第1章 老いることにジタバタしない人には品格がある 老いと闘えるあいだは戦い抜く

第1章 老いることにジタバタしない人には品格がある

老いと闘えるあいだは戦い抜く

 

いま、老いに対する人びとのスタンスが二極化していると感じます。

 

一方は、老いとずっと闘いつづけなければならないと考える、「アンチエイジング派」です。

いつまでも若々しくありたい、老け込みたくない、寝たきりや認知症にならないようにしたいと考える人たちです。

 

もう一方は、その対極の反アンチエイジング、「自然に老いる派」です。

 

老いと闘うか、受け入れるか。

残念ながら、人間は最終的に老いを受け入れざるをえないと考えています。

 

そのベースにあるのは、高齢者医療での経験です。

老年医学の研究のため、入所者の診療を行うとともに、亡くなった人の解剖を行い、高齢者の脳や臓器について研究がすすめられました。

 

その結果、わかったのは、85歳を過ぎると、脳にアルツハイマー型の神経の変性がない人、体内にがんがない人も動脈硬化が生じていない人は一人もいないということです。

 

つまり、どれほど認知症にならないようにがんばったところで、あるいは生活習慣病を予防するために食生活や運動に気をつけたところで、ある程度の高齢になれば誰もが認知症になるし、生活習慣病にもなるのです。

 

かつては成人病と呼ばれていた脳卒中や心臓病などを、「生活習慣病」と改称することを提唱したのは、100歳を過ぎても現役医師という活躍していた日野原重明(享年105)ですが、その日野原先生でさえ、晩年は脳内に変化が起こっていたと考えられます。

 

同じくらい脳が縮んでいても、すっりボケたようになってしまう人と、驚くほど頭がしっかりしている人がおり、症状の表れ方には個人差があります。

認知症になったとしても頭を使いつづけて、なるべくしっかりした状態を保つようにしてほしいと思います。

 

いずれにせよ、人間はいつかボケます。

いつかは歩けなくなります。

それを覚悟しておく必要があります。

 

認知症について「ボケる」と表現するのは、侮辱的であるとして避けるのが一般的になっていますが、必ずしもネガティブなニュアンスの言葉とは思っていません。

むしろ、脳の老化がもたらす自然な状態を表すものと認識しているので、ここでも使用することをここでお断りしておきます。

 

認知症の検査法である「長谷川式簡易知能評価スケール」を開発したことでも知られる、精神科医の長谷川和夫先生は、88歳のときにみずから認知症であることを公表しました。

 

長谷川先生本人は、新聞のインタビューで「隠すことはない。年を取ったら誰でもなるんだなと皆が考えるようになれば、社会の認識は変わる」とあっさり言い、「認知症の人自身が何を感じているかを伝えたい」と、講演活動を始めました。

 

「ボケたらしかたがない、ボケたなりにできることをやろう」と考えるほうが老いに対するスタンスとした健全なのではと思います。

 

老いと闘うことと、老いを受け入れることは、二項対立ではなく「移行」だと思っています。

 

老いと闘えるあいだは、闘ったほうがいいと思います。

まだ十分に闘える時期なのにそうしないと、年齢以上にずっと老け込んでしまいます。

定年後に何もしない生活をしていると、60代でも歩行がよろよろしたり、すっかり老人そのものの顔つきになったりする人もいます。

 

70歳そこそこで寿命がきていた時代であれば、それでもかまわないと思いますが、いまや日本人の平均寿命は男性が81歳、女性が87歳を超えています

これは平均ですから、60歳より前に亡くなる人がいることを考慮し、平均余命を見るかぎり、男性でも85歳くらいまで生きる人が多数派でしょう

 

60代から20年以上ものあいだ、ヨボヨボの状態で過ごすというのは、さすがにつらいのではないでしょうか。

歩けなくなると行動範囲がかなり狭くなってしまうので、できるかぎり毎日、散歩を楽しむようにしたいですね。

 

また、認知機能があまりにも急に衰えると、本も読めなくなるし、人との会話もままならなくなるので、なるべく頭を使いつづけるようにすることです。

こうして、ある時期までは老いと闘っておいたほうが、少なくとも残りの人生を楽しめると思います。

 

ただ、認知症になって軽い物忘れが始まった、あるいは歩行がおぼつかなくなったら、それで人生終わりかといえば、そんなことはありません。

 

老いを受け入れるということは、老いているなりにどう生きるかということです。

老いと闘うフェーズが終われば、次は老いを受け入れるフェーズがあって、そこでジタバタしないことが、格好よく老いることだと思います。

「老いの品格 品よく、賢く、おもしろく より」

 

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人の体の老化は20代ごろから始まります。

老化は生きている以上避けられないものですが、何をどう食べるかで進行程度が変わってきます。

30代では個人差はさほどありませんが、40歳を過ぎて中年期に入るころからだんだん差が生じ、65歳を過ぎて高年期に入ると、健康状態にはっきりとした差が出ます。

健康寿命をのばす食生活に加えて、年代別の食べ物・食べ方に気をつけると、病気予防がいっそうアップします。

動脈硬化は年齢とともに発症しやすくなり、50代になるとほとんどの人(女性は60代から)に動脈硬化が見られるようになります。

 

認知症の多くは、脳血管障害の積み重ねで起こり、その原因のほとんどが脳梗塞です。

ですから、脳梗塞の前兆である隠れ脳梗塞を早期発見することで多くの認知症を防ぐことができるのです。

 

脳梗塞は、高血圧や糖尿病などの病気が原因となったり、生活習慣などによって血液がドロドロになって血液循環が悪くなったりして、血管が厚く狭くなり、脳の血管が徐々に詰まって進行していきます。

一般的に、脳梗塞の初期には、大きさ数ミリ程度の微小な梗塞が数個出現し、段階をへるごとにこの梗塞が脳のあちこちに見られます。

このような症状のないごく小さな梗塞が隠れ脳梗塞(無症候性脳梗塞)です。

「隠れ脳梗塞(無症候性脳梗塞)は、早い人だと30代からあらわれ、40代を過ぎると急に増加するといわれています。

脳梗塞をはじめとする脳血管障害を生活習慣病の一つととらえ、ふだんから健康に保つ生活を心がけましょう。

ビタミンB12やB6、葉酸の吸収が悪くなると、活性酸素やホモシステインという老化物質が増え、動脈硬化を生じることもわかっています。

 

ビタミンB12について?

https://www.endokoro.com/