第5章 「人生いろいろ」で多様性を認める

第5章 「人生いろいろ」で多様性を認める

 

まさに「人生いろいろ」で、みんながこうあるべきという決めつけは、知的にもメンタルヘルスのうえでも好ましいものではありません。

 

高齢者のすてきなところ、深みを感じさせる部分は、「人生いろいろ」が認められることです。

歳をとると頑固になると思われがちですが、むしろ長く生きているほど、多様性を認められるようになっていくものだと思います。

 

将来にはもしかしたら、若いころからずっとテレワークで働き、多様な人とふれあうことがほとんどないまま70歳や80歳になる人も出てきて、高齢者といえども「人生いろいろ」を知らないのが普通になるのかもしれません。

 

でも、いまの高齢者は違います。

学校では優等生ではなく不まじめに見えた人が、意外に要領よく成功してずっと順調だったり、一時期すごく羽振りがよさそうだった人が転落していったりと、これまでにたくさんの「人生いろいろ」を見ています。

そのことによって、高い学歴を得れば成功するといった、世間の定説どおりには必ずしもならないことを知っています。

 

人間は変われない、変わらないものだという思い込みを、多くの人がもっています。

日本の学歴信仰のベースにあるのは、18歳時点での勝ち負けが一生続くという認識です。

たとえば、東大医学部を出ていることに対して、「頭がいいんですね」と言われることがあります。

でも、それは、大学を受験した18歳時点で、ほかの受験生よりは勉強ができたにすぎないのです。

 

ですから、「頭がよかったんですね」と言われるならわかりますが、「頭がいいんですね」と言われるのは違和感があります。

もし、現在形で「頭がいい」のだとすれば、それは東大医学部卒だからではなく、そのあともずっと勉強しているからです。

 

人間は18歳のときから変わらないということが、当たり前のこととして認識されているのはおかしなことです。

人生には、浮き沈みも勝ち負けもあり、人間はそのなかで変化していく生き物なのです

 

「人間は変わるものだ」と、高齢者の方にこそ声を上げてほしいと思います。

「人生いろいろ」とか、「人間はころころ変わる」ということを、高齢者は経験を通して知っているはずなのに、なぜかそれを封印している人が多いような気がします。

 

たとえば、学歴はそうあてになるものではないと知っているはずなのに、お孫さんに対して、「いい大学に行きなさい」と、つい言いがちです。

本来ならそこで、「いい大学に入れるのならそれに越したことはないけど、そのあとも勉強しなかったら意味はないよ」という、当たり前のことを伝えるべきなのです。

 

高齢者が、人間的な「深み」や「幅の広さ」を感じさせてくれると、「だてに歳をとっていないな」と思います。

多くの人が「賢い老人」に求めているのはそのようなものです。

 

誰もがスマホをもち、ネットで何でも調べられる時代になり、知識に優位性がなくなっているからこそ、その人のもつ人生哲学や経験が人間的な「深み」や「幅」につながっているかどうかが、大きな意味や価値をもつものだと思います。

「老いの品格 品よく、賢く、おもしろく より」

 

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脳の中では、運動会のリレーのように、神経がバトンをつないで、指令を伝達していきます。

しかし、たとえばC地点の神経細胞が倒れてしまい、指令がそこで止まってしまう、という事態が起こります。

このとき、すぐにC地点の神経細胞を救出できれば復活したのですが、時間が経ち、死んでしまって、その指令も届かなくなる。

これが運動麻痺や言語障害の起こる理由です。

 

ところが、脳のすごいところは、C地点から今度はほかのルートでバトンを渡そうとするのです。

新たなルートで、新たなリレーのチームを作り、「言葉を話す」という指令を伝えようとします。

この新チームは、以前のチームのようにバトンの受け渡しがうまくなく、スムーズに指令が届きません。

しかし、何度も繰り返し練習するうちに、だんだんうまく指令が伝わるようになっていきます。

このようにして、死んでしまった神経細胞は復元しないけれど、ほかのルートで代用できれば、言葉がある程度話せるようになり、失語症もよくなっていくというわけです。

 

ニューロン同士が情報伝達を行うこと、つまり神経機能的連絡を行うためには、新経路の交差点ともいうべきものが必要であり、この交差点をシナプスと言います。

このシナプスは、歳をとっても増加し、より成熟した結合が進行するとされています。

高度の創造過程にも高密度のシナプス形成が必要と思われ、そのためには、それに必要な素材として神経系構成成分、つまり栄養成分が必要なことは当然で、また、その構築作業のための酵素、そしてそれを補佐する補酵素的ビタミンも必要となります。

その中でも重要なものがビタミンB12なのです。

脳科学の発達によって、さまざまなことがわかり、新たな試みがされています。

 

ビタミンB12について?

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