「軽度認知障害」の16~41%は回復が見込める

「軽度認知障害」の16~41%は回復が見込める

 

がんが早期なら完治するように、認知症も軽症のうちなら、治せるかもしれないと思う方も少なくないようです。

しかし、それは誤解です。

 

認知症は進行性で不可逆的な(元に戻ることができない)疾患です

超がつくほど軽症でも進行を止めることは難しく、一度認知症と診断されると、残念ながら回復は望めないのです

 

つまり、認知機能が正常な「正常認知機能」の状態には、二度と戻れないのです。

そう考えると悲観的になりがちですが、だからこそ、認知症を発症しないことに、何より注力すべきだと前向きにとらえましょう。

 

 

1990年頃から、認知症の前段階として、「軽度認知障害」(MCI)という概念が重視されるようになりました

 

軽度認知障害というのは、認知症と正常認知機能の中間にあたるものです。

要するに、「老化による生理的なもの忘れが少し進んだ程度」のものだと考えるとわかりやすいでしょう。

もの忘れなどの認知機能の低下は見られるものの、日常生活には大きな支障がなく、自立した生活が送れている状態です。

軽度だからこそ、日常生活にも仕事にもあまり差し支えがないため、見過ごされやすいという問題点があります。

 

軽度認知障害から認知症へ移行する率は、年間およそ10%前後と考えられています

軽度認知障害の人が100人いたら、そのうち毎年10人前後は認知症になっていくということです。

 

ところが、逆に軽度認知障害と診断されたとしても、認知機能を回復させる努力をちゃんと続けていれば、「正常認知機能」に復帰することは可能だということがわかってきました。

これは見逃せない朗報です。

 

 

ひと口に「軽度認知症といっても、その内容はさまざまです。

そして、その中身により、認知症へ移行せず、正常認知機能に復帰できる可能性も変わってきます。

 

軽度認知症(MCI)は、現在では次の4つに分類されています。

 

1.健忘型MCI単一領域障害

2.健忘型MCI多重領域障害

3.非健忘型MCI単一領域障害

4.非健忘型MCI多重領域障害

 

軽度認知障害は、まず1と2の「健忘型」か3と4の「非健忘型」かに分けられます。

 

何度も同じことをいったり尋ねたり、大事な約束をすっぽかしたりするなど、記憶障害が見られるのが、健忘型です。

 

一方、目立った記憶障害はないものの、言語障害や、段どりよく作業がこなせない(実行機能障害)といった他の認知障害が見られるのが、非健忘型です。

 

 

さらに軽度認知障害は、「単一領域障害」「多重領域障害」かに分かれます。

 

障害が1つの領域にとどまっているのが単一領域障害で、2つ以上の領域に広がっているのが多重領域障害です。

 

シンプルにとらえるなら、単一領域障害のほうが脳のダメージを受けている部分が狭くて軽症、多重領域障害は脳のダメージを受けている部分が広範囲に及び、症状が進んでいて重症ということです。

 

当初、軽度認知障害診断された人のうち、これら4つのカテゴリーである程度、正常認知機能へ復帰できた割合には、次のような差があることがわかりました。

 

正常認知機能へ復帰した割合

非健忘型MCI単一領域障害→57.0%

健忘型MCI単一領域障害 →38.7%

健忘型MCI多重領域障害 →25.7%

非健忘型MCI多重領域障害→20.9%

 

このデータからわかるように、健忘型でも非健忘型でも、軽度認知障害は軽症(単一領域障害)のうちから早めに対策を始めたほうが、認知症への移行をより確実に食い止められて、正常認知機能へのカムバックが果たせるのです

 

復帰できる割合がいちばん高いのは、「非健忘型MCI単一領域障害」ですが、軽症だからこそ気づきにくいという側面もあります。

 

認知症=もの忘れ」というイメージが強いのですが、非健忘型MCIは記憶障害が少ないので、本人も周囲も軽度認知障害だと気づきにくいのです。

 

それが単一の領域にとどまっているなら、なおさら気づきにくい。

それだけに放置されやすく、油断していると、軽度認知障害から認知症へと進行してしまう恐れもあるのです。

 

軽度認知障害全体で正常認知機能に回復できる割合を、1年で平均16~41%としているものもあります。

 

「人の顔は覚えているのに名前が出てこない」

「モノを置いた場所がわからなくなることがある」

「バスなどの公共交通機関を乗り継いで1人で外出することが難しい」

「ATMで預貯金を下ろすのに苦労することがある」

といった自覚があるなら、軽度認知障害の疑いがあります。

 

一度、病院の認知症外来(もの忘れ外来)で診察を受けて指導を仰ぐとともに、ここでの内容を参考に予防しましょう。

「一生ボケない習慣 より」

 

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物忘れとは、脳は、体の機能全般をコントロールしている司令塔ですが、加齢とともにその働きは衰え物忘れの症状が出てきます。

脳血管の動脈硬化を放っておくと、血液循環が悪くなって脳細胞の動きが低下し、記憶力や思考力などが鈍り物忘れがはじまります。

40歳を越えた頃から「ど忘れや物忘れが激しくなった」「人の名前がなかなか思い出せなくなった」などと物忘れを感じるようになるのは、脳機能低下のあらわれです。

脳の神経細胞は約140億個といわれ、25歳を過ぎると1日に10~20万個ずつ死滅していきます。

死滅した神経細胞は再生されず物忘れもひどくなります。

しかし、死滅した神経細胞は元に戻らなくとも、神経の通り、すなわちネットワークをよくすれば、低下した機能を補い、さらには高めることができ物忘れも改善されます。

 

物忘れに関する神経伝達物質の中で記憶と学習にかかわっているのはアセチルコリンで、このアセチルコリンはコリンと酵素を原料にしてつくられています。

アセチルコリンの合成にはコリン、ビタミンB1、ビタミンB12などがかかわっています。

同時にこれらの栄養をとることが、アセチルコリンを増やすことにつながるわけです。

通常、コリンはレシチン(フォスファチジルコリン)のかたちで、食材から摂取されます。

レシチンアセチルコリンの材料になるだけではなく、細胞膜の材料にもなっています。

とくに脳の神経細胞の細胞膜にはたくさん含まれていて、多彩な働きをしています。

血液にのって運ばれる栄養の細胞内へのとり込みや細胞内の老廃物の排出、神経伝達物質の放出や情報ネットワークの形成といった、脳の機能全体に深くかかわっています。

これが、レシチンが「脳の栄養素」と呼ばれるゆえんです。

そのレシチンを多く含んでいる食品の代表が卵黄です。

 

なお、レシチンアセチルコリンに合成するには、ビタミンB群が欠かせないため、同時にとることが望ましいのです。

アルツハイマー認知症の患者の脳脊髄中にはビタミンB12が少ないことが確認されています。

 

ビタミンB12について?

https://www.endokoro.com/