第2章 思い出す作業を根気強く諦めないで
部分的なもの忘れを自覚して、認知症を自分ごととして身近に感じるようになると、ヒトは考え方によって2つのタイプに大きく分かれます。
1つは、放っておくと将来、認知症になる恐れがあることに気づくと、「私はこの先どうなってしまうんだろう」と不安を募らせるタイプ。
もう1つは、「ああ、私はもうダメだ」と諦めてしまいそうになるタイプです。
前者はまだいいのですが、後者は問題だと思っています。
記憶には、「覚える」と「思い出す」という2つの側面があります。
このうち認知症を防ぐうえでより大切なのは、「思い出す」ということ。
思い出すという作業自体が、脳の血流を増やすことにつながり、認知症への移行を遅らせてくれるからです。
不安になりすぎるのは、よくありません。
しかし、人の顔は頭に浮かぶのに、その人の名前が出てこなかったりすると、前者は何とかして思い出そうと努力します。
ところが、後者のように思い出すという作業を諦めてしまうと、認知症への移行を加速させる恐れがあります。
思い出そうという努力を放棄してしまうと、脳の血流を促進する機会も失われてしまうからです。
「もうダメだ」と諦めたら、「自分のことは放っておいてほしい」とばかりに自分の殻に閉じこもって孤独に陥り、認知症の危険度を高めてしまう可能性もあります。
自分自身が思い出す作業を諦めないとともに、何かを思い出せない人が身近にいたら、意識的に声をかけて、思い出す作業を助けてあげるようにしましょう。
それが、認知症への移行や、認知症の進行を抑えることにつながるのです。
※ポイント 「思い出す」という作業を諦めず、思い出せない人がいたら一緒に思い出してあげましょう
「一生ボケない習慣 より」
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記憶力の減退も、脳の老化を示す典型的な症状ですが、記憶のネットワークを活性化する働きをしているのが、脳の海馬という組織であることはよく知られています。
その海馬には、アセチルコリン系神経が集中しているのです。
脳が老化し、萎縮してしまうアルツハイマーとの関係はとくに深く、アルツハイマーの脳ではアセチルコリンが減少していることから、アセチルコリン不足がアルツハイマーのひとつの原因とも考えられています。
アセチルコリンの合成にはコリン、ビタミンB1、ビタミンB12などがかかわっています。
同時にこれらの栄養をとることが、アセチルコリンを増やすことにつながるわけです。
通常、コリンはレシチン(フォスファチジルコリン)のかたちで、食材から摂取されます。
レシチンはアセチルコリンの材料になるだけではなく、細胞膜の材料にもなっています。
とくに脳の神経細胞の細胞膜にはたくさん含まれていて、多彩な働きをしています。
血液にのって運ばれる栄養の細胞内へのとり込みや細胞内の老廃物の排出、神経伝達物質の放出や情報ネットワークの形成といった、脳の機能全体に深くかかわっています。
これが、レシチンが「脳の栄養素」と呼ばれるゆえんです。
そのレシチンを多く含んでいる食品の代表が卵黄です。
また、脳を酷使するときには、たくさんのビタミンB群が消費されています。
B群は脳の働きに重要な役割を担っているのです。
糖質を分解するB1が不足すると、脳のエネルギーが不足し、とたんに頭が回らない状態になります。
また、脳の神経伝達物質の合成すべての段階に関わっています。
神経の働きを整えたり、傷んだ神経を補修したり、タンパク質をドーパミンやセロトニンといった神経伝達物質に作り替えるなど、「脳力向上」のためにもB群は欠かすことができないのです。
ビタミンB12について?