第2章 健康診断の結果よりも長生きのために大切なこと

第2章 健康診断の結果よりも長生きのために大切なこと

 

病気があっても、それを抱えたまま幸せに生きる。

「病気とともに生きる」について、具体的に考えてみましょう。

 

まず、「認知症とともに生きる」です。

高齢者専門の医師が、認知症の患者さんの治療やケアでいちばん大事にしているのは、いまできることを、なるべく長く続けてもらうことです。

 

たとえば、料理ができる、運転ができるというのなら、それを可能なかぎり続けましょう。

いまできること、つまり残存機能をいかに維持するかが重要なのです。

 

認知症になると、できないことが少しずつ増えていきます。

そして残念ながら、できなくなったことがふたたびできるようになる確率は、きわめて低いのも事実です。

 

それよりも、「いま、まだできることは何なのか」に目を向け、それを大事にするほうが、はるかに意味があります。

 

残存機能を活かして、どう生きるかを考えてみてください。

とくに、認知症の初期の段階では、物忘れなどの生じる程度ですから、できることはかなりあります。

 

認知症になると、直近のことに関する短期記憶は失われやすいのですが、昔の経験などについての長期記憶は残るので、過去の経験を題材にした講演会などを行ったり本にまとめたりすることも可能です。

 

次に、「がんとともに生きる」です。

高齢者の場合、がんを取り除く手術をすると、手術そのものの負担で体力が大幅に落ちます。

胃がんなどの消化器系のがんであれば、切除することで栄養の摂取に障害が生じるため、手術がうまくいったとしても、そのあとはげっそりとなることがほとんどです。

 

高齢期のがんは「あったらあったでしょうがない」と思い、排除するより共存して生きることを考えたほうが、その後のQOL(生活の質)は高くなる、と確信しています。

長生きできるかという観点でも、高齢者のがんは一般的に若い世代のがんよりも進行が遅いので、がんになったままでも結果的にかなり長生きするケースはめずらしくありません。

 

そして、「生活習慣病とともに生きる」です。

血圧や高血糖コレステロール値を下げるために薬を服用したり、食生活を制限したりしている高齢者はたくさんいます。

 

何のために、血圧、あるいは血糖値やコレステロール値を下げることが推奨されているかといえば、多くは動脈硬化を予防するためです。

 

しかし、どんなに生活習慣に気をつけていたとしても、高齢になれば、ほぼ誰にでも動脈硬化が起こります。

そして、すでに動脈硬化が起こって血管の壁が厚くなったあとでは、むしろ血圧や血糖値はやや高めにしておかないと、酸素やブドウ糖が脳に行き渡りにくくなります。

 

高齢になったら、「高血圧や高血糖と共存する」と考えたほうが、よほど合理的です。

 

高齢になったら、健康診断の結果よりも、転倒しないことや、食事をしっかり摂ることのほうが、長生きをするうえでとても意味が大きいのです

 

「病気とともに生きる」が当たり前という発想になれば、老いを受け入れることも上手になります。

そもそも高齢者には、予期不安のようなもので本当の自分を押し殺している人が多いと感じます。

 

歳をとってすっかりしおれた印象の人、輝きがない人の多くはそうだと思います。

それはとてももったいないことだと感じます。

「老いの品格 品よく、賢く、おもしろく より」

 

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血管は「酸化」していくことで傷ついていきます。

たとえば、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が動脈硬化の原因になるということを聞いたことがあるかもしれません。

LDLコレステロール(以下LDL)が血管にへばりついて、プラークと呼ばれるこぶを血管の壁に形成していくのです。

 

でも、LDLには2種類あることをごぞんじですか?

それは、酸化したLDLと酸化していないLDLです。

LDLの中でも血管に悪さをしていたのは、実は酸化LDLだったのです。

ということは、血管を酸化から守るシステムがしっかりできていれば、酸化LDLは血管に付着しづらくなる。

それが血管老化を防ぎ、血管強化につながるということです。

 

この、血管の酸化を抑えてくれるのが、実はビタミンなのです。

ビタミンの中でも特に大事なビタミンが、ビタミンCとビタミンEです。

ビタミンCとビタミンEの抗酸化力は、非常に強力です。

心筋梗塞を起こした患者さんのグループが正常のグループよりも血中のビタミンC、ビタミンEの濃度が低かったとする報告もあります。

この2つのビタミンに、ビタミンAを加えた3つのビタミンは、いずれも抗酸化力が強く、ビタミンACE(エース)と呼ばれています。

そしてもうひとつ忘れてはいけない大事なビタミンがあります。

 

それはビタミンBです。

ビタミンBにはいくつかの種類があり、ビタミンBグループとして存在しています。

ビタミンBの抗酸化力は強くありませんが、細胞のエネルギー産生やエネルギー代謝を効率よくするためにはなくてはならないビタミンです。

体内で起こっている「酸化」の抑制にも間接的に関わっています。

B群は体中の細胞の正常な代謝活動を助ける「補酵素」として、欠かせない存在なのです。

ビタミンB12やB6、葉酸の吸収が悪くなると、ホモシステインという老化物質が増え、動脈硬化を生じることがわかっています。

また、ビタミンBは8種類すべてが互いに協力しあって体のエネルギーを生み出す働きに関わっているため、一緒にバランスよく摂ることがとても重要なのです。

 

ビタミンB12について?

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