第3章 運動が難しいなら浴槽入浴で体温を上げる

第3章 運動が難しいなら浴槽入浴で体温を上げる

 

認知症を防ぐために、低体温をどう避けたらいいのでしょうか?

 

体温をつくり出しているのは、主に「筋肉」です。

筋肉は運動やミルキング・アクションだけで活躍しているわけではないのです。

 

じっとしているときでも行われている、生きるために必要な活動を担うためのエネルギー消費を「基礎代謝」といいます。

基礎代謝のうち、筋肉は20%前後を占めています。

その大半は、体温を保つために使われているのです。

 

これを踏まえると、低体温による認知症のリスクを軽減したいなら、筋トレで筋肉を刺激して増やしたほうがいいことがわかります。

 

なかでも目を向けたいのは、「下半身」です。

筋肉の3分の2は下半身に集まっているうえに、筋肉は下半身から衰えやすいからです。

 

とはいっても、筋トレなどの運動を続けるのは、なかなか難しいでしょう。

ならば、せめて心がけてほしいのは、入浴時にシャワーだけで済ませるのではなく、湯船につかる「浴槽入浴」をすることです

 

 

浴槽入浴なら、一時的とはいえ、体温を上げることが期待できます。

また、温熱と水圧のダブル効果で血液循環もよくなり、脳の血流量もアップするでしょう。

 

体温を上げて血液循環を促す浴槽入浴のコツは、湯温42度以上の熱すぎるお湯にがまんして入らないこと。

 

熱めのお湯に入ったほうが体温は上がりそうに思えるかもしれませんが、浴槽入浴してから体温が上がるまでには、5分以上かかります。

ところが、熱いお湯にはそんなに長く入っていられないので、体温が上がる前に入浴を終えてしまうのです。

 

それでは体温を上げるどころか、湯冷めを招きかねません。

 

しかも、熱いお湯は刺激が強すぎるため、緊張時に働く交感神経が優位になりやすく、それによって血管が縮み、血圧が上がる恐れもあります。

 

湯温41度以下のぬるめのお湯なら、ストレスなく長湯できます

5~10分ほど入っているうちに体温が上がり、じわじわと汗をかくはず。

ぬるめのお湯だとリラックスできて副交感神経が優位になりやすく、血管が開き血圧も下がるでしょう。

 

額に汗をかいたら、湯船から出るタイミングです。

 

お風呂に入るときに注意したいのは、「ヒートショック」です。

 

ヒートショックとは、急激な温度差により血圧が大きく変動したショックで健康被害を受けること。

寒い季節には、暖房が効いている部屋と、暖房のない脱衣所・浴室やトイレとの温度差は10度を超えることも珍しくなく、ヒートショックが起こりやすくなります。

 

入浴時、暖かい部屋から寒い脱衣所・浴室に入ると、それだけで交感神経が興奮して血管が収縮し、血圧が一気に上がります。

続いて、浴槽入浴でお湯につかって身体が温まると、副交感神経が優位になって血管が開き、血圧がぐんと下がります。

 

脱衣所・浴室が寒いほど湯温を高めにしやすく、温度差が広がってヒートショックのリスクが高まるのです

 

浴槽を出て寒い洗い場で身体を洗っていると血圧は上がり、暖を求めてまた浴槽に入ると血圧が下がる……。

こんなふうに、入浴のたびに血圧が乱高下していると、血管にはダメージが蓄積します。

 

浴槽から出るとき、急に立ち上がると血圧が急激に下がり、立ちくらみを起こして転倒する恐れもあります。

 

とくに高齢者では、ヒートショックで気を失ったり、血管が詰まって心臓病や脳卒中で倒れたりするケースが少なくありません。

 

 

ヒートショックなどによる、高齢者の浴槽での死亡者数は年間4724人(出典:厚生労働省「人口動態統計」[2020年])、これは交通事故死をはるかに上回っています

 

さらに危険なのは、お酒を飲んで入浴すること。

飲酒後は脱水しやすく、血圧が下がりすぎて意識を失い、酔いも手伝って溺れ死んでしまうリスクが高まるのです。

「飲んだら入るな、入るなら飲むな」です。

 

ひと昔前まで、テレビのバラエティ番組などで温泉を紹介する場面では、露天風呂の湯船に徳利と盃をのせた桶を浮かべて、日本酒を楽しむ演出がされることもありました。

 

あれはあれでオツなものですが、お酒を飲んで入浴することが危険という認識が広がり、そうした演出をテレビで見かけることはなくなっています。

 

ヒートショックを避けるため、自宅の脱衣所・浴室を暖房器具で十分暖めたり、浴槽の蓋をとって蒸気で浴室を暖めたりしましょう。

 

そして、「湯温を41度以下にして10分をこえる長湯をしない」「食後すぐや飲酒後の入浴を避ける」「入浴時には家人に声をかけて知らせておく」といった対策をとるようにしてください。

 

※ポイント ヒートショックに気をつけながら、適温の浴槽入浴で体温を高めましょう

「一生ボケない習慣 より」

 

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人の体の老化は20代ごろから始まります。

老化は生きている以上避けられないものですが、生活習慣・食生活に少し気をつけるだけでも進行程度が変わってきます。

30代では個人差はさほどありませんが、40歳を過ぎて中年期に入るころからだんだん差が生じ、65歳を過ぎて高年期に入ると、健康状態にはっきりとした差が出ます。

健康寿命をのばす食生活に加えて、年代別の食べ物・食べ方に気をつけると、病気予防がいっそうアップします。

 

動脈硬化は年齢とともに発症しやすくなり、50代になるとほとんどの人(女性は60代から)に動脈硬化が見られるようになります。

脳梗塞は、高血圧や糖尿病などの病気が原因となったり、生活習慣などによって血液がドロドロになって血液循環が悪くなったりして、血管が厚く狭くなり、脳の血管が徐々に詰まって進行していきます。

一般的に、脳梗塞の初期には、大きさ数ミリ程度の微小な梗塞が数個出現し、段階をへるごとにこの梗塞が脳のあちこちに見られます。このような症状のないごく小さな梗塞が隠れ脳梗塞(無症候性脳梗塞)です。

「隠れ脳梗塞(無症候性脳梗塞)は、早い人だと30代からあらわれ、40代を過ぎると急に増加するといわれています。

脳梗塞をはじめとする脳血管障害を生活習慣病の一つととらえ、ふだんから健康に保つ生活を心がけましょう。

 

ビタミンB12と葉酸、ビタミンB6の吸収が悪くなると動脈硬化の原因物質 (ホモシステイン活性酸素)が増えるといわれています。

また、ビタミンB12は古くから、神経系の機能回復に効果があることが知られていましたが、最近の研究で、このビタミンB12の不足によって脳細胞の萎縮が進むことがわかってきました。

ビタミンB12は、脳の萎縮を食い止めるために重要な脳細胞のタンパクと核酸(DNA)の生合成を司っています。

新しい核酸、タンパク質が生まれ、それによって細胞も新しく生まれ変わり、「こわれた組織、細胞」と「新生の組織、細胞」が入れ替わります。

その結果若さにもつながると考えられます。

 

ビタミンB12について?

https://www.endokoro.com/