大人だけが流せる涙がある
大人になると、「悔し涙」や「悲しみの涙」さえも人前では流せなくなります。
しかし、その代わりに、大人になって流すようになるのが、正真正銘の「情動の涙」です。
映画やドラマを見て流す涙。
オリンピック選手の活躍を見て流す涙がこれにあたります。
いわば、もらい泣き、うれし泣きによって流す涙といってもいいかもしれません。
「情動の涙」は、ストレスや自我というものを通り越し、相手に対する共感によって流す涙です。
「情動の涙」は、前頭前野が発達した大人になってはじめて流せるものであり、幼い子どもには流すことができません。
なぜなら、この涙の根本にあるのは「他者への共感」だからです。
さまざまな人生経験を積むことによって、銀幕やテレビ画面の向こうにいる人間の心境を思いやることができようになるのです。
おもしろいことに、オリンピックの競技で自分が応援している選手が金メダルをとったのを見て涙を流すのは、状況としてはうれし泣きには違いないのですが、よく考えてみると、そこに至るまでのプロセスにはストレスの積み重ねがあります。
たとえば、前回のオリンピックでは悔しい結果になり、今回もドキドキハラハラしながらテレビにかじりついているという状況は、ストレス以外の何ものでもありません。
しかし、その段階で泣いてしまうのは「ストレスの涙」であって、子どもが流す涙になってしまいます。
大人の涙というのは、そうではなくて試合に勝った瞬間といった、何かが成就されたときに、思わずあふれてくるという性質の涙なのです。
そうした涙を出せるのは、前頭前野が発達した人間の大人だけだと断言してよいでしょう。
涙を流している自分自身はとくに苦しかったわけでもなく、自分が置かれた立場が大変だったわけではありません。
しかし、相手の状況や相手の心の持ちようを、あたかも自分のものであるかのように共感するのが、大人だけが流せる情動の涙なのです。
つまり、情動の涙のメカニズムというのは、あくまでも共感がベースにあります。
相手のことばを聞いて感心するという性質のものではありません。
非言語のコミュニケーションによって、「ああ、あの人はものすごく苦労したんだろう」と直感力によって推測し、前頭前野の働きが一挙に高まると、涙のスイッチが入るのです。
「脳科学者が教える「ストレスフリー」な脳の習慣 より」
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寒暖の差、生活の変化が激しい毎日は、私たちの身体にも大きなストレスを与えます。
そんな日々が続くと、自律神経は、その変化に対応しきれなくなって、やがて疲れやめまい、不眠、頭痛といった症状が現れてきます。
とくに人間関係の変化は想像以上に心身への影響が大きい。
気分が落ち込んだり一時的にうつ状態になってしまうこともあります。
とはいえ、そのうちに治ってしまうことが多いので、うつ状態でも必ずしも病気とは言えません。
しかし、落ち込みの程度が重い時や、落ち込みが長引いてしまうと、人の意欲は奪われて行動にも影響を及ぼします。
自律神経を整えるためには生活リズムを作るとともに栄養面も非常に大切です。
私たちの脳の中で司令塔のような役割をしているセロトニン神経という神経細胞が弱ってきており、軽い不調からうつ病、パニック症候群、さまざまな依存症などを引き起こす原因になっています。
この現象は大人から子どもまで老若男女に広がっています。
セロトニン神経は、日を浴びることや意識した呼吸、簡単な運動をすることなど日常生活に少し工夫を加えることによって鍛えることができます。
脳には無数の神経細胞があり、その神経細胞の末端からセロトニンやアセチルコリン、ドーパミンなどの神経伝達物質を放出しています。
イライラしやすいときは、脳の神経伝達物質であるセロトニン、アセチルコリン、ドーパミンなどが不足していることが考えられます。
そのため、これらの材料となるアミノ酸と、アミノ酸を取り込むために必要な糖分やビタミンB12の不足を疑ってみましょう。
また、脳の唯一のエネルギー源であるブドウ糖が足りなかったり、神経伝達物質を放出するときに働くカルシウムが不足したりしているのも原因のひとつと考えられます。
ビタミンB12について?