疲労の正体は脳にあり
疲労は体ではなく、脳で起こっている
初めに、明確にしておきたいのは、「疲れているのは、体よりも脳である」ということです。
「一般に運動や労力などの身体作業(運動)負荷あるいはデスクワークなどの精神作業負荷を連続して与えられたときにみられる、身体的あるいは精神的パフォーマンス(作業効率)の低下現象」
具体的には、行動量や思考力、刺激に対する反応が低下する、注意力が衰えて散漫になる、動作が緩慢になる、気分がめいる、視野が狭くなる、体のどこかが痛くなるといった変化です。
これらの症状には、誰しも思い当たるところがあるでしょう。
しかし、疲労というと、体で起こっている現象のようにイメージしていませんか。
たとえば、運動を過剰にすると筋肉痛が起こるため、筋肉そのものがダメージを受け、体が疲れたのだと思いがちです。
しかしながら、研究では、そのような身体的に疲れたと感じるダメージの根本は、実は脳で起こっているということがわかっています。
結論から言うと、「自律神経を酷使しているから疲れる」のです。
自律神経という言葉はよく耳にされると思いますが、呼吸、消化吸収、血液循環、心拍数、発汗、瞳孔の開閉などや、内臓と器官、血管、分泌腺といった、生きるためのベースとなる機能を整えている神経システムのことです。
「交感神経」と「副交感神経」の2種類からなります。
これらの神経のおのおのの働きを理解しておくと、体の仕組みがよくみえてきます。
交感神経とは、おもに起床時から日中の心身が活動的なとき、運動時や仕事中、緊張や興奮、集中時、また、怒っているとき、危険や恐怖を感じたとき、ストレスがあるときなどに働きます。
「闘争神経」と呼ばれることもあり、自然界で獲物を捕食するときや敵から身を守る状態に呼応する神経と言えるわけです。
闘争や仕事など緊張する状況が生じると、交感神経が優位になることで全身のあらゆる器官ですばやく変化が生じます。
心拍数、血圧、体温が高まり、血管は収縮し、発汗する、瞳孔が散大する、唾液や涙の分泌が減る、ぼうこうや肛門括約筋が収縮する、胃液・腸液の分泌が減って消化吸収にブレーキがかかる、などです。
一方の副交感神経は、交感神経と相反しておもに夕方から夜間にかけて体を休める働きがあります。
リラックスしているとき、平穏な気分のとき、寝入る前、寝ているとき、楽しいとき、また、食事中、排便時や排尿時に作用します。
心拍数、血圧、体温を下げ、血管は拡張、発汗を抑える、瞳孔を閉じる、唾液や涙の分泌を促す、膀胱や肛門括約筋をゆるめる、胃液・腸液の分泌を促すなどして消化吸収をアップさせます。
このように交感神経と副交感神経はコンビを組んで、内臓や血管、分泌腺にそれぞれ反対に作用します。
そうすることでヒトの生存に関わる機能を一定範囲に保って、体内の環境を良好にキープしようとしているのです。
これを「ホメオスタシス(恒常性)」と言います。
ヒトの体は、起きている間はもちろん、眠っている間でも24時間、ホメオスタシスを維持しようとします。
たとえば、運動時や入浴時には体温は上がりますが、上がりすぎないように自律神経が皮膚の血管を拡張して血流を促し、発汗の打ち水効果で気化熱を奪って体温を下げようとします。
これは自分の意思で行われるのではなく、自律神経が自動的に、体に危険が及ばないように調整しているわけです。
「汗よ流れろ」とか、「体温よもっと下がれ」と念じても、そんなふうにはなりません。
こうした自律神経による調整は、24時間365日、ミリセカンド単位で行なわれ、ヒトが生まれてから死ぬまでノンストップで働き続けます。
「すべての疲労は脳が原因2 より」
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脳の機能にとって神経伝達物質がきわめて重要な存在です。
記憶力の減退も、脳の老化を示す典型的な症状ですが、記憶のネットワークを活性化する働きをしているのが、脳の海馬という組織であることはよく知られています。
その海馬には、アセチルコリン系神経が集中しているのです。
アセチルコリンの合成にはコリン、ビタミンB1、ビタミンB12などがかかわっています。
同時にこれらの栄養をとることが、アセチルコリンを増やすことにつながるわけです。
通常、コリンはレシチン(フォスファチジルコリン)のかたちで、食材から摂取されます。
とくに脳の神経細胞の細胞膜にはたくさん含まれていて、多彩な働きをしています。
血液にのって運ばれる栄養の細胞内へのとり込みや細胞内の老廃物の排出、神経伝達物質の放出や情報ネットワークの形成といった、脳の機能全体に深くかかわっています。
これが、レシチンが「脳の栄養素」と呼ばれるゆえんです。
そのレシチンを多く含んでいる食品の代表が卵黄です。
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