第3章 歯を20本以上残せば転倒しにくくもなる

第3章 歯を20本以上残せば転倒しにくくもなる

 

前述の山本先生らの研究グループの業績から、興味深い研究をもう1つ紹介しましょう。

この研究では、歯と義歯の状況と「転倒リスク」の関係を調べています。

 

高齢者が転倒で骨折をして長期の入院を強いられると、「寝たきり⇒要介護⇒認知症」と進行することがあります。

 

山本先生らは、65歳以上の健常者で過去1年間に転倒した経験がない人1763人を対象として、歯と義歯の使用状況を質問紙で調査のうえ、その3年後に過去1年間に2回以上転倒したかどうかを調べました。

 

その結果、年齢・性別・要介護認定の有無などにかかわらず、自前の歯が19本以下で義歯を使用していない人は、20本以上の自前の歯を持つ人と比べて、転倒リスクが2.5倍になっていることがわかりました(Yamamoto et al.,BMJ Open,2012)。

 

 

それにしても、なぜ歯を失うと転倒しやすくなるのでしょうか?

これらの研究を行った山本先生は、次のように説明しています。

 

そしゃくにかかわる筋肉や、「歯根膜」(歯とその土台となる骨の間にある薄い膜)からは、脳に向かって神経がのびており、それが頭部の安定性を保っています。

 

歯を失うとこのしくみが円滑に働かなくなり、頭部は不安定になります。

人体の頭部は重たいので、そこが不安定になると全身のバランスを崩しやすくなり、転倒の一因になりえるというのです。

 

 

山本先生らの研究によると、自前の歯が19本以下でも義歯を使っている人の転倒リスクは、20本以上の自前の歯を持つ人と大きく変わらなかったそうです。

歯を失っても、義歯を入れれば、噛む力は低下せず、転倒リスクは減らせるのです

 

かかりつけ医を持つことは大事です。

認知症予防の立場からすると、“かかりつけ歯科医”も持って、健康な歯と口腔環境を保つことは、負けず劣らず重要でしょう。

 

※ポイント “かかりつけ歯科医”を持って歯の健康を保ちましょう

「一生ボケない習慣 より」

 

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老人の認知症の3割~5割を占めるアルツハイマー病の場合は、脳細胞が萎縮する病気です。

この萎縮を食い止めるためには、脳細胞を生成するためのタンパク(アミロイドβタンパク)合成、核酸(DNA)合成が順調に行われる必要があるのです。

ビタミンB12は、タンパク(アミロイドβタンパク)合成と核酸(DNA)合成の両方に深く関わっています。

 

ビタミン欠乏症が原因で、認知症になるケースがあるそうです。

ビタミンが欠乏すると、記憶障害、無気力、集中力の低下、妄想、錯乱の症状がみられるようになります。

東京武蔵野病院 副院長 田中信夫先生によれば、認知症患者の血中ビタミンB12は、通常の人より少ないそうです。

認知症の方に、ビタミンB12を投与すると、ボケ症状、特に感情障害、夜間せん妄、意欲、自発性の障害などの精神障害が軽くなるといわれています。

 

ビタミンの種類は、ビタミンB1、ビタミンB12、葉酸

ビタミンB12や葉酸をはじめとするビタミンB群は、ミネラル、アミノ酸などの栄養素と協力し合っているため一緒にバランスよく摂ることがとても重要なのです。

現在60歳以上の人の20パーセントでビタミンB12の欠乏が見られということです。

これは歳をとると胃の機能が低下し、内因子の分泌が低下するからです。

長寿のためには、動物性食品を控えた方が良いという事ですが、一方では動物性食品を摂らないことからビタミンB12を摂取できなくなる恐れがでてきます。

また、高齢者が理由のはっきりしない神経症状を呈したら、ビタミンB12の欠乏を考えるべきだという学者もいます。

主に動物性食品にしか含まれないというビタミンなので、野菜中心の食生活の人や、ダイエットをしているなど食事の量が少ない人は、ビタミンB12を補った方が良いとされています。

加齢、胃の病気、ストレスなどでも不足します。

 

ビタミンB12について?

https://www.endokoro.com/