウグステという51歳の女性が入院してきました。
彼女は「もの忘れ」がひどく、自分の家の玄関や台所やトイレに行く通路に迷うようになりました。
さらに、夫に対して病的な「嫉妬妄想」を抱くようになったのです。
 
そんな彼女の担当医となったのが、アルツハイマー博士でした。
彼は首をかしげました。
当時、認知症のような症状は梅毒が原因であることが多いと考えられていました。
ところが、アウグステの症状は梅毒によるものではなく、今までのどんな認知症にも分類されない、と考えたのです。
 
アウグステの死後、アルツハイマー博士は脳を解剖させてもらって顕微鏡で丹念に観察し、脳の内部に浮かんでいる茶褐色のシミ状の斑点を見つけ出したのです。
そして、1906年に学会で「脳内のこの病変、異常こそ、彼女の認知症の原因である」と発表しました。
 
それからおよそ100年が経過した現在、認知症を発症した方の脳にできてくる斑点は「老人斑」と呼ばれています。
この老人班の正体は「アミロイド」という、異常なたんぱく質であることがわかりました。
 
脳がこのような変化を起こすことが認知症の原因になるという、アルツハイマー博士が看破したこの考えが今日も受け入れられて、「アルツハイマー認知症」と命名されたているのです。
 
現在まで主流であった「アミロイド仮説」とは、「アルツハイマー認知症の主犯はアミロイドで、何らかの理由で脳の中にアミロイドが溜まって、そのアミロイドが毒性を持ち、神経細胞を破壊して認知症になる」という考えです。
 
そして、アミロイドの毒性の結果として神経細胞が傷害を受け、アセチルコリンが欠乏するのです。
アルツハイマー認知症の患者さんの脳内では著しくアセチルコリンが減少しています。
そして、海馬機能が低下し、見たり聞いたり経験したことが記憶に残らない「エピソード記憶の遅延再生」の障害を呈してくるのです。
 
実は、脳の中のアミロイドは、特に珍しいものではありません。
アミロイドは脳が活動する限り生じる“生活ゴミ”のようなものです。
20代でもすでにアミロイドが生じる場合もあるといわれています。
 
しかし、若いうちは脳でいくらアミロイドが発生しても、すぐに掃除して除去してしまう機能が活発に働いてくれます。
ところが多くの人の場合、40歳くらいになると、この“生活ゴミ”が掃除されにくくなる。
そして、じわじわと溜まってきてしまうのです。
 
このアミロイド仮説はあくまでも「仮説」であって、絶対的なものではありません。
なぜなら、アミロイドが脳内にかなり溜まっても、神経細胞アセチルコリンのような脳内エネルギーががんばれば、認知症になるとは限らないからです。
アメリカの修道女を対象とした「ナン・スタディ(修道女研究)」がそのことを証明しました。
 
たとえば、修道女のひとり、シスター・バーナデットの脳は、解剖では老人斑(アミロイド)が脳全体に広がり、その病変は認知機能の中枢の前頭葉にまで達していました。
そのため、解剖した医者は彼女はもっとも重度のアルツハイマー認知症だと診断しました。
 
ところが彼女は心臓発作で死去するまで、精神機能、身体機能には衰えがまったく認められていなかったのです。
 
このシスター・バーナデットのようなケースは決して極端な例ではなく、解剖された脳の病理では重度のアミロイドの沈着を認めても、なんと、その3分の1の修道女たちは生前、健常な知能機能を維持していたのです。
 
ですから、「ナン・スタディ」の関係者は、彼女たちを認知症から「逃げおせた人」と呼んでいます。
 
脳にアミロイドが溜まっても、残された脳内エネルギーが活性化していれば、認知症から逃げきれる可能性を「ナン・スタディ」は示したのです。
これらの事実から、認知症の予防にはアセチロコリンを活性化させる生活習慣が重要であると考えられています。
 
「A(アセチルコリン)欠乏脳」のための健康10カ条⇒1021日記事
「もの忘れとウツがなくなる「脳」健康法 より」
 
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木枯らしと孤独が骨身に染みる秋が深まるとなんとなく悲しい気持ちになるといわれていますが、はたして秋の物悲しさには医学的な根拠はあるのでしょうか?

 なんと季節の変化が引き起こすうつ病が存在するというのです。
エアコンの使用が一般的になり夏に体が冷えてしまうなど季節の変化に対応しにくくなった現代人。
季節性うつは自然な生活リズムを崩してしまった人がかかりやすい病気なのだそうです。

 「なかでも10月から3月頃にみられる冬季うつは、過食、過眠なども主な症状としてあげられます。秋になり日照時間が短くなることで、メラトニンというホルモンの分泌に異常が起こり体内時計が狂ったり、神経伝達物質セロトニンが減ることによる脳の活動低下が原因と考えられています」

 うつ病は、今やサラリーマンの3割近くに見られ、「心のかぜ」ともいわれるほどポピュラーな病気になりました。
原因としては、精神的なストレスのほか、コンピューターによるテクノストレスや、テレビやゲームなどによる眼精疲労などが元になることもあります。
 
また、脳内の神経伝達物質であるセロトニンノルアドレナリンが減少したり、視床下部や下垂体といった脳の機能の異常なども、原因として考えられています。
 
不足している栄養素がないよう食生活の乱れに注意したり、パソコンなどを使いすぎないように気をつけたりといった、生活全般を見直してみることが必要です。
 
うつ症状の予防や軽度の場合の改善に役立つのは、ハーブの一種であるセントジョーンズワートです。
有効成分のぺルリフォリンに、脳内の神経伝達物質セロトニンを増加させる働きがあるため、おちこんだ気分を回復して、気持ちを適度に高揚させてくれます。
 
そのほかには、神経伝達物質セロトニンの材料となるトリプトファンや、セロトニンなどの生成に必要なビタミンB6・B12葉酸などのビタミンB群を補給します。
 
トリプトファンアミノ酸の一種で、牛乳や肉(赤身がいい)などのたんぱく質に含まれています。
ビタミンB6は、かつお、まぐろ、さけなどの魚類、牛肉、鶏ささ身、レバーなどに多く含まれています。
ビタミンB12はレバーや魚介類に、葉酸はレバーのほか、菜の花、モロヘイヤ、春菊など緑の濃い野菜に多いです。
また、イチョウ葉に含まれるギンコライドやケルセチンなどのポリフェノールは、脳の血液循環をよくして、脳を活性化します(お茶などでとるのがおすすめです)
 
 加えて、散歩など屋外で体を動かす機会を増やすと、気分のおちこみを軽減しやすくなります。
 
 ただし、軽度のおちこみだけでなく、うつの症状がみられるときは、まず病院で検査を受け、治療と並行して、これらの食事療法を行ってください。
 
ビタミンB12は、脳からの指令を伝達する神経を正常に働かせるために必要な栄養素です。
十分にあると、集中力ややる気が高まり、不足すると、神経過敏などの症状が起こりやすくなります。
また、脳や神経と関連が深く、不眠症にも効果があるといわれています。
 
人間の体質改善は約3ヶ月程度が基準となっているため、続けなければ効果が得られません。
日常の生活習慣や生活環境を改善するとともに栄養面を改善することが大切です。
 
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