“孫の肩叩き”が喜ばれる理由
触刺激によってオキシトシンを合成分泌させるには、どういう触り方がいいかということについては、すでに研究が進んでいます。
もちろん冷たくてはダメで、ぬくもりがある心地よい温度が大切であり、せわしなく触ってはいけないといった具合で、セラピストたちも経験上、いろいろなノウハウを身につけています。
残念ながら2020年に亡くなってしまいましたが、以前対談したことがある美容アドバイザーでセラピストでもある佐伯チズさんは、タッチセラピーにあたっては、相手の呼吸をよく見て、呼吸に合わせて触れることを心がけていたとおっしゃっていました。
また、心地よさを演出するために、部屋に自然音を流したり、アロマオイルを焚いたりといったように、トータルとして心地よい状況をつくり出すことに努めていたといいます。
そうすることでオキシトシンが出やすくなり、ストレスが解消されるという流れができていたわけです。
もっとも他人であるセラピストだからこそ、そうした配慮が必要になるのですが、気心が知れた家族なら、もっと気軽に触るだけでもオキシトシンが出てきます。
そこで思い出されるのが、日本に昔から伝わるグルーミングです。
親と子、祖父母と孫がおこなう肩叩きは、まさにグルーミングの1つということができます。
そう考えると、肩叩きで叩く力は決して強くなくていいことがわかります。
おじいさん、おばあさんにとっては、4歳か5歳くらいの孫の弱い力でトントンと叩くくらいがちょうどいいわけです。
そんな肩叩きの効用について、医者や学者はこれまで懐疑的でした。
「肩叩きなどをしても、まったく意味がない。もむわけでもないから血流は増えないし、叩くのではむしろ体によくない」というわけです。
でも、それならなぜ、おじいさんやおばあさんは喜んで、孫に「ありがとう」といってお小遣いをあげるのでしょうか。
あれは単なるお世辞なのでしょうか。
いいえ、そうではありません。
肩叩きというグルーミングによって前頭前野が活性化されて、本当に気持ちよくなっているのです。
そうした事実がオキシトシンで説明できるわけです。
逆に、こんなこともあります。
幼い子どもが興奮してなかなか寝つかないときに、お母さんが背中やお尻をトントンと叩いてやると、不思議なほどにコテンと眠ってしまうのです。
あれもグルーミングの効用といっていいでしょう。
「脳科学者が教える「ストレスフリー」な脳の習慣 より」
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寒暖の差、生活の変化が激しい毎日は、私たちの身体にも大きなストレスを与えます。
そんな日々が続くと、自律神経は、その変化に対応しきれなくなって、やがて疲れやめまい、不眠、頭痛といった症状が現れてきます。
とくに人間関係の変化は想像以上に心身への影響が大きい。
気分が落ち込んだり一時的にうつ状態になってしまうこともあります。
とはいえ、そのうちに治ってしまうことが多いので、うつ状態でも必ずしも病気とは言えません。
しかし、落ち込みの程度が重い時や、落ち込みが長引いてしまうと、人の意欲は奪われて行動にも影響を及ぼします。
自律神経を整えるためには生活リズムを作るとともに栄養面も非常に大切です。
私たちの脳の中で司令塔のような役割をしているセロトニン神経という神経細胞が弱ってきており、軽い不調からうつ病、パニック症候群、さまざまな依存症などを引き起こす原因になっています。
この現象は大人から子どもまで老若男女に広がっています。
セロトニン神経は、日を浴びることや意識した呼吸、簡単な運動をすることなど日常生活に少し工夫を加えることによって鍛えることができます。
脳には無数の神経細胞があり、その神経細胞の末端からセロトニンやアセチルコリン、ドーパミンなどの神経伝達物質を放出しています。
イライラしやすいときは、脳の神経伝達物質であるセロトニン、アセチルコリン、ドーパミンなどが不足していることが考えられます。
そのため、これらの材料となるアミノ酸と、アミノ酸を取り込むために必要な糖分やビタミンB12の不足を疑ってみましょう。
また、脳の唯一のエネルギー源であるブドウ糖が足りなかったり、神経伝達物質を放出するときに働くカルシウムが不足したりしているのも原因のひとつと考えられます。
ビタミンB12について?