実は100種類以上もある認知症
実は100種類以上もある認知症
まずは認知症について、きちんと知っておきましょう。
そもそも認知症とは、脳の機能(認知機能)が持続的に低下して、日常生活に支障をきたす状態を指します。
ですから、実態を踏まえると「認知機能不全症」と呼ぶのが正しいと、思っています。
始めに起こるのは、たいていもの忘れ(記憶障害)です。
数分前、数時間前の出来事を忘れてしまったり、約束事を忘れたり、よく知っている人やモノの名前が出てこなくなったりするのです。
誰でも年をとると、若い頃と比べて記憶力は低下しますし、顔は浮かんでいるのにその人の名前が出てこなかったり、「あれ、いま何をしようとしてたんだっけ?」ということも出てきたりします。
そうした加齢によるもの忘れと、認知症によるもの忘れは、何が違うのか?
それには、次のような違いがあります。
<加齢によるもの忘れ>
・体験したこと
一部を忘れる(例:朝ごはんのメニュー)
・もの忘れの自覚
ある
・探し物に対して
(自分で)努力して見つけようとする
・日常生活への支障
ない
・症状の進行
極めて徐々にしかしない
<認知症によるもの忘れ>
・体験したこと
すべてを忘れている(例:朝ごはんを食べたこと自体)
・もの忘れの自覚
ない
・探し物に対して
誰かが盗ったなど他人のせいにすることがある
・日常生活への支障
ある
・症状の進行
進行する
認知症には、もの忘れ(記憶障害)以外にも、次のような症状(中核症状)があります。
◆日付や曜日がわからなくなる・慣れた道で迷う・家族がわからない(見当識障害)
◆仕事や運転のミスが増える・預貯金が下せない(理解力・判断力の障害)
◆調理の味付けを間違える・服の着方がわからなくなる(実行機能障害)
◆言葉が出てこない・目的に沿った行動が困難(失語・失認・失行)
認知症が進むと、「徘徊、暴言、暴力、幻覚、妄想、抑うつ、意欲の低下、不眠」といった行動・心理症状(BPSD)をともなうこともあります。
これらは、本人がもともと持っている気質や環境、人間関係などの要因に絡みあって生じます。
また、認知症といっても、実は100種類以上あります。
なかでも多いのは、次の4つです。
◎脳血管性認知症……19.5%
◎レビー小体型認知症……4.3%
◎前頭側頭型認知症……1.0%
(その他の認知症……7.6%)
脳内に「アミロイドβ」(異常たんぱく質)がたまることが原因になると考えられています。
主な症状は、「記憶力の低下」です。
「脳血管性認知症」は、脳を養うために張り巡らされている血管に起こる病変から生じます。
主な症状は、「麻痺とまだら認知症」(症状の現れ方に波があり、認知機能の障害が“まだら”に生じる)です。
「レビー小体型認知症」は、レビー小体というたんぱく質のかたまりが、脳内に沈着して起こります。
主な症状は、「妄想や手の震え」です。
女性よりも男性に多く見られます。
「前頭側頭型認知症」は、大脳の前頭葉や側頭葉を中心に変性が起こります。
主な症状は、「人格の変化、行動障害、失語症、運動障害」などです。
人生100年時代となったいまは、誰しも“長生きリスク”を抱えています。
その1つは老後の経済的なリスクですが、それに負けず劣らず深刻なのが認知症のリスクです。
その意味では、老若男女問わず、誰もが将来の認知症に備えるべきですが、がんを恐れる人は多いのに、認知症を自分ごととして恐れる人は少ないです。
1人でも多くの人が認知症への理解を深め、その予防の重要性を自分ごととして理解し、実践してくださるとしたら、嬉しい限りです。
「一生ボケない習慣 より」
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物忘れとは、脳は、体の機能全般をコントロールしている司令塔ですが、加齢とともにその働きは衰え物忘れの症状が出てきます。
脳血管の動脈硬化を放っておくと、血液循環が悪くなって脳細胞の動きが低下し、記憶力や思考力などが鈍り物忘れがはじまります。
40歳を越えた頃から「ど忘れや物忘れが激しくなった」「人の名前がなかなか思い出せなくなった」などと物忘れを感じるようになるのは、脳機能低下のあらわれです。
脳の神経細胞は約140億個といわれ、25歳を過ぎると1日に10~20万個ずつ死滅していきます。
死滅した神経細胞は再生されず物忘れもひどくなります。
しかし、死滅した神経細胞は元に戻らなくとも、神経の通り、すなわちネットワークをよくすれば、低下した機能を補い、さらには高めることができ物忘れも改善されます。
物忘れに関する神経伝達物質の中で記憶と学習にかかわっているのはアセチルコリンで、このアセチルコリンはコリンと酵素を原料にしてつくられています。
アセチルコリンの合成にはコリン、ビタミンB1、ビタミンB12などがかかわっています。
同時にこれらの栄養をとることが、アセチルコリンを増やすことにつながるわけです。
通常、コリンはレシチン(フォスファチジルコリン)のかたちで、食材から摂取されます。
レシチンはアセチルコリンの材料になるだけではなく、細胞膜の材料にもなっています。
とくに脳の神経細胞の細胞膜にはたくさん含まれていて、多彩な働きをしています。
血液にのって運ばれる栄養の細胞内へのとり込みや細胞内の老廃物の排出、神経伝達物質の放出や情報ネットワークの形成といった、脳の機能全体に深くかかわっています。
これが、レシチンが「脳の栄養素」と呼ばれるゆえんです。
そのレシチンを多く含んでいる食品の代表が卵黄です。
なお、レシチンをアセチルコリンに合成するには、ビタミンB群が欠かせないため、同時にとることが望ましいのです。
アルツハイマー型認知症の患者の脳脊髄中にはビタミンB12が少ないことが確認されています。
ビタミンB12について?