第2章 歳をとっても苦労は買ってでもすべき

第2章 歳をとっても苦労は買ってでもすべき

 

多くの人は、記憶力が低下することで初めて「ああ、私もいよいよ老化が始まったか」と思うのですが、ここがまず、勘違いの始まりです。

 

記憶力、つまり記憶のインプットとその蓄積に関係するのは、脳の側頭葉ですが、この側頭葉は、前頭葉と比較すると老化が始まるのが遅いという特徴があります。

 

記憶力が低下し始めるとっくの前に前頭葉の老化が始まっているというわけです。

 

また、「若い頃は視野が狭くても、歳をとって経験を積むほど多彩なものの見方ができるようになる」と一般的に考えられがちですが、これも大いなる勘違いです。

 

歳をとり始め、「まだ側頭葉は健在だが、前頭葉は老化している」ときにとくに目立つのが「以前はこうだったのだから、とりあえず、同じようにしておけば問題はない」という、いわゆる「前例踏襲型思考」です。

 

これは前頭葉の「未来型思考」ができなくなってしまっているゆえに陥る思考法ですが、このように歳をとると、「多彩なものの見方」どころか、過去の事例からしかものごとを考えられない、創造性も多様性もない考え方をしてしまいがちなのです。

 

 

さらに、歳をとると、仕事上のミス、失敗もあまりしなくなるものですが、それを「亀の甲より年の劫、流れの先が読めるようになったからだ」と思うのも勘違いの可能性があります。

単に失敗することをしなくなっただけにすぎない、ということもあるのです。

 

そして何より、こうした「勘違い」を起こしてしまうのも、ひとえに前頭葉が老化しているからにほかなりません。

 

脳が老化してくると、「自分に心地よい」ことを好むようになります。

それゆえ、自分の都合のよいようにものごとを解釈し、そして「自ら無理や苦労することを避ける、しなくなる」からです。

 

しかし、――人生100年時代、40代、50代といってもある意味「まだまだ」なのです。

こんなところで老け込んでいるわけにはいきません。

いくつになっても、失敗を恐れず、どんな困難にも立ち向かっていくことです。

 

「若い頃の苦労は買ってでもするもの」といいますが、むしろ脳の老化防止のためにも、「歳をとってからの苦労は買ってでもするもの」なのです。

「50代からはじめる老けない人の「脳の習慣」 より」

 

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記憶力の減退も、脳の老化を示す典型的な症状ですが、記憶のネットワークを活性化する働きをしているのが、脳の海馬という組織であることはよく知られています。

その海馬には、アセチルコリン系神経が集中しているのです。

 

脳が老化し、萎縮してしまうアルツハイマーとの関係はとくに深く、アルツハイマーの脳ではアセチルコリンが減少していることから、アセチルコリン不足がアルツハイマーのひとつの原因とも考えられています。

 

アセチルコリンの合成にはコリン、ビタミンB1、ビタミンB12などがかかわっています。

同時にこれらの栄養をとることが、アセチルコリンを増やすことにつながるわけです。

通常、コリンはレシチン(フォスファチジルコリン)のかたちで、食材から摂取されます。

 

レシチンアセチルコリンの材料になるだけではなく、細胞膜の材料にもなっています。

とくに脳の神経細胞の細胞膜にはたくさん含まれていて、多彩な働きをしています。

血液にのって運ばれる栄養の細胞内へのとり込みや細胞内の老廃物の排出、神経伝達物質の放出や情報ネットワークの形成といった、脳の機能全体に深くかかわっています。

これが、レシチンが「脳の栄養素」と呼ばれるゆえんです。

そのレシチンを多く含んでいる食品の代表が卵黄です。

 

また、脳を酷使するときには、たくさんのビタミンB群が消費されています。

B群は脳の働きに重要な役割を担っているのです。

糖質を分解するB1が不足すると、脳のエネルギーが不足し、とたんに頭が回らない状態になります。

また、脳の神経伝達物質の合成すべての段階に関わっています。

神経の働きを整えたり、傷んだ神経を補修したり、タンパク質をドーパミンセロトニンといった神経伝達物質に作り替えるなど、「脳力向上」のためにもB群は欠かすことができないのです。

 

ビタミンB12について?

https://www.endokoro.com/