早く認知症が進む人、進行が1~2年遅れる人
しかし、ふだんシャキシャキ歩いていた高齢者が、あるとき、何かの病気になって1カ月寝込んだりすると、病気そのものがよくなっても、以前よりボケた状態になったり、以前ほどしっかり歩けなくなったりします。
一方、若い頃には、かりにスキーで足の骨を折って1カ月寝込んだりしても、そのせいで歩けなくなることはありません。
若い頃と高齢になってからの「能力の違い」は、そういうところではっきり出てきます。
歩かないでいると歩くのが目に見えて不得手になる、寝込んだ結果、ボケたようになってしまうといった、以前より明らかに能力が衰えるようなことが起こります。
医学用語でいうと、そういう状況になることを「廃用」といいます。
「ある機能を病気やケガなどが原因で、一定期間使わなかったために機能が衰える」ということです。
デスクワークばかりの毎日で、日常的に運動をしていないと、以前は運動が得意だった人でも、いつの間にか足腰が衰えてしまいます。
これも廃用の一例です。
体の機能を使わなかったときの衰え、「廃用」が、年を取るほど起こりやすくなるのです。
また、頭の中で変化が進んで、脳のある部分が同じくらい縮んだ人たちの状態を比較しても、「早く認知症の症状が出る人」と「認知症の症状がほとんど出ない人」がいるのも事実です。
その違いは、それまでの生活、仕事、人生において、「頭をよく使う人」だったか、「さほど頭を使うことがなかった人」だったかの差ではないかと思っています。
認知症になった場合でも、「日常的に頭をよく働かせている人」は、「中核症状」の中で記憶障害は進んだとしても、理解力、判断力の障害などの進行は遅くなると思われます。
レーガン元米大統領やサッチャー元英首相の例を見て、「あれだけ責任ある立場にいて、頭を使う仕事をしていた人でも認知症になるのですね」と世の中の人は思うかもしれません。
しかし、医学的見地から検討すると、「あれほど頭を使う仕事をしていなければ、もっと早く認知症、アルツハイマー病が発症し、もっと進行していただろう」と考えるわけです。
もし2年間でも認知症が進行するのを遅らせることができれば、人生の中で認知症患者として過ごす期間を2年間減らすことができ、その分、人生の質(QOL)を長く維持することができるのです。
「「脳が老化」する前に知っておきたいこと より」
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認知症の多くは、脳血管障害の積み重ねで起こり、その原因のほとんどが脳梗塞です。
ですから、脳梗塞の前兆である隠れ脳梗塞を早期発見することで多くの認知症を防ぐことができるのです。
脳梗塞は、高血圧や糖尿病などの病気が原因となったり、生活習慣などによって血液がドロドロになって血液循環が悪くなったりして、血管が厚く狭くなり、脳の血管が徐々に詰まって進行していきます。一般的に、脳梗塞の初期には、大きさ数ミリ程度の微小な梗塞が数個出現し、段階をへるごとにこの梗塞が脳のあちこちに見られます。このような症状のないごく小さな梗塞が隠れ脳梗塞(無症候性脳梗塞)です。
「隠れ脳梗塞(無症候性脳梗塞)は、早い人だと30代からあらわれ、40代を過ぎると急に増加するといわれています。
脳梗塞をはじめとする脳血管障害を生活習慣病の一つととらえ、ふだんから健康に保つ生活を心がけましょう。
動脈硬化は年齢とともに発症しやすくなり、50代になるとほとんどの人(女性は60代から)に動脈硬化が見られるようになります。
ビタミンB12や葉酸の吸収が悪くなると、ホモシステインという老化物質が増え、動脈硬化を生じることがわかっています。
ビタミンB12は、脳からの指令を伝達する神経を、正常に働かせるために必要な栄養素です。
十分にあると、集中力ややる気が高まり、不足すると、神経過敏などの症状が起こりやすくなります。
また、脳や神経と関連が深く、不眠症にも効果があるといわれています。
ビタミンB12は、悪性貧血のみならず神経や免疫系にも効果があることが明らかになり、高齢者のうつや認知症の予防等に利用されています。
高齢者が理由のはっきりしない神経症状を呈したら、ビタミンB12の欠乏を考えるべきだという学者もいます。
ビタミンB12について?
https://www.endokoro.com/libra/vitamin01.html
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