65歳以上の5人に1人が認知症と診断される時代に
65歳以上の5人に1人が認知症と診断される時代に
一部の例外を除けば、認知症は老化にともなって起こります。
20世紀になって医学が発達して、寿命が十分に延びるまでは、認知症に似た症状の報告は、ほとんどありませんでした。
なぜなら、認知症になる前に寿命を迎えて、亡くなっていたからです。
認知症は加齢とともに増えてきて、70歳を過ぎると一気に増えます。
年をとると白髪が増えたり、顔にシワが増えたり、老眼で近くが見えづらくなったりしますが、これらは病気ではありません。
いずれも、老化に伴う自然現象です。
同じように、年をとることによって増えてくる認知症も、老化にともなう自然現象で、病気ととらえるのは間違いだという考え方もあります。
一方で、認知症は薬で進行が抑えられるのだから、やはり病気ととらえていいのではないかと考える専門家もいます。
いずれにしても、日本は世界有数の長寿国であり、認知症の患者さんが増えています。
認知症の有病率は高まり、2025年には65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症と診断される時代がやってくると予測されています。
90代の私はもちろん、高齢者なら誰がいつ認知症になってもおかしくはないのです。
私は、いまでも現役医師として、もっぱら高齢の患者さんの認知症予防に専念する日々を送っています。
長年かかりつけ医(健康に関することを何でも相談でき、必要なときには専門の医療機関を紹介する身近にいる医師)をしている患者さんやその家族から、「がんと認知症、先生ならどちらを選びますか?」と聞かれることもあります。
そんなとき、私は「認知症になるくらいなら、喜んでがんを選びますよ」と答えるようにしています。
それは、私の本心なのです。
この私の答えを聞いて、驚く方もいらっしゃいます。
がんになると治療に大きな苦痛をともない、死期も早まると思っているからでしょう。
日本人の2人に1人は、一生のうちに一度はがんと診断される時代です。
がんがやっかいな病気であることは間違いありませんが、すでに治療法があり、早期であれば完治することだって可能になっています。
日本人の全がんの5年相対生存率(がんと診断された人が5年後に生きている確率を、日本人全体が5年後に生きている確率と比べたもの)は60%を超えています(男性62.0%、女性66.9%)。
つまり、がんは「不治の病」ではなく、実際は「治せる病気」なのです。
一方、認知症には、いまだ切り札と呼べるような治療法がありません。
新型コロナウイルスのように、ワクチンがあるわけではありません。
薬物の副作用などによる一時的なものを除くと、いまのところ残念ながら、認知症は「不治の病」なのです。
このまま高齢化が進めば、近い将来、がんと同じように、一生で認知症と診断される人の割合が2人に1人になったとしても、私は驚かないでしょう。
人という動物の本当の寿命は120歳だという説もありますが、仮に120歳まで生きたとしても、その多くが認知症になっている可能性だって、決して小さくないでしょう。
「一生ボケない習慣 より」
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認知症の多くは、脳血管障害の積み重ねで起こり、その原因のほとんどが脳梗塞です。
ですから、脳梗塞の前兆である隠れ脳梗塞を早期発見することで多くの認知症を防ぐことができるのです。
脳梗塞は、高血圧や糖尿病などの病気が原因となったり、生活習慣などによって血液がドロドロになって血液循環が悪くなったりして、血管が厚く狭くなり、脳の血管が徐々に詰まって進行していきます。一般的に、脳梗塞の初期には、大きさ数ミリ程度の微小な梗塞が数個出現し、段階をへるごとにこの梗塞が脳のあちこちに見られます。このような症状のないごく小さな梗塞が隠れ脳梗塞(無症候性脳梗塞)です。
「隠れ脳梗塞(無症候性脳梗塞)は、早い人だと30代からあらわれ、40代を過ぎると急に増加するといわれています。
脳梗塞をはじめとする脳血管障害を生活習慣病の一つととらえ、ふだんから健康に保つ生活を心がけましょう。
近年、動脈硬化の原因として新しく注目されているものに、ホモシステインというものがあります。
ビタミンB12、葉酸、ビタミンB6の吸収が悪くなると、ホモシステインという老化物質が増え、動脈硬化を生じることがわかっています。
また、ビタミンB12や葉酸をはじめとするビタミンB群は、ミネラル、アミノ酸などの栄養素と協力し合っているため一緒にバランスよく摂ることがとても重要なのです。
ビタミンB12について?