第3章 知識に経験を交えながら議論する

第3章 知識に経験を交えながら議論する

 

2020年に96歳で亡くなった英文学者の外山滋比古さんと、晩年に雑誌で対談させていただく機会がありました。

「高齢者の勉強法」というテーマだったのですが、彼はのっけから「年寄りは勉強なんかしたらダメだ」と、バッサリ切り捨てていました。

 

いまや「知識人」という言葉は死語になりつつあります。

これからの時代は「知識人から思想家になろう」と提言していますが、彼も同じ考えでした。

 

たとえば、本を読んで勉強するということは、既存の知識をインプットするということでしかありません。

そして既存の知識はいまや、ほとんどが手のなかのスマートフォンにあります。

いくら勉強して既存の知識をインプットしたところで、それだけでは新しいものは生まれません。

知識をインプットする勉強のかわりに、彼が何をしていたかといえば、週に2、3回「口の悪い老人」を集めて、みんなで議論していたそうです。

それが彼にとっての「高齢者の勉強」ということだったのだと思います。

議論する、つまり知識を加工し、「自分の考え」としてアウトプットする――これを意識して行うことが、「賢い老人」になる有効な方法です

 

議論するのは、どんなことでもかまいません。

「世間ではこう言われているけど、それってどうなの?」ということについて議論すると、ユニークな高齢者になれるのではないかと思います。

ニュースを見て、当たり前の感想を言っているだけでは議論になりません。

 

たとえば、単身の高齢者が起こした凶悪事件について、「あんなことをするなんてひどいやつだ」と言い合っていてもしかたありません。

そこで、「高齢者が孤独感によって追いつめられる問題を、どうやったら解決できるのか」というところから議論を始めます。

何が正解とはいえないことなので、どんな意見でも出し合えます。

 

「高齢者が毎日通って、みんなでわいわい話せる巨大銭湯を地域ごとにつくったらいいんじゃないか」

「そうすれば、病院通いをして待合室でおしゃべりする必要がなくなるから、高齢者の医療費もだいぶ減らせるかもしれない」

 

という調子で、考えたことをどんどん話題に上らせていきます。

 

歳をとっているということは、これまでに学んできたことや経験がそれだけあるということです。

いろいろなことについて、知識をそのまま話すのではなく、自分たちの経験に溶かし込んで話せるのが、高齢者の価値であり強みです

 

たとえば、「格差がない社会は、競争意識が失われるため、人は働かなくなる。だから格差は必要だ」という論調に対して、「そうは言うけど、“一億総中流”だったころの日本人のほうが、よほど勤勉に働いていた。マラソンでも、自分の前を走っている人の背中が見えるうちは、追いつこうとして必死に走れるが、差がつきすぎて完全に見えなくなると、とたんにスピードが上がらなくなる。格差が小さいほうが、むしろ人は働くかもしれない」

 

と、かつての時代を知る人間が言えば、説得力が生まれます。

 

自分たちの経験を上手に交えながら議論し、「そうは言うけど、こうも考えられる」と言えるのが、高齢者のたしなみというものです。

「老いの品格 品よく、賢く、おもしろく より」

 

*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+

 

人の体の老化は20代ごろから始まります。

老化は生きている以上避けられないものですが、何をどう食べるかで進行程度が変わってきます。

30代では個人差はさほどありませんが、40歳を過ぎて中年期に入るころからだんだん差が生じ、65歳を過ぎて高年期に入ると、健康状態にはっきりとした差が出ます。

健康寿命をのばす食生活に加えて、年代別の食べ物・食べ方に気をつけると、病気予防がいっそうアップします。

動脈硬化は年齢とともに発症しやすくなり、50代になるとほとんどの人(女性は60代から)に動脈硬化が見られるようになります。

 

認知症の多くは、脳血管障害の積み重ねで起こり、その原因のほとんどが脳梗塞です。

ですから、脳梗塞の前兆である隠れ脳梗塞を早期発見することで多くの認知症を防ぐことができるのです。

 

脳梗塞は、高血圧や糖尿病などの病気が原因となったり、生活習慣などによって血液がドロドロになって血液循環が悪くなったりして、血管が厚く狭くなり、脳の血管が徐々に詰まって進行していきます。

一般的に、脳梗塞の初期には、大きさ数ミリ程度の微小な梗塞が数個出現し、段階をへるごとにこの梗塞が脳のあちこちに見られます。

このような症状のないごく小さな梗塞が隠れ脳梗塞(無症候性脳梗塞)です。

「隠れ脳梗塞(無症候性脳梗塞)は、早い人だと30代からあらわれ、40代を過ぎると急に増加するといわれています。

脳梗塞をはじめとする脳血管障害を生活習慣病の一つととらえ、ふだんから健康に保つ生活を心がけましょう。

ビタミンB12やB6、葉酸の吸収が悪くなると、活性酸素やホモシステインという老化物質が増え、動脈硬化を生じることもわかっています。

 

ビタミンB12について?

https://www.endokoro.com/