第1章 脳の血流を増やして認知症を防ぐ
認知症予防は脳の血流促進がカギ
なにかの拍子に頭の回転が悪くなる場面があると、口の悪い友だちあたりから「血の巡りが悪くなったんじゃないの?」などと、からかわれることがあります。
実は、この“血の巡り”こそが、認知症予防の大きなカギとなります。
絶対的な切り札とは呼べないとしても、「血の巡り=血流を促進すること」をおろそかにしていたら、認知症予防は始まらないのです。
私たちの身体は、およそ37兆個もの細胞からできているといわれます。
その細胞は、血液が巡って運んできてくれる新鮮な「酸素」と「栄養素」があってこそ生き続けています。
ガソリンがなければ、高級車だって1ミリも走れないのと同じ理屈です。
細胞は、血流がしばらく途絶えると「壊死」、つまり死んでしまいます。
それは、認知症を発症する脳でも同じことなのです。
脳全体で、およそ860億個もの神経細胞が働いています。
この神経細胞は、脳内に血液が潤沢に流れているからこそ、機能できます。
脳の神経細胞は、わずか20秒の酸欠で参ってしまうといわれているのです。
認知症は脳の機能が衰える病気です。
それを防ぐ第一歩は、脳の神経細胞に血液とともに、新鮮な酸素と栄養素を送り込むように努めることだと、まずは覚えておきましょう。
脳は体重の2%ほどの重さしかないといわれています。
体重65kgの人なら、脳の重さは1.3kg前後になります。
そんなに軽く小さいのに、体内を巡っている血液の14~15%が循環しているといわれます。
それくらいたくさんの血液が巡らないと、脳は働かないということです。
なにしろ、安静時の消費カロリーの約20%を脳が占めている、といわれるほどなのです。
運動をすると筋肉と皮膚に血液が一気に集まりますが、それでも脳の血液量は、ほぼ安静時と同じくらいに保たれます。
それほど生命活動において、脳の血流が大事なのです。
「昼食後に眠たくなるのは、消化吸収のために胃腸に血液が集まり、脳の血流量が減るから」などと俗にいわれますが、食事をしたくらいで脳の血流量は減ったりしません。
昼食後に眠くなるのは、活動と休憩のリズムを刻む脳の「体内時計」の働きにより、その時間帯に眠気が高まるように設定されているからなのです。
太陽が高くのぼり紫外線も強まる時間帯は、木陰でまどろみ、ひと息入れなさいということなのかもしれません。
脳の血流が減ると、神経細胞の働きが不十分になり、認知機能の低下が起こります。
マウスを使った実験で、慢性的で軽度な脳の血流量の低下が続くと、有害な活性酸素が生じて脳内の炎症などが進み、認知機能が障害されることが明らかになっています(出典:京都大学大学院薬学研究科の白川久志准教授らの研究グループ)。
これはアルツハイマー型認知症や脳血管性認知症の発症にも共通しているそうです。
※ポイント まずは脳の血流促進が認知症予防に大切だということを踏まえましょう
「一生ボケない習慣 より」
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「老化」と聞いたとき、どんな変化を思い浮かべますか?
顔のシミやシワ、老眼、体力の衰え……。
それらももちろん老化の1つですが、根本的な老化とは「血管が衰えること」です。
わかりやすく言うと、血管の衰えとは「動脈硬化」のことです。
動脈硬化とは、血管が「硬くなること」「狭くなること」「血栓で詰まりやすくなること」。
動脈硬化は年齢とともに発症しやすくなり、50代になるとほとんどの人(女性は60代から)に動脈硬化が見られるようになります。
近年、動脈硬化の原因として新しく注目されているものに、ホモシステインというものがあります。
虚血性心疾患である心筋梗塞の発作を起こした人の2割程度にしか高コレステロール血症が見られないことから、これまで長い間、コレステロール以外に動脈硬化の原因となるものがあるのではないかと考えられていました。
そうして、ホモシステインがそのひとつの原因だと注目を集めるようになりました。
このホモシステインが動脈の壁に沈着すると、酸化される過程で血栓を引き起こし、血管を傷害して動脈硬化を引き起こすのです。
ホモシステインはLDLと一緒になり血管壁にコレステロールを沈着させます。
また活性酸素と一緒になり、脂肪やLDLの過酸化、血管内皮細胞や血管の平滑筋の異常を引き起こします。
ビタミンB12や葉酸の吸収が悪くなると、ホモシステインという老化物質が増え、動脈硬化を生じることがわかっています。
ビタミンB群は、体に入った栄養成分をエネルギーに変えるときに不可欠なビタミンの仲間です。
また、脳の神経伝達物質の合成すべての段階に関わっています。
神経の働きを整えたり、傷んだ神経を補修したり、タンパク質をドーパミンやセロトニンといった神経伝達物質に作り替えるなど、「脳力向上」のためにもB群は欠かすことができないのです。
ビタミンB12について?