バラエティに富む副食重視の食事
次は主食と副菜との関係です。
特定の食品でなく、バラエティに富んだ副食重視の食事を考えます。
久山町研究では、緑黄色野菜や牛乳、乳製品、大豆、大豆製品などを多く摂取し、米や酒の摂取は少ない食事のグループのほうが、認知症の発症率も低かったと報告しています。
この調査は非常に面白い。
特定の野菜とかの食品でなく、複数の栄養とそのバランスに目をつけたのです。
一般の日本式の食事法は、主食である米、パン、麺などの摂取量が多く、肉、魚、野菜などの副食の摂取量が少ない。
また、我々の主食としているご飯は、超便利な食材で、和食はもちろん、洋食であれ中華料理であれ、すべてに合うのです。
だから、どうしても主食が多くなり、副食が減ります。
これが落とし穴です。
摂取カロリーが一定でも、主食である米、パン、麺などの摂取量や酒量が多くなると、ビタミンやミネラルなど認知症の発症予防効果のある、他の食品の摂取量が減ってしまうのです。
わかりやすくいえば、「主食が多く副食が少ない」です。
食事療法の真髄は、栄養のバランスにあります。
栄養素の種類の少ない主食が多く、栄養素の種類の多い副食が少ないならば、どうしても食事全体の栄養バランスが崩れてしまう。
つまり、単一の主食より、バラエティに富む副食重視の食事のほうが、認知症予防にも記憶力回復にも効果あり、とわかった次第です。
報告は金沢大学ばかりではありません。
九州大でも、国立長寿医療研究センター老年学・社会科学研究センターでも研究がなされており、よい結果を出しています。
当然ですが、名前忘れも減るでしょう。
何病にも限らず、一定の特定食の継続は、食べる本人も飽きるし、調理する側も苦労です。
そうした点を考慮してか、今回の研究や調査では、「バラエティに富み、栄養バランスが良い食事」が選ばれています。
とくに「バラエティに富む食事」には重要な意味が潜んでいます。
「これは脳のために良いから食べなさい」と決めつけられては、味を選択する余裕もありません。
同じ食材を食べ続けるとなると、飽きてしまう。
すると食欲も減退気味になり、ついには高齢者特有の低栄養も発生しやすくなります。
バラエティに富む副食重視の食事ならば、味も変わるし、飽きることも少ないでしょう。
飽きることが減れば、食べ続けられます。
食べ続けるうちに、認知症も高齢者特有の低栄養も防げます。
「人の名前が出てこなくなったときに読む本 より」
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ビタミンB群が不足するとエネルギーを生み出すことができず、疲れがなかなか回復しなくなったり、細胞の修復機能がダウンして、肌荒れや口内炎が治りにくくなったりするのです。
なかでも注目が、ビタミンB12です。
古くから、神経系の機能回復に効果があることが知られていましたが、最近の研究で、このビタミンB12の不足によって脳細胞の萎縮が進むことがわかってきました。
また、ビタミン欠乏症が原因で、認知症になるケースがあるそうです。
ビタミンの種類は、ビタミンB1、ビタミンB12、葉酸。
高齢者が理由のはっきりしない神経症状を呈したら、ビタミンB12の欠乏を考えるべきだという学者もいます。
現在60歳以上の2割の人に、ビタミンB12の欠乏が見られるということです。
ビタミンB12は胃の内因子という糖たんばくと結合し吸収されますが、年齢とともに胃が小さくなったり胃の状態が悪くなったりして、内因子が
少なくなりビタミンB12の吸収が悪くなってしまうのです。
血液検査では見つけられないような軽度のビタミンB12の欠乏でも、認知症に似た神経異常を引きおこすことがあります。
とくに高齢者では、ビタミンB12の値が基準値の範囲にあっても、それが下限値の場合には、記憶障害をおこすことが知られています。
萎縮性胃炎など胃の病気などで内因子が作れない場合も吸収が困難になります。
しかし、ビタミンB12は大量に摂ることで浸透圧の原理による押し込み効果によって胃の内因子と関係なく吸収されることが分かっています。
吸収率を高めるビタミンB12摂取量の目安は1000μg(マイクログラム)以上と考えられています。
最近では、ケタ違いに大量のビタミンB12を摂取することで、脳神経系にさまざまな効果が認められることがわかってきました。
脳神経系への積極的な作用を期待するには、1日に3000μg(マイクログラム)をとるよう提唱しています。
ビタミンB12について?
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