第4章 数値は正常なのに病気になってしまうのは、なぜ?
知人のお父さんは頑固な性格も手伝って、頑なに医師のアドバイスを守っていました。
塩分の量に過敏と思えるほど反応し、奥さんが時間をかけて作った煮魚のたれを洗って食べていたそうです。
奥さんの悲しげな表情が目に浮かびますが、それはさておき、そのような暮らしを続けていた結果、血圧はずっと抑えられていたのですが、ある時気分が悪くなり、ひどい頭痛で入院してしまいました。
検査をしてみても頭痛の原因は明らかにならなかったのですが、ひとつ判明したことがありました。
それは「低ナトリウム血症」。
医師の話では塩分の摂取不足が頭痛の原因であったかもしれない、ということでした。
お父さんは、病院の味噌汁が「おいしい」と喜んでいたそうですが、しっかりと塩味のある料理は久しぶりだったのでしょう。
たしかに「低ナトリウム血症」になってしまうほどの塩分をとらないのは極端なケースですが、これと似たような日常が病院の診察室では毎日のように見られます。
好きなもの、美味しいものを我慢していたらストレスをため込むだけです。
それで血圧やコレステロールは正常になったとして、それが楽しい暮らしになるのでしょうか?
そもそも、血圧、血糖値、コレステロールなどに注意を払う大半の理由は脳梗塞や心筋梗塞といった血管障害を予防するためです。
その最大の原因は動脈硬化ですが、血管は年をとればみんな硬くなります。
それにもかかわらず、「食の楽しみ」を奪ってまで食事指導が必要でしょうか?
ハツラツ脳の栄養になるものは、うまいもの
代表作『五重塔』で知られる作家・幸田露伴は夏目漱石、森鴎外と並び称される明治時代の文豪ですが、食通としても有名でした。
味の好みにうるさく、舌に合わないものを供されると「オレは、はきだめではない」と激怒したエピソードも伝わっています。
なんとも剣呑な老人のイメージですが、その露伴が次のように話したと伝わっています。
「食べ物というのは、うまいと思って食べれば栄養になる。まずいと思って食べれば決して滋養にはならない」
医者のアドバイスをときには無視して好物を腹いっぱい食べれば、栄養をもらった脳は必ず喜びます。
現在、がんで亡くなる人は日本国内で40万人近く。
一方、脳梗塞による死者数は約12万人。
圧倒的にがんで亡くなる人が多いのです。
がんの発症にはさまざまな説がありますが、毎日、体内に発生するがん細胞を撃退するうえで、免疫の力は欠かせません。
血圧やコレステロール値が下がっても、好きな物を我慢する生活を続けていたら、免疫力は間違いなく低下します。
検査の値は正常。
しかし、生気のない表情をしていてがんになってしまった……。
そんな悲惨な例が決して少なくないのです。
「いつまでもハツラツ脳の人 より」
*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*
血管は「酸化」していくことで傷ついていきます。
たとえば、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が動脈硬化の原因になるということを聞いたことがあるかもしれません。
LDLコレステロール(以下LDL)が血管にへばりついて、プラークと呼ばれるこぶを血管の壁に形成していくのです。
でも、LDLには2種類あることをごぞんじですか?
それは、酸化したLDLと酸化していないLDLです。
LDLの中でも血管に悪さをしていたのは、実は酸化LDLだったのです。
ということは、血管を酸化から守るシステムがしっかりできていれば、酸化LDLは血管に付着しづらくなる。
それが血管老化を防ぎ、血管強化につながるということです。
この、血管の酸化を抑えてくれるのが、実はビタミンなのです。
ビタミンの中でも特に大事なビタミンが、ビタミンCとビタミンEです。
ビタミンCとビタミンEの抗酸化力は、非常に強力です。
心筋梗塞を起こした患者さんのグループが正常のグループよりも血中のビタミンC、ビタミンEの濃度が低かったとする報告もあります。
この2つのビタミンに、ビタミンAを加えた3つのビタミンは、いずれも抗酸化力が強く、ビタミンACE(エース)と呼ばれています。
そしてもうひとつ忘れてはいけない大事なビタミンがあります。
それはビタミンBです。
ビタミンBにはいくつかの種類があり、ビタミンBグループとして存在しています。
ビタミンBの抗酸化力は強くありませんが、細胞のエネルギー産生やエネルギー代謝を効率よくするためにはなくてはならないビタミンです。
ビタミンB12やB6、葉酸の吸収が悪くなると、ホモシステインという老化物質が増え、動脈硬化を生じることがわかっています。
また、ビタミンBは8種類すべてが互いに協力しあって体のエネルギーを生み出す働きに関わっているため、一緒にバランスよく摂ることがとても重要なのです。
ビタミンB12について?