脳だけにある独自の検疫システム
脳はほかの臓器にない働きをたくさんもっています。
すごいと思うことのひとつは、特別な検疫システムです。
「Blood-Brain Barrier(BBB=ブラッド・ブレイン・バリア、血液脳関門)と呼ばれています。
体内に取り込んだ空気や飲食物に含まれる有害な物質は、肝臓で解毒されます。
解毒しきれなかった細菌やウイルス、化学物質などは、血液に乗って身体を回ってしまいます。
身体の隅々まで酸素と栄養を運ぶ毛細血管の壁は薄くスカスカなので、有害物質も一緒に細胞の中へ染み出してしまい、身体の害を及ぼします。
ところが、脳にはフィルターのような特別な場所があって、有害物質の侵入を防いでいます。
脳内細胞の90%を占めるグリア細胞が毛細血管の外壁を覆い、不要な物は沁み込ませないようにしているのです。
脳は、必要な物と必要ない物を独自にセレクションしているわけです。
ただしアルコールやニコチンなど、このフィルターを通り抜けてしまう困りものの有毒物質もあります。
脳のもうひとつのすごさは、バックアップ機能をもっていることです。
ある部分が傷ついて働かなくなると、すぐに別の部分が代行するのです。
たとえば脳の中の動脈の一部であるウィリス動脈輪は、内頚動脈と椎骨動脈という2つの動脈を連絡することによって、血液の循環を調節する機能をもっています。
片方の動脈に血栓が詰まって血液が流れなくなってしまったとき、もう片方の動脈で最低限の血液を流すしくみです。
脳の血管が詰まると細胞が壊死し、生死に直結します。
そのため、あらかじめ代替機能備わっているのです。
ネットワークがダメージを受けて身体の特定の機能が失われたときも、まわりの部分から連携を取ることができます。
脳梗塞や脳出血の後遺症で手足に麻痺が残ることがありますが、リハビリを続けると少しずつ動かせるようになるのはそのためです。
手足を動かせなくても、動かすイメージでトレーニングしていると、脳の運動系へ刺激が送られます。
そのため、手足を動かす神経のネットワークが再生するのだと思われます。
動かそうとする部分からの刺激が脳に届き、記憶系や感覚系が運動系を刺激するのです。
リハビリは、脳の中に新たなネットワークを構築するために行うわけです。
事故や糖尿病による壊死などで手足の切断を余儀なくされた人が、失った部分に痛みやかゆみを感じることがあります。
幻肢痛と呼ばれます。
理由は正確にわかっていないのですが、切断された末端の神経が脳に刺激を送っているという説や、脳が自分の身体を認識しようとする作用ではないかという説があります。
「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法 より」
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血液脳関門とは
「薬物の血中から脳内への移行を制限する機能。
アミノ酸やグルコースなどの神経活動のエネルギー源となる栄養素は脳内に選択的に輸送されるが、多くの物質は脳内に自由に入るわけではない。
……水溶性の高い物質あるいはタンパク質などの大きな分子はこの関門を通過し難いが、脳毛細血管に発現している多くのトランスポーターによって、栄養素(グルコース、アミノ酸、ヌクレオチドなど)は選択的に血液脳関門を通過する。
……内皮細胞内に入った毒物・薬物を血中へ戻すことにより脳内への侵入を妨げていることが知られている。」(日本薬学サイトより)
脳は脂肪成分が多く、その量は60%とも言われています。
脳の中身を考えても血液脳関門を水溶性の高い物質が通過しにくいということがわかるのではないでしょうか。
さらに、血液脳関門を通過できるということは、脳にとって栄養となる重要な意味を持つ物質と考えられるでしょう。
ビタミンB12は水溶性ですが、脂肪成分と馴染みやすい構造を持っています。
脳はタンパク質とともに脂肪成分を多く含む器官です。
そのためビタミンB12は血液脳関門を通過できるという特徴を持った貴重な栄養素なのです。
ビタミンB12は、体にとって重要なタンパク合成と核酸(DNA)合成を司る栄養素です。
新しい核酸、タンパク質が生まれ、それによって細胞も新しく生まれ変わり、「こわれた組織、細胞」と「新生の組織、細胞」が入れ替わります。
その結果若さにもつながると考えられます。
現在、ビタミンB12は神経ビタミンとしての認識が一般的となっています。
末梢神経の不調はもちろん、中枢神経の機能低下にも有効であることが明らかになっています。
ビタミンB12について?
https://www.endokoro.com/libra/vitamin01.html
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