序章 「脳の領域」とそれぞれの役割分担

序章 「脳の領域」とそれぞれの役割分担

 

人間の脳は、大きく4つの領域に分かれます。

 

さらに左右の半球に分かれ、右半球は体の左半身、左半球は右半身の運動野感覚をコントロールしているのですが、脳の様々な機能はこれらの領域が、次のようにそれぞれ分担して司っています。

 

(1)前頭葉

1.前頭極(前頭葉の最も前の部位)……自発性、意欲、気持ちの切り替えスイッチ

2.運動前野……創造性。意欲、感情のコントロール

(2)側頭葉 側頭連合野……言語理解、形態の認知

(3)頭頂葉 頭頂連合野……計算機能、空間などの認知や構成

(4)後頭葉 視覚領……視覚情報の理解

 

このように様々な機能が各領域に分担されているため、どの領域に問題が起こるかによって影響を受ける機能やその態様も異なってきます。

 

この「問題」には、脳腫瘍・脳梗塞などの病気、けがの他に、「老化」があります。

 

例えば視覚情報を司る後頭葉に問題が起きると、視野狭窄や、何かが見えているがそれが何かわからないといった症状が起きます。

 

計算や空間認識を司る頭頂葉に問題が起きると、パズルや計算がおぼつかなくなったり、簡単に道に迷ったりするようになります。

 

また、同じ失語症でも、前頭葉の問題が原因のときには、「相手の話はわかるけれど自分言いたいことが言葉にならない」という形(運動性失語)で、側頭葉の問題が原因のときには、「自分の言葉は話せるが、相手の話が理解できない」という形(感覚性失語)で現れます。

 

 

前頭葉の老化とは

 

人間の脳は、歳をとると委縮します。

この脳の萎縮こそが脳の老化ということなのですが、とはいっても、スポンジがひからびるように脳全体が一気のしぼんでしまうというわけではありません。

 

脳のなかで最も早く委縮し始める(=老化し始める)のが、前頭葉です。

そしてこの老化(神経細胞の減少の加速)は、なんと40~50代くらいから始まることがわかっています。

 

「年寄り」どころかまだまだ働き盛りの年代から始まってしまうというのは初めて聞く人には相当ショックだと思いますが、では、この前頭葉が老化すると、どんな症状が起こるのでしょうか――。

 

 

前頭葉の主な機能は、1.意欲と感情のコントロール、2.思考のスイッチング、3.クリエイティビティ(創造背)です。

 

それゆえ、前頭葉の老化によって、1.自発性や意欲が減退する、感情が老化する、2.ある感情や考えから別の感情、考えへの切り替えが悪くなる・できなくなる、3.新しい発想や、創造的なことができなくなる、という症状が起こります。

 

 

具体的には例えば、感情のコントロールがきかなくなるために怒りっぽくなり、さらに感情のスイッチングがうまくいかないために、一度怒りだしたらいつまでも怒っている、といったことが起こります。

また、自発性や意欲が減退するため、何かにつけて面倒くさくなったり、体を動かすのが億劫になります。

 

創造性がなくなるので、アイデアも出てこなくなり、考え方も平板になります。

 

 

実際に症状は様々な形で現れてくるのですが、前頭葉の老化を示す萎縮の様子は、MRIなどの画像でははっきりと見てとれるにもかかわらず、本人はなかなかその症状に気づかないという厄介さがあります。

 

前頭葉の機能は、いわば「人間らしさの源泉」ともいえるのですが、使わなくても不自由はしませんし、生きていくことはできます。

この点が、前頭葉の老化を自覚しにくくしているといえるでしょう。

「50代からはじめる老けない人の「脳の習慣」 より」

 

*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+

 

記憶力の減退も、脳の老化を示す典型的な症状ですが、記憶のネットワークを活性化する働きをしているのが、脳の海馬という組織であることはよく知られています。

その海馬には、アセチルコリン系神経が集中しているのです。

脳が老化し、萎縮してしまうアルツハイマーとの関係はとくに深く、アルツハイマーの脳ではアセチルコリンが減少していることから、アセチルコリン不足がアルツハイマーのひとつの原因とも考えられています。

 

アセチルコリンの合成にはコリン、ビタミンB1、ビタミンB12などがかかわっています。

同時にこれらの栄養をとることが、アセチルコリンを増やすことにつながるわけです。

通常、コリンはレシチン(フォスファチジルコリン)のかたちで、食材から摂取されます。

レシチンアセチルコリンの材料になるだけではなく、細胞膜の材料にもなっています。

とくに脳の神経細胞の細胞膜にはたくさん含まれていて、多彩な働きをしています。

血液にのって運ばれる栄養の細胞内へのとり込みや細胞内の老廃物の排出、神経伝達物質の放出や情報ネットワークの形成といった、脳の機能全体に深くかかわっています。

これが、レシチンが「脳の栄養素」と呼ばれるゆえんです。

そのレシチンを多く含んでいる食品の代表が卵黄です。

 

また、老人の認知症の3割~5割を占めるアルツハイマー病の場合は、脳細胞が萎縮する病気です。

この萎縮を食い止めるためには、脳細胞を生成するためのタンパク合成、核酸(DNA)合成が順調に行われる必要があるのです。

ビタミンB12は、脳細胞のタンパクと核酸(DNA)の生合成を司っています。

新しい核酸、タンパク質が生まれ、それによって細胞も新しく生まれ変わり、「こわれた組織、細胞」と「新生の組織、細胞」が入れ替わります。

その結果若さにもつながると考えられます。

 

ビタミンB12について?

https://www.endokoro.com/