必要な情報が頭の中で“行方不明”になっている

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必要な情報が頭の中で
“行方不明”になっている

 

もの忘れ外来にやってくる「スマホ認知症」の患者さんは、ほぼ全員の方が記憶力の低下や、もの忘れの多さを訴えられます。

 

ここで「記憶」と「もの忘れ」について少し整理しておくことにしましょう。

 

そもそも記憶は、3幕の舞台のようなシステム構成になっています。

 

第1幕が「記銘」で、見たことや聞いたこと、経験したことをインプットして覚えるシステム。

第2幕が「保持」で、覚えた情報を仕分けして倉庫内にストックしておくシステム。

第3幕が「検索・取り出し」で、脳内の情報倉庫の中から必要なものを選んで取り出すシステムです。

 

そして、この記憶の3つのプロセスのうち、どこがシステム障害を起こすのかで、もの忘れのタイプが違ってくるのです。

 

たとえば、アルツハイマー認知症のもの忘れ症状は、第1幕の「記銘」のシステム障害によって引き起こされます。

 

よく知られているように、アルツハイマー認知症では、「ごはんを食べた」「だれかに用事を頼まれた」「温泉旅行に行った」といった最近の出来事の記憶がすっぽりと抜け落ちます。

こうしたもの忘れは、記憶中枢の海馬の機能が低下して、新しい出来事を記銘することができなくなっているために発生するのです。

ごはんを食べたことや温泉旅行へ行ったことも、その記憶自体が脳へインプットされていなければ、思い出せるはずがありません。

つまり、アルツハイマーによるもの忘れは、過去にあったことを“忘れている”のではなく、新しい体験を“覚えられなくなっている”ために起こっているというわけです。

 

一方、いわゆる「ど忘れ」や「脳過労」によるもの忘れの場合は、記憶の第3幕の不調によって起こります。

すなわち、「検索・取り出し」のための機能が落ちていて、脳のどこかにしまわれているはずの情報をうまく見つけられないために思い出せなくなるのです。

 

ただし、こちらのタイプのもの忘れは、何かヒントを与えられれば、たいていは“アッ、そうだ。あれだー”と思い出すことができます。

いわば、必要な情報が頭の中で、“行方不明”になっているから思い浮かばないのであり、その情報を探し出して“発見”することさえできれば、問題なく取り出すことができるわけです。

 

なお、よくテレビや雑誌では、アルツハイマー病などで表れる前者のもの忘れが「危険なもの忘れ」、ど忘れや脳過労によって表れる後者のもの忘れが「心配のないもの忘れ」と呼ばれています。

 

ただし、後者のタイプも、あまりに度重なるなら放っておいてはいけません。

脳過労をいつまでも放っていると、てきめんに脳のパフォーマンスが落ち、さまざまな脳の機能を低下させることにつながります。

 

だから、本当は「心配のないもの忘れ」など“ない”と思った方がいいのです。

前者のタイプのもの忘れがあればもちろん赤信号ですが、後者のタイプのもの忘れも頻繁にあるようなら黄信号であり、「ちゃんと心配しなくてはならないもの忘れ」だと考えるべきでしょう。

「その「もの忘れ」はスマホ認知症だった より」

 

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記憶力の減退も、脳の老化を示す典型的な症状ですが、記憶のネットワークを活性化する働きをしているのが、脳の海馬という組織であることはよく知られています。

その海馬には、アセチルコリン系神経が集中しているのです。

 

脳が老化し、萎縮してしまうアルツハイマーとの関係はとくに深く、アルツハイマーの脳ではアセチルコリンが減少していることから、アセチルコリン不足がアルツハイマーのひとつの原因とも考えられています。

 

アセチルコリンの合成にはコリン、ビタミンB1、ビタミンB12などがかかわっています。

同時にこれらの栄養をとることが、アセチルコリンを増やすことにつながるわけです。

通常、コリンはレシチン(フォスファチジルコリン)のかたちで、食材から摂取されます。

 

レシチンアセチルコリンの材料になるだけではなく、細胞膜の材料にもなっています。

とくに脳の神経細胞の細胞膜にはたくさん含まれていて、多彩な働きをしています。

血液にのって運ばれる栄養の細胞内へのとり込みや細胞内の老廃物の排出、神経伝達物質の放出や情報ネットワークの形成といった、脳の機能全体に深くかかわっています。

これが、レシチンが「脳の栄養素」と呼ばれるゆえんです。

そのレシチンを多く含んでいる食品の代表が卵黄です。

 

また、脳を酷使するときには、たくさんのビタミンB群が消費されています。

B群は脳の働きに重要な役割を担っているのです。

糖質を分解するB1が不足すると、脳のエネルギーが不足し、とたんに頭が回らない状態になります。

また、脳の神経伝達物質の合成すべての段階に関わっています。

神経の働きを整えたり、傷んだ神経を補修したり、タンパク質をドーパミンセロトニンといった神経伝達物質に作り替えるなど、「脳力向上」のためにもB群は欠かすことができないのです。

 

ビタミンB12について?

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