第6章 すてきな高齢期になるために必要なこと 「○○になりたい」から「こうありたい」へ
第6章 すてきな高齢期になるために必要なこと
「○○になりたい」から「こうありたい」へ
高齢になることの大きなメリットの一つは、世俗の価値観から自由になれることだと思います。
人は一般的に、「こうなりたい」と思うものに向かって人生を歩んでいきます。
人生の大半の時期においては、「この職業に就きたい」「この肩書を得たい」など、具体的なものをめざすことが多いはずです。
でも、歳をとるとそれが難しくなってきます。
そこから先は、「こうありたい自分」というものをもたないと、生きていくのがしんどくなるのではないかと思います。
実際、あるときから、肩書に対する関心がほとんどなくなり、「こうありたい」という、自分にとっての理想について考えるようになりました。
そこで真っ先に思うのは、歳をとっても「おもしろい人」でありたい、つまらない人と思われたくないということです。
競争社会のなかでは、「おもしろい人」が勝つわけではありません。
それでも、長い目で見れば、競争社会で勝ち抜くよりも、おるしろい人であることに価値を感じます。
世俗の価値観を軸にしていれば、この職業のほうがより社会的地位が高い、この肩書のほうがより偉い、だからそれをめざすという発想になると思います。
でも、歳をとったらその価値観から自由になり、「○○になりたい」という名詞形の「なりたい自分」よりも、どうあるかという「HOW」の意味合いでの「こうありたい自分」のイメージをもちたいものです。
たとえば、歳をとってから、「作家になりたい」と思い立つ人もいると思います。
そこで文学賞をねらっても、現実にはなかなか厳しいでしょう。
賞は人間が審査して選ぶものである以上、審査員の年代が自分より下になるほど世代的な感性の差も大きくなり、選ばれるのは難しくなるからです。
でも、読む人におもしろいと思われるものを書くことは、何歳でも可能です。
これからねらうなら、そちらのほうがずっと価値があるのではないでしょうか。
紙の本にこだわらなくても、ネット上で作品を発表し、話題になっていくケースも多くあります。
世俗の価値観にとらわれたくないと思っていても、若いうちはそうならざるをえなかったという人もいるでしょう。
会社で働いていれば、そのなかで上をめざそうと考えるのは必然でもあり、そのために上司の目や周りからの評価も気にしなくてはなりません。
そのしがらみから解放されて、自分の好きなことができる。
本当に「こうありたい」と思える自分を追い求められる、それこそが、歳をとることで得られる大きな特権だと思います。
実際、歳をとると肩書が立派な人より、生き方や話していることが魅力的な人のほうが、はるかに人を惹きつけます。
そういうものが必ずしも「こうありたい」自分とはかぎりませんが、「こうありたい」自分を探してみることも歳をとってからの時間の使い方かもしれません。
「老いの品格 品よく、賢く、おもしろく より」
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脳の中では、運動会のリレーのように、神経がバトンをつないで、指令を伝達していきます。
しかし、たとえばC地点の神経細胞が倒れてしまい、指令がそこで止まってしまう、という事態が起こります。
このとき、すぐにC地点の神経細胞を救出できれば復活したのですが、時間が経ち、死んでしまって、その指令も届かなくなる。
これが運動麻痺や言語障害の起こる理由です。
ところが、脳のすごいところは、C地点から今度はほかのルートでバトンを渡そうとするのです。
新たなルートで、新たなリレーのチームを作り、「言葉を話す」という指令を伝えようとします。
この新チームは、以前のチームのようにバトンの受け渡しがうまくなく、スムーズに指令が届きません。
しかし、何度も繰り返し練習するうちに、だんだんうまく指令が伝わるようになっていきます。
このようにして、死んでしまった神経細胞は復元しないけれど、ほかのルートで代用できれば、言葉がある程度話せるようになり、失語症もよくなっていくというわけです。
ニューロン同士が情報伝達を行うこと、つまり神経機能的連絡を行うためには、新経路の交差点ともいうべきものが必要であり、この交差点をシナプスと言います。
このシナプスは、歳をとっても増加し、より成熟した結合が進行するとされています。
高度の創造過程にも高密度のシナプス形成が必要と思われ、そのためには、それに必要な素材として神経系構成成分、つまり栄養成分が必要なことは当然で、また、その構築作業のための酵素、そしてそれを補佐する補酵素的ビタミンも必要となります。
その中でも重要なものがビタミンB12なのです。
脳科学の発達によって、さまざまなことがわかり、新たな試みがされています。
ビタミンB12について?