「触れる側」「触れられる側」両方に効果がある
人がペットに対しておこなうグルーミングについて、おもしろい実験があります。
まず、犬を狭いケージに閉じ込めます。
するとストレスが加わりますから、当然ストレスホルモンであるコルチゾールが増えます。
次に、そんなストレスがかかった犬に対して、人間がグルーミングをします。
つまり、丁寧になでてあげるわけです。
すると、犬のコルチゾールが下がると同時に、オキシトシンが増えるという結果になりました。
犬も哺乳類ですから、オキシトシンの働きは人間と同じであることがわかったわけです。
この場合、ストレスがかかったのが犬であり、それをグルーミングで癒してあげるのが人間という役割りでしたが、このとき人間のほうはどうなっているのでしょうか。
同じような実験で、人間の側のオキシトシンとコルチゾールを測定する研究をしたところ、興味深いことに、犬だけでなく人間のほうもオキシトシンが増えてコルチゾールが低下していたのです。
つまり、グルーミングをすることで、触る側と触られる側の両方がストレスを解消していたのです。
ペットと触れ合うことで心を癒すことは、以前からペットセラピーとして知られていますが、これは両方向性を持っていたことが解明されたわけです。
このことについては、佐伯チズさんも、対談でこうおっしゃっていました。
「私はセラピストという立場で、相手の人を癒すためにタッチセラピーをしていますが、実は私自身が癒されているんです。」
まさに両方向性です。
セラピーをしている側もされている側も、両方とも心地よければ、セラピスト側のオキシトシンも増えてストレス解消になっているということです。
ペットとの触れ合いが不安や寂しさを消す
ところで、新型コロナによる「コロナストレス」を受けて、ペットを飼う人が増えたといわれています。
知人からこんな話を聞きました。
その人はバリバリ仕事をしている有能な女性なのですが、仕事がとても忙しいために、小学生の子どもにしばしば寂しい思いをさせてしまうとのこと。
しっかりした子ではあるそうなのですが、学童保育から帰って来ても両親が家にいないので、寂しさや不安をまぎらすためか、しょっちゅう彼女の実家のおばあちゃんに長電話をしていたのだそうです。
そんな彼女の家で、最近になって犬を飼いはじめたという話を聞きました。
すると、驚いたことに、おばあちゃんへの電話がぱったりとなくなってしまったというのです。
犬と触れ合うグルーミング効果によって、オキシトシンがしっかり分泌され、不安が消え去ったのでしょう。
まさに幸せを招くハッピーホルモンです。
もちろん、田舎のおばあちゃんとの電話も間接的なグルーミング行為であり、電話によって不安が消える効果もあったはずです。
しかし、やはり目の前で直接グルーミングができる犬にはかなわなかったのでしょう。
ペットの歴史というのは、人類とともにあるといってよいかもしれません。
ペットがいるだけで、子どもはもちろん、高齢者も普通のサラリーマンも癒されるのですから、その効果はすばらしいものです。
日本では以前からペットを飼うことがブームになっていますが、裏を返せば普段の生活でスキンシップの機会がそれだけ減ったからかもしれません。
ペットはしゃべらないからコミュニケーションができないという人がいますが、そう思うのは言語のコミュニケーションだけを念頭に置いているからです。
ペットとの触れ合うというグルーミングは、前頭前野がつかさどる共感力を使ったコミュニケーションにほかなりません。
「脳科学者が教える「ストレスフリー」な脳の習慣 より」
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心の病との関連で関心を集めているストレスホルモンが「コルチゾール」です。
コルチゾールは、副腎から分泌されると、血液にのって体内を循環しながら、エネルギー源の補充などの重要な役割を果たします。
役割を終えると脳にたどり着いて、脳に吸収されます。
これが、正常なストレス反応の流れです。
ところが、主に「我慢するストレス」状態が長い期間にわたって続き、ストレスが積み重なっていくと、コルチゾールがとめどなく分泌され続けるようになってしまいます。
こうなると、状況が一変します。
コルチゾールが脳にあふれて、その一部をむしばんでいくのです。
まさに、ストレス反応が暴走して、ありふれたストレスが「キラーストレス」と化してしまうのです。
副腎が疲れている人に圧倒的な足りない栄養素は、ビタミンB群になります。
ビタミンB群は、抗ストレスホルモンを合成するときに必要な栄養素です。
そのため、ストレスが多く抗ストレスホルモンを大量に必要とする人などは、体内のビタミンB群が不足しがちになります。
その結果、抗ストレスホルモンが十分につくれなくなり、副腎がますます疲れてしまうのです。
ビタミンB12について?