いかに認知症を予防するか
認知症の多くは、もの忘れ(記憶障害)から始まります。
認知症と診断されたときには、単なる物忘れとあまり変わりなく、身体は元気でピンピンしていることが少なくありません。
しかし、認知症が進行すると、症状がだんだん悪化し、家族の顔も名前もわからなくなり、できないことが増えて自立した日常生活ができなくなります。
だからこそ、大切なのは、いかに認知症を予防するか。
認知症を発症してからでも、投薬したり、進行を抑える努力をしたりすることで、生活の質(QOL)は維持できます。
とはいえ、認知症を発症しないにこしたことはありません。
がんは、体内に小さな“がんの芽”が発生してから、医師の診断でみつかるくらいの大きさ(7~10mm)に成長するまで、平均すると10年以上かかるといわれています(なかには数年で成長するものもあります)。
それに対して認知症の大半は、65歳前に発症する若年性の認知症を除けば、約20~30年かけて脳がじわじわと変化して発症に至ります。
いまのところ「もの忘れ」といった兆候がなかったとしても、今この瞬間にも、あなたの脳は、認知症へと向かう道を進んでいる可能性があるのです。
脅し文句のように思われたかもしれませんが、そうではありません。
逆にいうなら、認知症の発症を食い止める時間的な余裕は十分あるということでもあります。
認知症になる前なら、日常生活の小さなとり組みと工夫で発症は防げます。
そのために何をすべきか、私自身が日々実践していることとともに、ぜひ参考にしてください。
また、認知症の患者さんを抱えるご家族など、介護者へのアドバイスも出てきます。
身近に認知症の患者さんがいない方々も、ぜひ自分ごととして参考にしてみてください。
「一生ボケない習慣 より」
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物忘れとは、脳は、体の機能全般をコントロールしている司令塔ですが、加齢とともにその働きは衰え物忘れの症状が出てきます。
脳血管の動脈硬化を放っておくと、血液循環が悪くなって脳細胞の動きが低下し、記憶力や思考力などが鈍り物忘れがはじまります。
40歳を越えた頃から「ど忘れや物忘れが激しくなった」「人の名前がなかなか思い出せなくなった」などと物忘れを感じるようになるのは、脳機能低下のあらわれです。
脳の神経細胞は約140億個といわれ、25歳を過ぎると1日に10~20万個ずつ死滅していきます。
死滅した神経細胞は再生されず物忘れもひどくなります。
しかし、死滅した神経細胞は元に戻らなくとも、神経の通り、すなわちネットワークをよくすれば、低下した機能を補い、さらには高めることができ物忘れも改善されます。
物忘れに関する神経伝達物質の中で記憶と学習にかかわっているのはアセチルコリンで、このアセチルコリンはコリンと酵素を原料にしてつくられています。
アセチルコリンの合成にはコリン、ビタミンB1、ビタミンB12などがかかわっています。
同時にこれらの栄養をとることが、アセチルコリンを増やすことにつながるわけです。
通常、コリンはレシチン(フォスファチジルコリン)のかたちで、食材から摂取されます。
レシチンはアセチルコリンの材料になるだけではなく、細胞膜の材料にもなっています。
とくに脳の神経細胞の細胞膜にはたくさん含まれていて、多彩な働きをしています。
血液にのって運ばれる栄養の細胞内へのとり込みや細胞内の老廃物の排出、神経伝達物質の放出や情報ネットワークの形成といった、脳の機能全体に深くかかわっています。
これが、レシチンが「脳の栄養素」と呼ばれるゆえんです。
そのレシチンを多く含んでいる食品の代表が卵黄です。
なお、レシチンをアセチルコリンに合成するには、ビタミンB群が欠かせないため、同時にとることが望ましいのです。
アルツハイマー型認知症の患者の脳脊髄中にはビタミンB12が少ないことが確認されています。
ビタミンB12について?