第2章 脳の「変化対応力」を鍛える
「想定外」の物や出来事を歓迎する
ワクワクするような出来事でも、
トラブルでもアクシデントでも、
前頭葉が活発になるのは
「想定外」の出来事に出会ったとき。
そんな「想定外」との遭遇チャンスを自ら探しに行こう
「想定外だから仕方がない」――とは政治家や企業トップの「逃げ」の常套句、また多くの人が「想定外」の事態に直面することを厭(いと)います。
ところが前頭葉にとって「想定外」はむしろウエルカム。
こんなときこそ自分の出番と、手ぐすね引いて待っているのです。
単純な作業や数字を操作するだけの仕事、また結果の予測がつくような仕事では、前頭葉はほとんど活動しません。
これらの仕事であれば、言語の記憶や理解を司る側頭葉や数字に関連することを処理する頭頂葉の働きだけで、ほぼ足りてしまいます。
このような仕事に従事していたり、毎日同じ時間に起きて通勤して、帰宅してからは寝転がってテレビを観ているだけ……の生活をしていたりすると前頭葉の出番はなくなり、そのような生活が続くと、前頭葉はもとより脳全体への刺激もなくなり、間違いなく「老化」への道をひた走ることになります。
なじみの店ばかりに行かない
黙っていても自分の好みのものを出してくれる
行きつけの店、
行くだけで心安らぐ隠れ家のような店……
そんな店ばかり足を向けるのは、
老化特有の一種の「引きこもり」状態にあるから
経済的に余裕のない若い頃は、「より安く、かつもう少し美味しく飲み食いできる店」を探すのにやっきになるもの。
しかし、ある程度余裕が出てくると、そこそこの値段で、そこそこの料理やお酒が飲める「安心できる店」を見つけます。
何度か通ううちにいつしかなじみ客となり、店主や店員とも親しくなり、それなりに特別待遇されるようになると、もう「そこしかない」くらいその店ばかりに足が向くようになります。
こういう傾向は、脳の機能からいえば老化特有のある種の「引きこもり」です。
そのようななじみの店を持つことは決して悪いことではありませんが、たまには思い切って新しい店にも寄ってみるべきです。
もしかしたら、高い割にイマイチの料理やお酒にがっかりということもあるかもしれません。
店の雰囲気がどうしてもしっくりこなくて居心地の悪い思いをするかもしれません。
それでも、「失敗してもいい」くらいの気持ちで新規開拓するのです。
引きこもっていた部屋の扉を開き、新しい店の扉を開き、自分を、脳を解放してあげられるのは、自分自身しかいないのです。
「50代からはじめる老けない人の「脳の習慣」 より」
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物忘れとは、脳は、体の機能全般をコントロールしている司令塔ですが、加齢とともにその働きは衰え物忘れの症状が出てきます。
脳血管の動脈硬化を放っておくと、血液循環が悪くなって脳細胞の動きが低下し、記憶力や思考力などが鈍り物忘れがはじまります。
40歳を越えた頃から「ど忘れや物忘れが激しくなった」「人の名前がなかなか思い出せなくなった」などと物忘れを感じるようになるのは、脳機能低下のあらわれです。
脳の神経細胞は約140億個といわれ、25歳を過ぎると1日に10~20万個ずつ死滅していきます。
死滅した神経細胞は再生されず物忘れもひどくなります。
しかし、死滅した神経細胞は元に戻らなくとも、神経の通り、すなわちネットワークをよくすれば、低下した機能を補い、さらには高めることができ物忘れも改善されます。
物忘れに関する神経伝達物質の中で記憶と学習にかかわっているのはアセチルコリンで、このアセチルコリンはコリンと酵素を原料にしてつくられています。
アセチルコリンの合成にはコリン、ビタミンB1、ビタミンB12などがかかわっています。
同時にこれらの栄養をとることが、アセチルコリンを増やすことにつながるわけです。
通常、コリンはレシチン(フォスファチジルコリン)のかたちで、食材から摂取されます。
レシチンはアセチルコリンの材料になるだけではなく、細胞膜の材料にもなっています。
とくに脳の神経細胞の細胞膜にはたくさん含まれていて、多彩な働きをしています。
血液にのって運ばれる栄養の細胞内へのとり込みや細胞内の老廃物の排出、神経伝達物質の放出や情報ネットワークの形成といった、脳の機能全体に深くかかわっています。
これが、レシチンが「脳の栄養素」と呼ばれるゆえんです。
そのレシチンを多く含んでいる食品の代表が卵黄です。
なお、レシチンをアセチルコリンに合成するには、ビタミンB群が欠かせないため、同時にとることが望ましいのです。
アルツハイマー型認知症の患者の脳脊髄中にはビタミンB12が少ないことが確認されています。
ビタミンB12について?