第1章 70歳を過ぎてもハツラツ脳の人がやっていること
「初体験」にポジティブに挑む
食事を兼ねた打ち合わせの席で興味深いシーンに遭遇しました。
都内のあるカジュアルなイタ飯屋さんです。
店は客でほぼ満員ですが、ほとんどが20代から40代の女性です。
「お父さん、別の店にしましょうよ」
と70代後半とおぼしき女性。
「いいじゃないか、教えてもらえば」
と相手の男性。
話の様子、ラフな服装からして近所に住む老夫婦のようです。
どうやら老夫婦はこの店をはじめて訪れたようです。
この店は、スマホで店のQRコードを読み取り、店のホームページにアクセスして飲み物や食べ物をオーダーしなければなりません。
最近、増えているスタイルの店です。
夫婦でイタリアンを楽しもうと入ってはみたものの、この店の慣れないシステムに奥さんのほうは怖気づいて場所を変えようとしているようでした。
しかし、ご主人のほうは譲りません。
「すみません」と店員の女性を呼び、スマホを使ったオーダーの方法を教えてもらい、「ほら、オーダーできた」とうれしそうな表情を浮かべていました。
一部始終を見ていたわけではありませんが、その後、その老夫婦はいくつかのオーダーをスムーズにこなし、食事を楽しんでいるようでした。
奥さんのほうも、店に入ってきたときとは打って変わり、スマホをにらみながら「ティラミス、オーダー完了」などと、はじめての体験を楽しんでいる様子でした。
「教えてくれてありがとう、近所だから、また来ます」
会計をしながら、ご主人は丁寧に対応してくれた店の女性にうれしそうに話していました。
そして、最後にこういったのです。
「いやー、高齢者は新しいことに挑戦しなきゃダメだって、テレビでお医者さんがいっていたんですよ」
出来すぎのような話しですが、これは本当にあった話なのです。
「お医者さん」が私であったかどうかは別にして、「長生きしてください」と思わずエールを送りたくなったものでした。
「ヨボヨボ脳」になる2つの特徴
「新しいことにチャレンジすることは、脳を老けさせないためには極めて重要なことであり、ひいてはそれが認知症予防に役立つ」
マスコミの取材や多くの著書においても、しばしばそう述べています。
1.新しいことを面倒くさがる
2.「いままで通り」を続ける
多くの人は、程度の差こそあれ、歳を重ねるごとにこう考えるようになります。
じつはこれこそ、元気をうしないつつある「ヨボヨボ脳」の兆しなのです。
その対極にあるのが元気な「ハツラツ脳」です。
人の脳は30代、40代に委縮が生じはじめます。
とくに前頭葉の萎縮が問題です。
前頭葉は、新しい記憶に深く関わっていて、新しい情報の記憶、習得をおろそかにしていると、委縮は進むと考えられています。
30代、40代においては、その前頭葉の萎縮が、老化現象として問題視されるような思考や行動の大きな変化を生じさせることは稀です。
しかし、確実に委縮ははじまっているのです。
それを回避したり、遅らせたりする方法ですが、それはシンプルにいえば「脳を悩ますこと」です。
もうおわかりかと思いますが、「脳を悩ます」ために欠かせないのが「新しいこと」に、興味、関心を抱くこと。
そしてその興味、関心を一過性のもので終わらせるのではなく、行動に移すことなのです。
その意味でいえば、ここで紹介した老夫婦の小さなチャレンジは「脳を悩ます」ための有効な行動の第一歩であり、ハツラツ脳を維持する行動といえるでしょう。
とても意味のある「初体験」なのです。
「いつまでもハツラツ脳の人 より」
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物忘れに関する神経伝達物質の中で記憶と学習にかかわっているのはアセチルコリンで、このアセチルコリンはコリンと酵素を原料にしてつくられています。
ビタミンB12は、アセチルコリンを活性化して神経伝達をスムーズに行う働きをもっています。
また、アルツハイマー型認知症の患者の脳脊髄中にはビタミンB12が少ないことが確認されています。
アルツハイマーの脳ではアセチルコリンが減少していることから、アセチルコリン不足がアルツハイマーのひとつの原因とも考えられています。
アセチルコリンの合成にはコリン、ビタミンB1、ビタミンB12などがかかわっています。
同時にこれらの栄養をとることが、アセチルコリンを増やすことにつながるわけです。
通常、コリンはレシチン(フォスファチジルコリン)のかたちで、食材から摂取されます。
レシチンは、とくに脳の神経細胞の細胞膜にはたくさん含まれていて、多彩な働きをしています。
血液にのって運ばれる栄養の細胞内へのとり込みや細胞内の老廃物の排出、神経伝達物質の放出や情報ネットワークの形成といった、脳の機能全体に深くかかわっています。
「脳の栄養素」と呼ばれるレシチンを多く含んでいる食品の代表は「卵黄」です。
老人の認知症の3割~5割を占めるアルツハイマー病の場合は、脳細胞が萎縮する病気です。
この萎縮を食い止めるためには、脳細胞を生成するためのタンパク合成、核酸(DNA)合成が順調に行われる必要があるのです。
ビタミンB12は、脳細胞のタンパクと核酸(DNA)の生合成を司っています。
新しい核酸、タンパク質が生まれ、それによって細胞も新しく生まれ変わり、「こわれた組織、細胞」と「新生の組織、細胞」が入れ替わります。
その結果若さにもつながると考えられます。
ビタミンB12について?