身体と脳の寿命はアンバランス――なぜ身体の寿命に脳は追いつけないのか
脳の健康のために、何かやっていますか?
肝臓の数値を気にしてお酒を控えたり、運動不足の解消のためにジョギングをしている人は多いでしょう。
一方、脳は身体の中で最も大切な臓器で、毎日酷使しているのに、その健康状態を意識している人は少ないはずです。
脳の働きには、γ-GTPや血糖値のようなわかりやすい目安がありません。
だから自分の脳の状態がわからないし、何をすればいいのかもわからない。
それが普通です。
しかし、できることはあります。
「気付いたときは認知症」とならないためにも、脳の健康に役立つ方法を知って、今すぐ取り掛かるべきです。
■日本人の平均寿命が延びた理由
脳が健康でなくなると、どんなことが起こるのでしょうか。
脳の話の前に、身体の寿命を見てみましょう。
厚生労働省によると、2019年の日本人の平均寿命は、男性が81.41歳、女性が87.45歳。
どちらも過去最高を更新しました。
寿命が延び続けたのは、医療の進歩と健康意識の向上が理由です。
最も大きいのは、感染症の克服です。
感染症を、人類は次々に克服してきました。
2020年初頭から猛威を振るう新型コロナウイルスも、やがてワクチンと治療薬が開発され、抑え込むことができるに違いありません。
第二に、血管が関係する病気の治療が進んだことです。
血管は全身を巡っていますから、あらゆる臓器の病気に関係します。
中でも、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)、高血圧、動脈硬化などの生活習慣病に直結しています。
近年、これらの病気の軽症段階での治療が進んだこと、生活習慣病に対する意識が改善されて予防が進んだことも、寿命が延びた要因です。
三番目は、がんの治療が進んだことです。
早期発見が可能になり、手術や抗がん剤や放射線による治療も進歩したため、治療の目安となる5年生存率は大きく延びました。
昔と違い、死の宣告に等しい病気ではなくなったのです。
このように各種の病気が克服され、公衆衛生学の知識が普及したおかげで、平均寿命は延びてきました。
人生で日常生活に制限なく暮らせる期間を「健康寿命」と呼びますが、身体の健康については機能を長く維持できるようになってきたのです。
■脳の仕組みや働きはあまりにも複雑
では、脳の寿命はどうか?
身体に比べると、伸びているとは言えません。
むしろ、身体の寿命が延びたのに、脳の寿命はそれに追いついていないと言えるでしょう。
そのアンバランスが大きな不都合になっています。
脳出血や脳梗塞といった血管に由来する病気は、身体と同じように早期発見や早期治療が可能になってきました。
しかし、脳の健康寿命の限界は、認知症の増加という形で現れています。
2012年における国内の認知症患者数は約460万人で、高齢者(65歳以上)人口の15%でした。
厚労省は、2025年には高齢者の20%にあたる730万人が認知症になると推計しています。
不治とされた数々の難病を克服し、身体の寿命を延ばしてきた医学ですが、脳の健康寿命を延ばすには至っていません。
その最大の原因は、脳の仕組みや働きがまだ十分には分かっていない点にあります。
科学において何かを解明するというのは、そのための方法論を解明することと同じです。
宇宙の果てがどうなっているか確かめられないのは、現在の科学技術の方法論では実際に見に行くことができないからです。
人間の脳は手に取れる場所にあるのに解明する方法にたどり着けないのは、その仕組みや働きがあまりにも複雑だからです。
「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法 より」
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記憶力の減退も、脳の老化を示す典型的な症状ですが、記憶のネットワークを活性化する働きをしているのが、脳の海馬という組織であることはよく知られています。
その海馬には、アセチルコリン系神経が集中しているのです。
脳が老化し、萎縮してしまうアルツハイマーとの関係はとくに深く、アルツハイマーの脳ではアセチルコリンが減少していることから、アセチルコリン不足がアルツハイマーのひとつの原因とも考えられています。
アセチルコリンの合成にはコリン、ビタミンB1、ビタミンB12などがかかわっています。
同時にこれらの栄養をとることが、アセチルコリンを増やすことにつながるわけです。
通常、コリンはレシチン(フォスファチジルコリン)のかたちで、食材から摂取されます。
レシチンはアセチルコリンの材料になるだけではなく、細胞膜の材料にもなっています。
とくに脳の神経細胞の細胞膜にはたくさん含まれていて、多彩な働きをしています。
血液にのって運ばれる栄養の細胞内へのとり込みや細胞内の老廃物の排出、神経伝達物質の放出や情報ネットワークの形成といった、脳の機能全体に深くかかわっています。
これが、レシチンが「脳の栄養素」と呼ばれるゆえんです。
そのレシチンを多く含んでいる食品の代表が卵黄です。
また、脳を酷使するときには、たくさんのビタミンB群が消費されています。
B群は脳の働きに重要な役割を担っているのです。
糖質を分解するB1が不足すると、脳のエネルギーが不足し、とたんに頭が回らない状態になります。
また、脳の神経伝達物質の合成すべての段階に関わっています。
神経の働きを整えたり、傷んだ神経を補修したり、タンパク質をドーパミンやセロトニンといった神経伝達物質に作り替えるなど、「脳力向上」のためにもB群は欠かすことができないのです。
ビタミンB12について?
https://www.endokoro.com/libra/vitamin01.html
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