第3章 俗説や通説と戦う姿勢をもとう
第3章 俗説や通説と戦う姿勢をもとう
「○○さんの本にはこう書いてあった。だからあなたの意見はまちがっている」
などと、ある一つの説を根拠に、それ以外の説は正しくないと決めつけるのはまったくナンセンスです。
私は10年ほど前から、本の読み方が変わってきました。
それまでは、いろいろな事象について正解と思えることを求めて本を読んでいました。
たとえば、フロイトよりもコフートの精神分析が正しい、ケインズなどの古典的な経済学より行動経済学のほうが正しい、といった「正解」を知りたくて勉強していたのです。
でも、最近では、どれが正しいかではなく、「いろいろな説もある」と、ほとんどの説を受け入れられるようになりました。
精神科医が診療の現場で、「この人はこんな人」と一つの答えを出すのは、患者さんに対する決めつけにほかなりません。
実際にカウンセリングするときは、患者さんの話を聞きながら、相手がどんな人なのか、想定される可能性を10通りほど考えます。
そして、話が進むうちに、そのなかから「これはない」と思われるものを除外していき、可能性がしぼられていきます。
したがって、最初の段階でいろいろな可能性を考えられるほうが、より適切な診療ができるのです。
一つのことに対して「これが正しい」と決めつけることなく、いろいろな可能性を考えられる人のほうが、人間の幅が広く見えます。
本を読むなど、インプット型の勉強を完全に否定するつもりはありません。
どれほど歳をとっても、新しいことを知る喜びは確実にあります。
ただ、そのインプットの喜びだけで終わってしまってはもったいないと思います。
たとえば、経済の本を読む場合、ただ新しい知識をありがたがって受け取るのではなく、「こんなふうに理屈どうりにいくかいな」と反論を試みるために読んでみてはいかがでしょうか。
いちゃもんをつけながら、著者を論破してやろうというくらいのつもりで読むほうがいいと思います。
俗説や通説と戦う姿勢をもつのは、とても大事なことです。
疑問に思うことについて、インターネットも駆使していろいろ調べてみると、戦うための材料が手に入ります。
そんなふうに、理論武装するためにインプット型の勉強をするということもあっていいと思います。
「老いの品格 品よく、賢く、おもしろく より」
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人の体の老化は20代ごろから始まります。
老化は生きている以上避けられないものですが、何をどう食べるかで進行程度が変わってきます。
30代では個人差はさほどありませんが、40歳を過ぎて中年期に入るころからだんだん差が生じ、65歳を過ぎて高年期に入ると、健康状態にはっきりとした差が出ます。
健康寿命をのばす食生活に加えて、年代別の食べ物・食べ方に気をつけると、病気予防がいっそうアップします。
動脈硬化は年齢とともに発症しやすくなり、50代になるとほとんどの人(女性は60代から)に動脈硬化が見られるようになります。
認知症の多くは、脳血管障害の積み重ねで起こり、その原因のほとんどが脳梗塞です。
ですから、脳梗塞の前兆である隠れ脳梗塞を早期発見することで多くの認知症を防ぐことができるのです。
脳梗塞は、高血圧や糖尿病などの病気が原因となったり、生活習慣などによって血液がドロドロになって血液循環が悪くなったりして、血管が厚く狭くなり、脳の血管が徐々に詰まって進行していきます。
一般的に、脳梗塞の初期には、大きさ数ミリ程度の微小な梗塞が数個出現し、段階をへるごとにこの梗塞が脳のあちこちに見られます。
このような症状のないごく小さな梗塞が隠れ脳梗塞(無症候性脳梗塞)です。
「隠れ脳梗塞(無症候性脳梗塞)は、早い人だと30代からあらわれ、40代を過ぎると急に増加するといわれています。
脳梗塞をはじめとする脳血管障害を生活習慣病の一つととらえ、ふだんから健康に保つ生活を心がけましょう。
ビタミンB12やB6、葉酸の吸収が悪くなると、活性酸素やホモシステインという老化物質が増え、動脈硬化を生じることもわかっています。
ビタミンB12について?