第3章 歯を20本以上残せば認知症リスクは下がる
歯の本数も、認知症と深く関わります。
歯を失うと噛むことができなくなり、そしゃくに必要なあごの筋力も落ちてしまいます。
成人の歯は、全部で28~32本。
80歳になっても20本以上の自分の歯を残そうという「8020(ハチマルニイマル)運動」が、1989年から厚生省(現・厚生労働省)と日本歯科医師会によって推進されています。
自分の歯が20本以上あれば、食生活はほぼ満足に送れるといわれています。
おそらく、そしゃくにも大きな支障はないでしょう。
日本では、60代までは自分の歯が20本以上ある人は多いのですが、70歳以降になるとそれが20本未満になるのが現状です。
70歳以降こそは、認知症のリスクが高まる世代ですから、20本以上の自前の歯を残すことを目標にしましょう。
歯の本数と認知症との関わりを調べた研究があります(神奈川歯科大学大学院歯学部の山本龍生教授らによる)。
この研究では、要介護認定を受けておらず、自立した日常生活を送っている65歳以上の4425人の健常者を対象に、歯と義歯の状況を質問紙で調査したうえで、その後4年間の認知症の発症状況を追跡調査しています(Yamamoto et al.,Psychosomatic Med.2012)。
その結果、年齢・疾患の有無・飲酒といった生活習慣などにかかわらず、歯がほとんどなく、義歯も使用していない人は、20本以上の自前の歯を持つ人と比べて、認知症のリスクが1.85倍になることが判明しました。
「歯を失う⇒そしゃくの減少⇒脳の血流量減少⇒認知症」という明確な因果関係があるかどうかはわからないのですが、状況証拠としては十分でしょう。
即有罪とはいえないまでも、限りなく黒に近いグレーといった感じでしょうか。
その間接の証拠として、自前の歯がほとんどなくても、義歯を使っている人の認知症リスクは、義歯を使っていない人より約4割下げられました。
義歯があれば、自前の歯と同じようにそしゃくできるからでしょう。
※ポイント もし自前の歯を20本以上残せなくても、義歯を使ってしっかり噛んで食べ、そしゃく力を維持しましょう
「一生ボケない習慣 より」
*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*
老人の認知症の3割~5割を占めるアルツハイマー病の場合は、脳細胞が萎縮する病気です。
この萎縮を食い止めるためには、脳細胞を生成するためのタンパク(アミロイドβタンパク)合成、核酸(DNA)合成が順調に行われる必要があるのです。
ビタミンB12は、タンパク(アミロイドβタンパク)合成と核酸(DNA)合成の両方に深く関わっています。
ビタミン欠乏症が原因で、認知症になるケースがあるそうです。
ビタミンが欠乏すると、記憶障害、無気力、集中力の低下、妄想、錯乱の症状がみられるようになります。
東京武蔵野病院 副院長 田中信夫先生によれば、認知症患者の血中ビタミンB12は、通常の人より少ないそうです。
認知症の方に、ビタミンB12を投与すると、ボケ症状、特に感情障害、夜間せん妄、意欲、自発性の障害などの精神障害が軽くなるといわれています。
ビタミンの種類は、ビタミンB1、ビタミンB12、葉酸。
ビタミンB12や葉酸をはじめとするビタミンB群は、ミネラル、アミノ酸などの栄養素と協力し合っているため一緒にバランスよく摂ることがとても重要なのです。
現在60歳以上の人の20パーセントでビタミンB12の欠乏が見られということです。
これは歳をとると胃の機能が低下し、内因子の分泌が低下するからです。
長寿のためには、動物性食品を控えた方が良いという事ですが、一方では動物性食品を摂らないことからビタミンB12を摂取できなくなる恐れがでてきます。
また、高齢者が理由のはっきりしない神経症状を呈したら、ビタミンB12の欠乏を考えるべきだという学者もいます。
主に動物性食品にしか含まれないというビタミンなので、野菜中心の食生活の人や、ダイエットをしているなど食事の量が少ない人は、ビタミンB12を補った方が良いとされています。
加齢、胃の病気、ストレスなどでも不足します。
ビタミンB12について?