興味を失うから記憶も生まれない

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興味を失うから記憶も生まれない
 
「記憶は興味のあるところにのみ生ずる」。
これは大脳生理学の基本的な定義です。
でも「興味があれば記憶する」を裏返せば、「興味がなければ記憶しない」になりますね。
 
 ここが問題です。
とんだ間違いに到達する恐れがあるのです。
 相手の名前がどうしても出てこない。
だが、前出の大脳生理学の定義によれば、「記憶は興味のあるところに生ずるのだから、名前を忘れられたのも、相手に興味も魅力もなかったからだ。名前を忘れたのは私の落ち度でなく、名前を忘れられたほうに落ち度がある」の結論になってしまいます。
 分かりやすく言えば、「相手の名前が出てこない」は、相手の興味や魅力の問題で、こちらの記憶の問題でないことになります。
 
度忘れの「興味説」にも、認知症が潜んでいます。
度忘れの原点は、「記憶は興味のあるところにのみ生ずる」の定義です。
ここに一つの矛盾が存在します。
「脳の老化」のほとんどは「興味を失う」から始まるともいわれます。
試みに認知症の症状を見てください。
あれほど熱心だった趣味も無関心になり、その他のものにも興味を失う。
 
「最近、駅前も変わりました。あなたの好きそうなお店もいっぱいあるわよ。一度出かけてみない?」と言われても、まったく興味を示さない。
そしてついには「今度行こう」の言い逃れになってしまいます。
この「今度」と「幽霊」は出たことがない。
 
興味がなければ記憶も生まない。
生まれないままに放置していれば、次に意欲が低下します。
興味を持つためには、意欲が重要な役割をします。
 
「今度行こう」のことばの裏には、意欲の低下がありありと見て取れます。
「今度行こう」の「今度」は無期延期を意味するからです。
「行こう」の興味もなければ、「出かけよう」という意欲も見えません。
 
意欲の低下が始まれば、思い出そうの努力もなくなります。
つまり記憶力の低下です。
ここまでくれば認知症はすぐそばです。
 
興味を失うから記憶も生まれない
 
相手がいかに興味のある人でも、こちらが興味をかんじる力を失っていたのでは、記憶は生まれません。
 
この場合、落ち度はあなたにあって、相手にはない。
すると、前出の「名前を忘れられたのも、相手に興味も魅力もなかったからである。名前を忘れたのは私の落ち度でなく、名前を忘れられたほうに落ち度がある」の大脳生理学の定義と矛盾します。
いくら興味いっぱいの話をして名前を付け加えても、聞く側に、興味を感じる力もなく、聞き取ろう、覚えようとの意欲がなければ、それこそ馬の耳に念仏になってしまいます。
 
名前を忘れれば、人間関係が崩れ、社会性が崩れる。
名前忘れは群れの放棄であり、孤独の始まりです。
群れを作る動物を孤独にすると、狂暴になり、ついには狂死するという報告もあるほどです。
狂暴も狂死も嫌ですね。
 
認知症の症状は中心症状と周辺症状に分かれます。
中心症状は記憶力の低下、見当識の低下などであり、周辺症状は暴言、暴行などの狂暴的行動、さらには徘徊も含まれます。
「狂暴」は認知症の周辺症状として、たびたび現れます。
 
名前忘れがおこり、社会性を失い孤独になれば、狂暴、狂死につながる認知症が待っているのです。
 
たとえ1人暮らしになっても、人間関係を失ってはいけません。
社会性を失ってはいけません。
 
もうおわかりでしょう。
こちらに意欲がなくなれば、興味を土台とする度忘れ説は吹き飛んでしまいます。
「人の名前が出てこなくなったときに読む本 より」
 
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物忘れとは、脳は、体の機能全般をコントロールしている司令塔ですが、加齢とともにその働きは衰え物忘れの症状が出てきます。
脳血管の動脈硬化を放っておくと、血液循環が悪くなって脳細胞の動きが低下し、記憶力や思考力などが鈍り物忘れがはじまります。
40歳を越えた頃から「ど忘れや物忘れが激しくなった」「人の名前がなかなか思い出せなくなった」などと物忘れを感じるようになるのは、脳機能低下のあらわれです。
 
物忘れに関する神経伝達物質の中で記憶と学習にかかわっているのはアセチルコリンで、このアセチルコリンはコリンと酵素を原料にしてつくられています。
アセチルコリンの合成にはコリン、ビタミンB1、ビタミンB12などがかかわっています。
同時にこれらの栄養をとることが、アセチルコリンを増やすことにつながるわけです。
通常、コリンはレシチン(フォスファチジルコリン)のかたちで、食材から摂取されます。
レシチンアセチルコリンの材料になるだけではなく、細胞膜の材料にもなっています。
とくに脳の神経細胞の細胞膜にはたくさん含まれていて、多彩な働きをしています。
血液にのって運ばれる栄養の細胞内へのとり込みや細胞内の老廃物の排出、神経伝達物質の放出や情報ネットワークの形成といった、脳の機能全体に深くかかわっています。
これが、レシチンが「脳の栄養素」と呼ばれるゆえんです。
そのレシチンを多く含んでいる食品の代表が卵黄です。
なお、レシチンアセチルコリンに合成するには、ビタミンB群が欠かせないため、同時にとることが望ましいのです。
アルツハイマー認知症の患者の脳脊髄中にはビタミンB12が少ないことが確認されています。
 
ビタミンB12について?
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