第2章 音楽を聴くなら新曲を。映画を観るなら映画館で新作を
昔流行った曲しか聴いたり歌ったりしなくなったのも、
昔観た映画しか興味がなくなったのも、
脳の老化現象のため。
新しい曲、新しい映画に触れることで脳を活性化しよう
若い頃は、好きなアーティストの新譜の発売日を指折り数えて待ち、当日はレコード店の店先に並んででも買いに行っていたような人も、今や、「ベストセレクトアルバム」の類ばかり聴いているのではないでしょうか。
かつては次々と新曲をマスターし、「カラオケクイーン」との異名をとるほどだったのに、今はカラオケに行っても十八番を2、3曲歌ってお茶を濁すだけ。
歌う曲の数が減ることより、同じ曲ばかり歌うことのほうが問題です。
昔は映画館にもよく行ったものだけど、最近はネットフリックスなどで、かつて映画館で観た懐かしの映画ばかり再生してしまう。
――これらはみな、脳の「老化現象」からくる行動です。
こんな習慣をこのまま続けていたら、老化の一途をたどるだけです。
脳の前頭葉は、目にしたことがないもの、耳にしたことがないものに対してよく反応します。
新しいものを観たり聴いたりする行動が脳を活性化させ、若さを保ちます。
音楽を聴くなら新曲、カラオケで歌うなら歌ったことのない曲にも果敢に挑戦、映画を観るなら封切映画館で話題の新作を――。
ぜひそう心がけてください。
変化を楽しむ
「変化」や「問題」を回避するのではなく、
「前頭葉を鍛えるチャンス」と、喜んで対峙すること。
それがさらに前頭葉をフル稼働させ、
素晴らしてアイデアもひらめいてくれるはず
「杓子定規な人はボケやすく、頭が柔らかく臨機応変な人はボケにくい」というのは医学的にも正しいことです。
頭頂葉と側頭葉はルーティンワーク、前頭葉は「想定外」と、脳のそれぞれの領域で分担が決まっていることと関係しています。
頭が柔らかく臨機応変な人というのは、前頭葉が活発に働いて鍛えられるため、老化を防ぐことかできるのですが、このことは、変化に富む刺激的な生活のほうが、前頭葉は鍛えられ、老化を防ぐことができることを意味しています。
それゆえ、自ら「想定外」との出会いを探しに行こうと提唱しているのですが、もっと基本的なことをいうと、望みもしないのに訪れる問題や変化にも、これを避けようとするのではなく、むしろ積極的に対峙して、問題解決に臨む心構えが大切ということです。
つまり、何か変化や問題が起こっても、それを恐れず、また「嫌なこと」と思わずに、「よし、これは前頭葉を鍛えるいいチャンスだ!」と、喜んでその変化や問題に向かっていくということです。
変化を恐れず、むしろ変化を楽しむくらいの気持ちを持つこと。
すると前頭葉は一層喜びフル回転し、意欲的になり、素晴らしい解決策がひらめいてくるはずです。
「50代からはじめる老けない人の「脳の習慣」 より」
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物忘れとは、脳は、体の機能全般をコントロールしている司令塔ですが、加齢とともにその働きは衰え物忘れの症状が出てきます。
脳血管の動脈硬化を放っておくと、血液循環が悪くなって脳細胞の動きが低下し、記憶力や思考力などが鈍り物忘れがはじまります。
40歳を越えた頃から「ど忘れや物忘れが激しくなった」「人の名前がなかなか思い出せなくなった」などと物忘れを感じるようになるのは、脳機能低下のあらわれです。
脳の神経細胞は約140億個といわれ、25歳を過ぎると1日に10~20万個ずつ死滅していきます。
死滅した神経細胞は再生されず物忘れもひどくなります。
しかし、死滅した神経細胞は元に戻らなくとも、神経の通り、すなわちネットワークをよくすれば、低下した機能を補い、さらには高めることができ物忘れも改善されます。
物忘れに関する神経伝達物質の中で記憶と学習にかかわっているのはアセチルコリンで、このアセチルコリンはコリンと酵素を原料にしてつくられています。
アセチルコリンの合成にはコリン、ビタミンB1、ビタミンB12などがかかわっています。
同時にこれらの栄養をとることが、アセチルコリンを増やすことにつながるわけです。
通常、コリンはレシチン(フォスファチジルコリン)のかたちで、食材から摂取されます。
レシチンはアセチルコリンの材料になるだけではなく、細胞膜の材料にもなっています。
とくに脳の神経細胞の細胞膜にはたくさん含まれていて、多彩な働きをしています。
血液にのって運ばれる栄養の細胞内へのとり込みや細胞内の老廃物の排出、神経伝達物質の放出や情報ネットワークの形成といった、脳の機能全体に深くかかわっています。
これが、レシチンが「脳の栄養素」と呼ばれるゆえんです。
そのレシチンを多く含んでいる食品の代表が卵黄です。
なお、レシチンをアセチルコリンに合成するには、ビタミンB群が欠かせないため、同時にとることが望ましいのです。
アルツハイマー型認知症の患者の脳脊髄中にはビタミンB12が少ないことが確認されています。
ビタミンB12について?