第1章 動脈、静脈、毛細血管、血管の構造と役割を知る
人間ひとりの血管の長さは、なんと地球2周半
人間の血管のシステムは「閉鎖血管系」と呼ばれ、心臓から送り出された血液が心臓に戻ってくる仕組みになっています。
酸素や栄養を体の隅々に届けるのが「動脈」、老廃物や二酸化炭素を回収してくるのが「静脈」です。
心臓から出る大動脈は最も太く、直径が3センチもあります。
大動脈は枝分かれをしていって細くなり、臓器や組織の中では「毛細血管」となって網の目状に広がっています。
太い大動脈を東名高速道路にたとえるなら、毛細血管は住宅街を走る生活道路といったところです。
成人の血管をすべてつなぎ合わせると、約9万キロになります。
これは地球を2周半する長さに匹敵します。
血液は、人間の体の中で地球2周半も旅しているわけです。
9万キロの血管のうち、95%は毛細血管です。
毛細血管の直径は8~20マイクロメーターですから0.01ミリしかありません。
いわば、極細です。
この極細の血管が切れたり詰まったりしやすい、と聞けば納得でしょう。
たとえば、血液中にあって酸素を運ぶ働きをする赤血球は、直径が7~8マイクロメーターの円盤状をしています。
通常、弾力があって毛細血管の中をすり抜けて移動しますが、血液の塩分濃度が上がると硬直します。
硬くなった赤血球は、細い毛細血管を通り抜けることができずに、血管を詰まらせてしまうのです。
なぜ動脈硬化はあるのに静脈硬化はないのか?
次に動脈の構造を見ていきましょう。
酸素や栄養を運ぶ動脈は、「外膜」「中膜」「内膜」という3層構造をしています。
一番外側の「外膜」は、血管を守るための保護層です。
「中膜」は最も厚い組織で、平滑筋という筋肉でできています。
この平滑筋がポンプのようにしなやかに動くことで、血液を勢いよく先へ先へと送っているのです。
そして、常に血液と接している組織が「内膜」です。
血圧が高くなったり、血液の状態が悪くなって内膜に傷がつくと、動脈硬化が起こります。
静脈も3層構造であることは同じですが、血液を強く送り出す必要がないため、平滑筋が薄くなっています。
また、流れが緩やかなため、逆流を防ぐための弁がついているのも動脈と異なるところです。
では、ここで問題です。
動脈硬化があるのに、静脈硬化がないのは、なぜでしょうか?
体の隅々まで血液を送るために、動脈の内膜には強い力がかかっています。
勢いよく流れてきた血液を厚い平滑筋で絞めつけてさらに押し出すため、かなりの圧力がかかるのです。
ところが、静脈は、臓器や組織の毛細血管から血液を集めて流しているため、動脈に比べると、圧力がかかりません。
そのために血管が傷つくことも少ないのです。
なお、皮膚を通して見える血管は、ほとんどが静脈です。
動脈が外から傷つくと大量出血を起こしやすいため、体の内側を通っていると考えられています。
その例外が、首を通る頸動脈です。
毛細血管の繊細で重要な働きとは?
毛細血管は、動脈や静脈とは違い、内皮と基底膜だけのシンプルな構造をしています。
0.01ミリしかない繊細な組織ですから、当然ですね。
毛細血管には小さな穴が開いていて、そこから「血しょう」が染み出しています。
血しょうとは、赤血球や白血球などの有形成分以外の液体で、血液の60%を占めています。
血しょうには酸素、タンパク質、ビタミン、ホルモンなどの有用な物質が溶け込んでいます。
染み出した血しょうは、「間質液」という液体と混じり合い、細胞の奥へと入り込みます。
こうして、毛細血管から酸素や栄養素が臓器や組織に届けられます。
また、細胞から排出された老廃物は間質液に溶け込み、静脈側の毛細血管に浸透圧の作用で吸い取られます。
このように、毛細血管は人間の生命活動にとって重要な役割を果たしています。
毛細血管がボロボロになってしまったら、各組織に栄養が届かず、不要な老廃物の回収もできなくなってしまうのです。
「血管が強くなる習慣 より」
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人の体の老化は20代ごろから始まります。
老化は生きている以上避けられないものですが、生活習慣・食生活に少し気をつけるだけでも進行程度が変わってきます。
30代では個人差はさほどありませんが、40歳を過ぎて中年期に入るころからだんだん差が生じ、65歳を過ぎて高年期に入ると、健康状態にはっきりとした差が出ます。
健康寿命をのばす食生活に加えて、年代別の食べ物・食べ方に気をつけると、病気予防がいっそうアップします。
動脈硬化は年齢とともに発症しやすくなり、50代になるとほとんどの人(女性は60代から)に動脈硬化が見られるようになります。
脳梗塞は、高血圧や糖尿病などの病気が原因となったり、生活習慣などによって血液がドロドロになって血液循環が悪くなったりして、血管が厚く狭くなり、脳の血管が徐々に詰まって進行していきます。
一般的に、脳梗塞の初期には、大きさ数ミリ程度の微小な梗塞が数個出現し、段階をへるごとにこの梗塞が脳のあちこちに見られます。
このような症状のないごく小さな梗塞が隠れ脳梗塞(無症候性脳梗塞)です。
「隠れ脳梗塞(無症候性脳梗塞)は、早い人だと30代からあらわれ、40代を過ぎると急に増加するといわれています。
脳梗塞をはじめとする脳血管障害を生活習慣病の一つととらえ、ふだんから健康に保つ生活を心がけましょう。
ビタミンB12と葉酸、ビタミンB6の吸収が悪くなると動脈硬化の原因物質 (ホモシステイン・活性酸素)が増えるといわれています。
また、ビタミンB12は古くから、神経系の機能回復に効果があることが知られていましたが、最近の研究で、このビタミンB12の不足によって脳細胞の萎縮が進むことがわかってきました。
ビタミンB12は、脳の萎縮を食い止めるために重要な脳細胞のタンパクと核酸(DNA)の生合成を司っています。
新しい核酸、タンパク質が生まれ、それによって細胞も新しく生まれ変わり、「こわれた組織、細胞」と「新生の組織、細胞」が入れ替わります。
その結果若さにもつながると考えられます。
ビタミンB12について?