第2章 ITスキルがアップすればするほど、脳も活性化
「さっき頼んだこと、どうなった?」と定年近い上司。
「メールしましたよ」と、目の前のデスクに座っている20代部下。
部下は不機嫌そうで、上司はポカーン。
最近は減ったとはいえ、こんなシーンがどこかの会社で繰り広げられていると聞きます。
これは世代間ギャップであり、同時にITギャップです。
仕事のシーンにおいては、実際に会うか会わないかにかぎらず、とくに20代、30代は、電話などでも直接の会話を避けたがる傾向が強いかもしれません。
多くの70代、80代にとっては理解しづらいことかもしれませんが、時代の変化とはこういうものです。
是非を云々するのではなく「そういう時代なのだ」と発想を転換してはいかがでしょうか。
スマホ、パソコンなどのITスキルは、可能なかぎり習得することで、これからの時代を便利に快適に過ごせることは間違いありません。
コロナ禍の外出自粛が厳しく求められていた頃、強く感じたことがあります。
それは「これから数年、認知症を発症する高齢者、ヨボヨボ脳の高齢者が激増する」です。
なぜなら、外出自粛によって、高齢者のコミュニケーション量が激減することが想定されたからです。
認知症、ヨボヨボ脳を防ぐためには、会話による情報の入力、出力が欠かせないことはすでに述べました。
とくに、夫婦二人、ひとり暮らしの高齢者は、近所付き合い、知人との会話の回数が減ることで、脳を悩ます機会も減ります。
別居している子どもや孫も、ときどき電話をかけてくるかもしれませんが、直接訪れて会話することもありません。
しかし、会って話すことができないと嘆いていても、問題は解決しません。
スマホ、パソコンでメールのやりとりができたり、スマホの機能を使って相手の顔を見ながら会話ができたり、SKYPE、ZOOMを駆使できたりしたら、家族、知人と顔を見ながら会話ができます。
また、新聞では得られない、さまざまなニュース、動画、ユーチューブをはじめ、ブログ、フェイスブック、エックスで発信された情報に接することもできます。
スキルをアップさせれば、自分が発信者になることも可能です。
(異性への情熱が旺盛な方なら、上機嫌になれるサイトも見つけられますし……)。
ヒマに飽かせて、さして興味もないテレビのバラエティ番組をただ受動的に見ているだけでは、ヨボヨボ脳化が進むばかりです。
70代、80代が能動的に脳を動かし、ハツラツ脳を維持していくために、ITは強い味方であることを覚えておきましょう。
「いつまでもハツラツ脳の人 より」
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記憶力の減退も、脳の老化を示す典型的な症状ですが、記憶のネットワークを活性化する働きをしているのが、脳の海馬という組織であることはよく知られています。
その海馬には、アセチルコリン系神経が集中しているのです。
脳が老化し、萎縮してしまうアルツハイマーとの関係はとくに深く、アルツハイマーの脳ではアセチルコリンが減少していることから、アセチルコリン不足がアルツハイマーのひとつの原因とも考えられています。
アセチルコリンの合成にはコリン、ビタミンB1、ビタミンB12などがかかわっています。
同時にこれらの栄養をとることが、アセチルコリンを増やすことにつながるわけです。
通常、コリンはレシチン(フォスファチジルコリン)のかたちで、食材から摂取されます。
レシチンはアセチルコリンの材料になるだけではなく、細胞膜の材料にもなっています。
とくに脳の神経細胞の細胞膜にはたくさん含まれていて、多彩な働きをしています。
血液にのって運ばれる栄養の細胞内へのとり込みや細胞内の老廃物の排出、神経伝達物質の放出や情報ネットワークの形成といった、脳の機能全体に深くかかわっています。
これが、レシチンが「脳の栄養素」と呼ばれるゆえんです。
そのレシチンを多く含んでいる食品の代表が卵黄です。
また、脳を酷使するときには、たくさんのビタミンB群が消費されています。
B群は脳の働きに重要な役割を担っているのです。
神経の働きを整えたり、傷んだ神経を補修したり、タンパク質をドーパミンやセロトニンといった神経伝達物質に作り替えるなど、「脳力向上」のためにもB群は欠かすことができないのです。
ビタミンB12について?