第6章 人に頼るかわりに自分に何ができるかを考える

第6章 人に頼るかわりに自分に何ができるかを考える

 

「成熟した依存」の方法はいろいろ考えられます。

体が弱ってきている人が、公的なサービスのホームヘルパーにきてもらうかわりに近所の人の助けを借り、ふだんから世話になってきたお礼も兼ねて、お金を受け取ってもらうということも考えられるし、状況によっては言葉で感謝を伝えるだけでもいいかもしれません。

 

精神分析学者のコフートは、人間とは依存的な生き物であって、他人に依存しないのは酸素に依存しないのと同じほどありえないことだと言っています。

同時に、依存は「お互いさま」であることも指摘しています。

 

高齢になってから必要なのは、どうしたら人に頼らなくてすむかを考えることではなく、人に頼るかわりに自分は何ができるかを考えることです。

 

「国があなたに何をしてくれるかではなく、あなたが国に対して何ができるかを問うてほしい」という、ジョン・F・ケネディアメリカ大統領就任演説で述べた有名な言葉があります。

 

実は、この話の前には共産主義の脅威に対抗すべく福祉が必要だということを論じていますので、ちゃんと金持ちが税金を払って貧困を撲滅しようという意味で、国に対して何ができるかを論じたという説もありますが、いずれにせよ、自分は何ができるかを考えることも必要だと思います。

 

体が弱ってきたから、外出先で人に頼らなくてすむように「外出を控える」という発想で自分の生活を制限するのではなく、

 

「体が弱ってきたけど、寄付ならできる」

「こういうボランティア活動ならできる」

 

と考えて、ためらわず人に頼り、やりたいことをあきらめないようにしたほうがいいと思います。

 

そして、ボランティアをするなら、それで健康維持ができることに感謝しましょう。

 

「成熟した依存」は、ギブ・アンド・テイクの発想がベースですが、ギブに関しては「見返りを求めない、期待しない」こともポイントです。

 

何かいいことをするときに見返りを求めると、それが得られなかった場合に落胆したり腹を立てたりします。

いいことをするのはそれ自体に意味があり、そのうえで自分も気分がよくなったほうがいいのに、見返りがないといって気分を害するなら、何のためにいいことをしたのかわからなくなります。

 

高齢になればできなくなることは増えていきますが、できることも残っているのですから、それを活かさない手はありません。

できないことは人に頼ってもいい

そのかわりに自分にもまだできることがある、という発想をもちつづけたいものです。

 

高齢者は「他人に迷惑をかけてはいけない」という意識が強く、それ自体は尊いことかもしれませんが、迷惑をかけないように意地を張るのはかえってみっともないのも事実だと思います。

迷惑をかけないようにしようと思いすぎると、結局、最後の最後にどうしようもなくなってから人に頼るということになります。

そして結果的に、周囲の人から「水くさい」「なぜ、もっと早く言ってくれなかったのか」と言われてしまいます。

 

迷惑をかけないようにする努力ではなく、迷惑をかける自分でもできることはないかを探す努力をするほうが賢明です。

「老いの品格 品よく、賢く、おもしろく より」

 

*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+

 

脳の中では、運動会のリレーのように、神経がバトンをつないで、指令を伝達していきます。

しかし、たとえばC地点の神経細胞が倒れてしまい、指令がそこで止まってしまう、という事態が起こります。

このとき、すぐにC地点の神経細胞を救出できれば復活したのですが、時間が経ち、死んでしまって、その指令も届かなくなる。

これが運動麻痺や言語障害の起こる理由です。

 

ところが、脳のすごいところは、C地点から今度はほかのルートでバトンを渡そうとするのです。

新たなルートで、新たなリレーのチームを作り、「言葉を話す」という指令を伝えようとします。

この新チームは、以前のチームのようにバトンの受け渡しがうまくなく、スムーズに指令が届きません。

しかし、何度も繰り返し練習するうちに、だんだんうまく指令が伝わるようになっていきます。

このようにして、死んでしまった神経細胞は復元しないけれど、ほかのルートで代用できれば、言葉がある程度話せるようになり、失語症もよくなっていくというわけです。

 

ニューロン同士が情報伝達を行うこと、つまり神経機能的連絡を行うためには、新経路の交差点ともいうべきものが必要であり、この交差点をシナプスと言います。

このシナプスは、歳をとっても増加し、より成熟した結合が進行するとされています。

高度の創造過程にも高密度のシナプス形成が必要と思われ、そのためには、それに必要な素材として神経系構成成分、つまり栄養成分が必要なことは当然で、また、その構築作業のための酵素、そしてそれを補佐する補酵素的ビタミンも必要となります。

その中でも重要なものがビタミンB12なのです。

脳科学の発達によって、さまざまなことがわかり、新たな試みがされています。

 

ビタミンB12について?

https://www.endokoro.com/