第6章 「成熟した依存」ができる人になる

第6章 「成熟した依存」ができる人になる

 

人に頼らないことは美徳のように思われがちですが、高齢になれば誰もが人に頼らざるをえなくなります。

足腰が弱ってきても自立生活にこだわっていると、転倒して骨折し、それをきっかけに寝たきりになるといったリスクも高まり、かえって周囲に負担をかけることにもつながります。

 

そこは意地を張らず、素直に公の世話になることを考えたほうがいいのです。

介護保険や公的な福祉サービスを利用することは、当然の権利なのです。

 

欧米が日本と大きく違う点の一つは、払った税金の元をとろうという国民の意識が強いことです。

そのため、北欧の国々のように、税金が高くてもそのぶん手厚い福祉が受けられるのであれば、国民は不満をもちません。

 

また、北欧の国々の場合、労働者が解雇されても国の福祉で生きていけるため、産業の転換が比較的容易にできるという面もあります。

たとえば、フィンランドノキアは、かつて世界最大の携帯電話端末メーカーでした。

ところが、携帯電話が売れなくなったときには、従業員を大量に解雇して別の事業に転換し、生き残りを図る道を選ぶことが可能でした。

 

「福祉は個人のためならず」という側面があります。

人に頼ってはいけないと考える人は、体が弱ってきたときになるべく公の世話にならずにすむよう、お金を貯めようとします。

でも、それによって消費不況が起こり、結果的に国にとっては不利益となる可能性があります。

 

大切なのは、依存しないことではなく、「成熟した依存」ができるようになることだと思っています。

人に頼るかわりに何かを返す。

ギブ・アンド・テイクというより、実質的には「テイク・アンド・ギブ」ができればいいと考えます。

 

たとえば、公の介護サービスに頼ることで、家族の介護負担が減って共倒れにならなくてすみます。

もっとシンプルなことでいえば、他人に何か親切にしてもらったとき、「ありがとう」のひと言を返すだけで、相手の自尊心を満たすことができます。

 

高齢者の場合、病気で寝たきりになってまったく意思疎通ができないなど、完全に一方的な依存というものも存在しないわけではありませんが、通常は一方が依存しているように見えて、相手も心理的に満たされるなど、なにかしらのものをえています。

 

相手に直接返すかたちではなくても、他者に依存することによって、そのニーズを満たすための雇用が生まれるということもあります。

自分が依存することで、世の中全体としてはギブ・アンド・テイクで収支が合い、それでまわっていくならいいと考えてみてください。

 

依存という点では、他者だけでなく道具への依存というのもあるでしょう。

高齢者の多くが杖を使うこと、補聴器を使うこと、おむつを受け入れることに抵抗があるようです。

でも、それによって転倒のリスクは下がるし、コミュニケーションは取りやすくなるし、トイレを探す必要がなく自由に行動ができるという側面もあります。

そのほうが高齢者のQOL(生活の質)も上がります。

 

素直に依存したほうが、余裕ある高齢者になれる気がします。

 

成熟したというだけでなく、上手な依存というのもすてきな高齢者につながるのではないでしょうか。

「老いの品格 品よく、賢く、おもしろく より」

 

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脳の中では、運動会のリレーのように、神経がバトンをつないで、指令を伝達していきます。

しかし、たとえばC地点の神経細胞が倒れてしまい、指令がそこで止まってしまう、という事態が起こります。

このとき、すぐにC地点の神経細胞を救出できれば復活したのですが、時間が経ち、死んでしまって、その指令も届かなくなる。

これが運動麻痺や言語障害の起こる理由です。

 

ところが、脳のすごいところは、C地点から今度はほかのルートでバトンを渡そうとするのです。

新たなルートで、新たなリレーのチームを作り、「言葉を話す」という指令を伝えようとします。

この新チームは、以前のチームのようにバトンの受け渡しがうまくなく、スムーズに指令が届きません。

しかし、何度も繰り返し練習するうちに、だんだんうまく指令が伝わるようになっていきます。

このようにして、死んでしまった神経細胞は復元しないけれど、ほかのルートで代用できれば、言葉がある程度話せるようになり、失語症もよくなっていくというわけです。

 

ニューロン同士が情報伝達を行うこと、つまり神経機能的連絡を行うためには、新経路の交差点ともいうべきものが必要であり、この交差点をシナプスと言います。

このシナプスは、歳をとっても増加し、より成熟した結合が進行するとされています。

高度の創造過程にも高密度のシナプス形成が必要と思われ、そのためには、それに必要な素材として神経系構成成分、つまり栄養成分が必要なことは当然で、また、その構築作業のための酵素、そしてそれを補佐する補酵素的ビタミンも必要となります。

その中でも重要なものがビタミンB12なのです。

脳科学の発達によって、さまざまなことがわかり、新たな試みがされています。

 

ビタミンB12について?

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