うつ、海馬のダメージ、アルツハイマー病

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うつ、海馬のダメージ、アルツハイマー
 
1996年、ワシントン大学セントルイス校のイベット・シェライン教授は、うつと海馬のサイズの関係を報告しました。
うつ患者の半数において血中コルチゾール値が異常に高かったのです。
そして、MRIを用いて左右の海馬の体積を健常者と比べたところ、右で12パーセント、左で背15パーセント、低下していたことが判明しました。
 
しかも、海馬の体積は、うつに苦しんだ期間に比例して減少していました。
このことから、うつが海馬の体積を減少させた原因であることがわかります。
 
うつが慢性ストレスとして働き、コルチゾールを過剰に放出させ、海馬の神経細胞を殺すことによって、海馬の体積が減少したのです。
 
大量のコルチゾールによって海馬がダメージを受けると、さらに困ったことが起こります。
視床下部はストレス反応を発生させる拠点ですが、最近、海馬がストレス反応にブレーキをかけるシグナルを視床下部に送っていることが明らかになりました。
海馬にダメージが発生すると、このブレーキが働かなくなるのです。
このことは、海馬にダメージのあるネズミやサルがストレス反応を止められないことからもわかります。
 
コルチゾールが慢性的に高いレベルに保たれると、コルチゾールの放出を止める海馬にダメージを与えてしまい、コルチゾールが放出され続けるという悪循環におちいります。
 
とりわけ、この悪循環は年老いた動物にしばしばみられます。
このことから、スタンフォード大学のロバート・サポルスキー教授は、海馬のダメージが老化の原因の一つであるという仮説を提出しています。
 
つまり、加齢によって脳内のコルチゾールレベルが高まると、海馬に備わったストレス反応ヘノブレーキが効かなくなり、このためにコルチゾールレベルがさらに高まり、なおいっそう海馬が壊れます。
 
高齢者に多く見られる、高血圧、糖尿病、免疫不全などの体の病気はコルチゾール過剰によって引き起こされると考えられます。
 
ハイレベルのコルチゾールによって海馬の神経細胞が死ぬと、日時、場所、人の名前が覚えられず、自分のいる場所がわからなくなるアルツハイマー病が発生します。
しかも、最もコルチゾールレベルの高い高齢者は、最も海馬が小さく、最も大きな記憶障害に苦しむ傾向があります。
 
以上のことから、慢性ストレスがうつとアルツハイマー病を発生させる原因の一つとなっていることがわかります。
「病気にならない脳の習慣 心と免疫力のしくみ より」
 
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脳には無数の神経細胞があり、その神経細胞の末端からセロトニンアセチルコリンドーパミンなどの神経伝達物質を放出しています。
それらによって次の細胞に情報を伝えていき、それが網の目のようにいっせいに行われることで、情報が瞬時に伝わり、手や足などの末端まで伝達されていきます。
しかし、その伝達情報がうまくいかないと、脳が興奮して抑制が効かなくなり、イライラしたり、落ち着かなくなったりします。

イライラしやすいときは、脳の神経伝達物質であるセロトニンアセチルコリンドーパミンなどが不足していることが考えられます。
そのため、これらの材料となるアミノ酸と、アミノ酸を取り込むために必要な糖分やビタミンB12の不足を疑ってみましょう。
また、脳の唯一のエネルギー源であるブドウ糖が足りなかったり、神経伝達物質を放出するときに働くカルシウムが不足したりしているのも原因のひとつと考えられます。

それらの成分が不足する背景には、朝食を抜くといった欠食や、栄養のバランスの悪さなどが考えられます。
忙しいからと食事をぬいていないか、好きなものばかり食べて偏食をしていないかなど、自分の日頃の食生活をふり返り、食事リズムと栄養バランスを改善していくことが大事です。
 
<ビタミンB12の働き>
・新しい細胞を作り、壊れた細胞を修復する働き。
・神経の壊れた部分を修復する働き。
・伝達物質を作る働き。
・免疫を正常にする働き。
・脳の詰まったところをかき出す働き。
・血流をよくする働き。
 
ビタミンB12には、脳の血流をよくするとともに、脳神経の働きを改善あるいは促進する作用があります。
同時に、動脈硬化の原因となるホモシステイン活性酸素(ふえすぎると体に害を及ぼす非常に不安定な酸素)を除去する働きも持っています。
 
ビタミンB12は、脳からの指令を伝達する神経を、正常に働かせるために必要な栄養素です。
十分にあると、集中力ややる気が高まり、不足すると、神経過敏などの症状が起こりやすくなります。
 
ビタミンB12について