第5章 肉好きはなぜ長生きするのか

第5章 肉好きはなぜ長生きするのか

 

60代、70代の人と会食に行くときの話です。

「何か食べたいものはありますか?」と聞くと、多くの人が「なんでもいいです」と答えます。

もちろん遠慮したり、気を使ったりしてもらっている部分もあるとは思いますが、「なんでもいいです」のあとにこんな言葉がよく続きます。

 

「最近、食べたいものが出てこないんですよね……」

 

 

食欲も生理的欲求のひとつなので、年齢とともに「減ってくる欲」に入ります。

 

一方でスーパーエイジャーには、食欲旺盛で肉が大好きという人が多くいます

世界一の長寿者にもなったことのある北川みなさん(没年115歳)は100歳になるまで農家で働き、牛肉が大好きだったそうです。

同じくスーパーエイジャーの中地シゲヨさん(没年115歳)も焼肉、唐揚げが大好き。

男性では中願寺雄吉さん(没年114歳)も1日3食は欠かさず、牛肉とかしわ飯(とりの炊き込みご飯)が好物だったそうです。

ほかにも肉好きのスーパーエイジャーはたくさんいます。

 

 

そもそも、肉が好きだからスーパーエイジャーになれたのか?

スーパーエイジャーだから肉が好きなままでいられるのか?

どちらなのかも気になるところですよね。

 

その答えは、世界中のいろいろなリサーチを総合すると、「両方ある」が正解です。

 

まず、これを考える上で大切なことは、100歳を超えるスーパーエイジャーは、牛肉や乳製品などの動物性タンパク質をほとんど毎日とる人が、なんと約60%もいるという事実です。

 

 

男性で世界最高齢歴代1位の記録(116歳)

を達成した木村次郎右衛門さんは、毎朝ヨーグルトを食べていました。

また、3位のエミリアーノ・メルカド・デル・トロさん(没年115歳)も牛乳とタラが大好物だったそうです。

 

 

また、牛乳を飲む人はあまり飲まない人に比べて、10年後の生存率が高くなるというデータもあります。

 

 

牛乳や肉などの動物性タンパク質の中には、やる気ホルモンであるドーパミンの原料、チロシンというアミノ酸が含まれています。

またリラックスホルモンのセロトニンを生み出すトリプトファンというアミノ酸も含まれています。

肉や乳製品などのタンパク質から必要なアミノ酸を取り込めなくなってしまうと、脳内物質をつくることができなくなり、認知機能の低下を引き起こし、老人脳が加速してしまうリスクがあるのです。

 

 

また、動物性タンパク質は、筋肉をつくる原料にもなるため、フレイル(健康な状態と介護が必要な状態の中間の状態)を防ぐ効果もあります

また、筋肉を維持するためにも、動物性タンパク質が豊富に含まれる「肉・魚・卵」を、バランスよく定期的に食べることが最も効果的という報告もあります。

 

 

イタリアの最高齢のエンマ・モラーノさん(没年117歳)は、長寿の秘訣は1日3個の卵を食べることだったそうです。

100歳越えの長寿者が多く住むヨーローッパのグルジアの村の食事でも、毎日どんぶり一杯のヨーグルトを食べています。

 

 

高齢になると動物性タンパク質が脳にとっても体にとっても必要となることが、最新の研究でわかってきています。

 

 

ちなみに、野菜が体にいいからと野菜しか食べないのは、脳にはよくありません。

 

オックスフォード大学の研究では、ベジタリアン脳卒中のリスクが高まることがわかっています。

また他の研究でも、61歳~87歳の107人に対して記憶テストや身体機能チェック、脳のスキャンなどを行い、その5年後に同様のテストを行った結果、ビタミンBが不足している人には脳が委縮する傾向が見られたとのこと。

これは肉や魚、卵に含まれているビタミンB12の欠乏によるものとみられています。

この結果を見ても、スーパーエイジャーに肉好きが多いということの理由がわかります。

 

 

※スーパーエイジャー

80代、90代でも健康上の制限を受けず、活動的な生活を送っている人も大勢います。

こういう人を「スーパーエイジャー」と呼びます。

スーパーエイジャーとは、「80歳以上になっても体も心も健康で、認知機能が衰えず好奇心旺盛で、新しいことに挑戦し続けて人生を謳歌している人=つまり脳と体が老化していない人」と、ここでは定義しています。

「80歳でも脳が老化しない人がやっていること より」

 

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アメリカの月刊誌『リーダーズダイジェスト』は、“赤いビタミン(ビタミンB12)が悪性貧血の患者を救う特効薬だ”と報じてセンセーショナルな話題を提供しました。

以来、“ビタミンB12”は、世界的に研究者の注目を集め、それに関連した研究にはいくつものノーベル賞が与えられてきました。

そして今では、ビタミンB12は、悪性貧血のみならず神経や免疫系にも効果があることが明らかになり、高齢者のうつや認知症の予防等に利用されています。

 

食べ物に含まれるビタミンB12は、そのままの形では吸収されません。

胃から分泌された内因子と結合する必要があるのです。

このために胃を切除した人では、ビタミンB12が欠乏して貧血をおこすことがあります。

現在60歳以上の人の20パーセントでビタミンB12の欠乏が見られます。

これは歳をとると胃の機能が低下し、内因子の分泌が低下するからです。

また、主に動物性食品にしか含まれないというビタミンなので、野菜中心の食生活の人や、ダイエットをしているなど食事の量が少ない人は、ビタミンB12を補った方が良いとされています。

胃の病気、ストレスなどでも不足します。

血液検査では見つけられないような軽度のビタミンB12の欠乏でも、認知症に似た神経異常を引きおこすことがあります。

とくに高齢者では、ビタミンB12の値が基準値の範囲にあっても、それが下限値の場合には、記憶障害をおこすことが知られています。

 

近年、日本人の死因の上位占めているガン・心筋梗塞・脳血管系の疾患、そして高血圧症などの生活習慣病の多くは、戦後、日本人の食生活が欧米化し、動物性食品を多くとるようになったことに起因すると言われています。

長寿のためには、動物性食品を控えた方がよいという事ですが、一方では動物性食品を摂らないことからビタミンB12を摂取できなくなる恐れがでてきます。

ビタミンB12を摂取できないことで、脳のビタミンとしての作用が欠落してしまうという深刻な問題も起きています。

 

ビタミンB12は、脳からの指令を伝達する神経を、正常に働かせるために必要な栄養素です。

十分にあると、集中力ややる気が高まり、不足すると、神経過敏などの症状が起こりやすくなります。

また、ビタミンB12や葉酸の吸収が悪くなると、ホモシステインという老化物質が増え、動脈硬化を生じることがわかっています。

さらに、ビタミンB群は、8種類すべてが互いに協力しあって体のエネルギーを生み出す働きに関わっているため、一緒にバランスよく摂ることがとても重要なのです。

 

ビタミンB12について?

https://www.endokoro.com/